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第3話 醜聞まみれの結婚相手
しおりを挟むヴァリエ・ロックチェスター。
ロックチェスター伯爵家の若き当主。
その方から求婚状が届いた……なぜ!?
二年前にご両親を事故で亡くされ18歳で家督を継いでから、女性との乱れた関係が後を絶たないという醜聞を耳にした事がある。
毎晩屋敷に娼館の女性を複数呼んでは、寝所を共にしている無類の女好きらしい。
更に領主としての仕事は全て家令に任せている傍若無人な性格。
それが伯爵家の当主にも関わらず、20歳を過ぎてもいまだに独り身の理由のようだ。
人としても男としても、最低な人間。
だから上位貴族では結婚相手が見つからず、男爵家だけど資産のあるサンティエ家が選ばれたという事かしら。
でも資産があるといっても、伯爵家が男爵家より劣るとは考えづらい。
気になる点はあるけれど……
男爵家ならば文句も言わずに、伯爵家の言う事は何でも受け入れる…そう思っているのでしょうね。
どうしようもなく尊大な人間だわ。
そんな人格に問題がある人な…ら……
――私の頭の中に、あるとんでもない考えが浮かんだ。
毎晩娼婦を寝所に侍り、当主のくせに仕事は家令任せの傍若無人な男…きっとろくな結婚生活にならない。
もともと幸せな結婚生活なんて、望んでいない。
でもその代わり、この子が将来伯爵家の当主になれるかもしれない。
それに伯爵家なら…っ
ティミド様の顔が浮かんだ。
『将来は、僕が子爵家の当主だ!』
伯爵家の方が家格は上だわ。
……他人を非難するくせに、私がこれからしようとする事は道義に反する行為ではないの…?
この時の私はきっと正常ではなかった。
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いくつもの憂い事が重なり、結婚する事でその不安が払拭されれば何でも良かった。
そう考えてしまった…
そして私はロックチェスター家の求婚を受ける事にした。
もとより、たかが男爵家が伯爵家からの求婚を断れるはずもない…
しかし噂を心配している両親は、手放しで喜ぶことはできないようだ。
特に母は、私のお腹の子を心配していた。
「噂は噂よ。本当は良い人かもしれないし…ねっ」
本当は噂通りの最低な人であって欲しいと願っていた。
そうすれば、子供をお腹に宿したまま結婚する事への罪悪を持たなくてすむから。
父は結婚承諾の旨を、ロックチェスター家へ返信した。
すると翌日、伯爵家の当主がお見えになった。
髪はやわらかそうな美しい金髪で、目はオレンジがかったトパーズの瞳。
こんなに美丈夫な方なら、どこかでお見掛けすれば記憶があるはずだけど全く覚えがないわ。
伯爵家の当主が男爵家の娘に結婚を申し込む理由って…?
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