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おまけ ~『笑う』怪談 オリジナル版・序文~
しおりを挟む学生時代から怪異譚を蒐集し続けている。
因果な趣味である。とにかく、人が集まればそういう話を尋ねたくなる。同行や家族は「またお前の病気が出た」と露骨に呆れて見せるが、当人、そんなのどこ吹く風なのだ。
そんな私の怪談蒐集には、一つのコツがある。
ちょっぴりお耳汚し、ご教授させて頂こう。
最初、相手に話しかける時である。普通なら、
「怖い話を集めてるんですけど、そちらさん何かご存知では?」
こういうのが定石であろうが、これはあまり好ましくないと思われる。
相手は、「じゃあとてつもなく怖い話をしてやらなくちゃならねぇな」と気負い、自分の経験の中から「幽霊とかお化けみたいなものに出会った記憶」を引っ張りだそうとする。
しかし、そういうとてつもなく怖い経験など滅多にあるものではないので、
「残念だけど、そういう話はないねぇ」となるのだ。
では、何と切り出せば宜しいかというと。
「変な話?どういう感じに変な話だい?」
「いやぁ、普通に不思議に変な話といいますか。例えば豚が木に登ったとか空飛んだとか」
「はっはっは、何だそりゃ。そんなんでいいなら、こんな話があるけどさ・・・」
お試しあれ。なかなか使える手段で、五人に三人は何かしらの話を聞かせてくれる。
祟りや因縁などといった、ありきありなものじゃない怪談が多く聞ける。未だ耳にしたこともない様な「掘り出し物」が出て来て、背筋がゾッとするほど感動してしまったこともある。面白いことに、本当に怖い話を知っている人に限って、本人がそれを「怖い」と認識していらっしゃらないケースが多いのだ。
更に、この方法にはもう一つの醍醐味がある。
『本気で変な話』を聞かされる場合がある、ということ。
『本気で変な話』とは、すごく笑える話、という意味ではない。私がこの「変な話作戦」を用いて今までコレクションした怪談の中には、「これって怖がらせたいの?それとも笑わせたいの?」と首を傾げたくなる様な不思議千万の物語が、少なからず存在する。
『怖』と『笑』、二つの側面を持つ話だ。
実際のところ、これらのネタの提供者のほとんどは純粋に聞き手(つまり私)を「笑わせたくて」、それらの話を語ってくれたらしい。
「そう言やこんな体験したんだけど、あれなんだったんだろうね。あはは、おかしいね」
彼らはっそういう風に気軽に笑いながら、私に怪異を紡いでくれた・・・
そういう話を記してみる。
正直、最近私はむしろそんな話が聞きたいがため、怪談蒐集をしている気配すらある。
『わらう』怪談である。
怪しい、『笑』する、談話 なのだ。
ネタ提供者の方々同様、まずは読者諸兄、軽い気持ちで読んで頂き、笑って頂きたい。
そして・・・・・・・・・
※(以上、原文ママ。ちなみに「五人に三人は何かしらの話を聞かせてくれる」云々と書いた箇所もあるが、今あらためて読み返すに「それはかなりの盛りすぎ発言だな・・・」と苦笑いさせられてしまった。怪談蒐集はそんなに楽なものではありません。最後の最後に、その点を附言させて頂きます)
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