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魔功都市ジンフォルド
104 赤き竜王と白き竜王
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存在する英雄上随一の強さを誇るアーサー王。しかし彼はもう一つ、異名がある。コーンウォールの猪である。白い竜を踏み潰すとされ、戦争を終わらせる唯一の手。
「私は今とても虚しい。何故に友と戦わねばならないのか」
皮肉のつもりなのか?ただそれでも一つわかることがある。こいつはヒュムとは別人だということだ。まるっきり性格が違う。恐らく、アーサー王のこの性格は赤い竜のものだろう。
「はっ、その友とやらをボロ雑巾みたいにしてるのは他ならないお前だぜ」
俺は今地面にひれ伏していた。普通にぼろ負け状態なのだ。
「正しく」
アロケルは俺の後ろで気絶している。かれこれ数時間の激闘の末にアロケルはエクスカリバーの餌食となり瀕死状態にある。説明は細かくしている暇はありませんのでご了承ください。
「しかし、友よ。貴様は、まだ戦う気であるな?私には勝てないと分かっているはずだ。何故諦めない。貴様になんの得があるというのだ?逃げる事も出来る。その場合、失うものはそこの使い魔だが」
「仲間を放っておく程俺は薄情じゃなくてね」
「生前とは全く違う性格をしているようだが」
「生憎、向こうの世界より」
俺はふらふらと立ち上がる。なるべく余裕を見せるため笑う。
「この世界の方が楽しいのでな」
俺は剣を練成する。形状はアーサー王の持つ、エクスカリバーだ。
「ほう。その紛い物で私を討つつもりか」
「ああ」
ずしりと重みのあるエクスカリバー(偽)を手に持ち、そのままアーサー王へと向かう。
「てめぇを地面に這いつくばせてやる!」
最初の一振りをアーサー王はさっと避ける。俺は息継ぐ暇を与える間なく二振り目。しかし、エクスカリバーで弾かれ、その衝撃でエクスカリバー(偽)が手から落ちる。
「ふっ!」
隙ありと俺の腹を切り裂く。痛みはないものの、グロさは一人前である。地面に落ち、跳ねたエクスカリバー(偽)の隙間に足を入れそのまま蹴りあげる。
「ッらぁ!」
エクスカリバー(偽)の柄がアーサー王の下顎にぶつかるも、皮膚に傷はつかない。やはり伝承通り、鞘に守られている。
「無駄だ」
ヒュッ!
エクスカリバーの軌跡が俺の喉仏を切りつけられる。
「が…ひゅっ…!!」
息が、出来ない!恐らく血が喉に溢れ出しうまく息ができていない。それに、喉が焼けるほど熱い。
「私は如何なる最悪なる状況でもそれを覆し、奇跡で勝ち抜いた。その奇跡はいつしか私の実力となっていた。今や私に勝てるものなどいない」
膝をつき、意識が朦朧とする。死にはしないが体力的に限界まできたのだろう。
「…」
声を出そうにも喉が裂かれているため、空気が喉から通り抜けている。死にはしないが、まぁ捕まってヴォーティガンを直接叩くという手もあるのだが。
「やっぱり、さしものお前でも勝てなかったか」
その声を聞いた途端、アーサー王は後方へ飛びずさる。声の主は聞き覚えがある。
「これはこっぴどくやられたわね」
俺を庇うように立っていたのは、アルブリヒトだった。白い竜の末裔。そしてアーサー王もとい、赤い竜の天敵。
「久しいわ。こんなに血が滾るのなんて、何千年ぶりかしら」
「白い、竜…」
アーサー王が初めて顔を歪める。それは怒りの歪み。それを軽く笑うアルブリヒト。
「ふふふ。まだまだね、アーサー王?その程度で怒りをあらわにするなんて、お子様いえ、赤ん坊と同等」
「黙れ!」
アーサー王は地面を蹴る。そして一瞬にしてアルブリヒトとの距離を縮める。そして、エクスカリバーの奇跡の一振りをアルブリヒトに見舞う。
「甘いわ」
その一振りはアルブリヒトに傷をつけることは叶わなかった。剣を片手で弾いたのだ。
「お返し」
ブシッ!
鮮血の飛沫が宙に舞う。アーサー王の鎧ごとダガーが突き刺さっていた。それはこの戦いで初めて見たアーサー王の血だった。俺では出来ないことをアルブリヒトは平然とやってのけた。それも一撃で。
「手応えもないわね。早くアタシを踏み潰してみせなさいよ」
「ぎ、貴様ァ!!」
あのアーサー王を余裕の表情で凌いでいる。
「ま、今回はこれ位にしといてあげる。こっちも重傷者二人いるしね。じゃ、今度会うときは楽しみにしてるわ」
アルブリヒトはそう言うと俺とアロケルを担ぎ上げ、馬車に乗り込む。
「は、はぁ…。悪い、助かった…」
喉の焼けるような感覚がなくなり、喉仏を触る。血が固まり喉仏周りにこびりついていた。
「治ってますよ…」
隣でアロケルが起き上がりながら俺に言う。俺は改めてこの状況を理解する。たった一人の相手に、満身創痍。これはアロケルにとっても俺にとっても屈辱な敗北だと感じる。
「悪いな」
「何を謝る必要があるのですか。実力の無い自分と貴方は同等です。謝る必要も、そして謝られる必要もありません。これは、自分達の敗北です。貴方一人のせいではない」
ガラガラと車輪が回る音だけが馬車の中に響く。時折、機械の馬メロスが嘶く。
俺は初めての敗北を味わった。前の世界では勝敗なんてどうでもよかった。けど、ここは命がかかっている。それだけは、忘れてはいけない。
「まぁ、帰ったら飯でも食べて落ち着くといいわ」
落ち着いた雰囲気のアルブリヒト。こいつの性格もやはり白い竜に関与してるのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、ジンフォルドへの帰路についたのだった。
「私は今とても虚しい。何故に友と戦わねばならないのか」
皮肉のつもりなのか?ただそれでも一つわかることがある。こいつはヒュムとは別人だということだ。まるっきり性格が違う。恐らく、アーサー王のこの性格は赤い竜のものだろう。
「はっ、その友とやらをボロ雑巾みたいにしてるのは他ならないお前だぜ」
俺は今地面にひれ伏していた。普通にぼろ負け状態なのだ。
「正しく」
アロケルは俺の後ろで気絶している。かれこれ数時間の激闘の末にアロケルはエクスカリバーの餌食となり瀕死状態にある。説明は細かくしている暇はありませんのでご了承ください。
「しかし、友よ。貴様は、まだ戦う気であるな?私には勝てないと分かっているはずだ。何故諦めない。貴様になんの得があるというのだ?逃げる事も出来る。その場合、失うものはそこの使い魔だが」
「仲間を放っておく程俺は薄情じゃなくてね」
「生前とは全く違う性格をしているようだが」
「生憎、向こうの世界より」
俺はふらふらと立ち上がる。なるべく余裕を見せるため笑う。
「この世界の方が楽しいのでな」
俺は剣を練成する。形状はアーサー王の持つ、エクスカリバーだ。
「ほう。その紛い物で私を討つつもりか」
「ああ」
ずしりと重みのあるエクスカリバー(偽)を手に持ち、そのままアーサー王へと向かう。
「てめぇを地面に這いつくばせてやる!」
最初の一振りをアーサー王はさっと避ける。俺は息継ぐ暇を与える間なく二振り目。しかし、エクスカリバーで弾かれ、その衝撃でエクスカリバー(偽)が手から落ちる。
「ふっ!」
隙ありと俺の腹を切り裂く。痛みはないものの、グロさは一人前である。地面に落ち、跳ねたエクスカリバー(偽)の隙間に足を入れそのまま蹴りあげる。
「ッらぁ!」
エクスカリバー(偽)の柄がアーサー王の下顎にぶつかるも、皮膚に傷はつかない。やはり伝承通り、鞘に守られている。
「無駄だ」
ヒュッ!
エクスカリバーの軌跡が俺の喉仏を切りつけられる。
「が…ひゅっ…!!」
息が、出来ない!恐らく血が喉に溢れ出しうまく息ができていない。それに、喉が焼けるほど熱い。
「私は如何なる最悪なる状況でもそれを覆し、奇跡で勝ち抜いた。その奇跡はいつしか私の実力となっていた。今や私に勝てるものなどいない」
膝をつき、意識が朦朧とする。死にはしないが体力的に限界まできたのだろう。
「…」
声を出そうにも喉が裂かれているため、空気が喉から通り抜けている。死にはしないが、まぁ捕まってヴォーティガンを直接叩くという手もあるのだが。
「やっぱり、さしものお前でも勝てなかったか」
その声を聞いた途端、アーサー王は後方へ飛びずさる。声の主は聞き覚えがある。
「これはこっぴどくやられたわね」
俺を庇うように立っていたのは、アルブリヒトだった。白い竜の末裔。そしてアーサー王もとい、赤い竜の天敵。
「久しいわ。こんなに血が滾るのなんて、何千年ぶりかしら」
「白い、竜…」
アーサー王が初めて顔を歪める。それは怒りの歪み。それを軽く笑うアルブリヒト。
「ふふふ。まだまだね、アーサー王?その程度で怒りをあらわにするなんて、お子様いえ、赤ん坊と同等」
「黙れ!」
アーサー王は地面を蹴る。そして一瞬にしてアルブリヒトとの距離を縮める。そして、エクスカリバーの奇跡の一振りをアルブリヒトに見舞う。
「甘いわ」
その一振りはアルブリヒトに傷をつけることは叶わなかった。剣を片手で弾いたのだ。
「お返し」
ブシッ!
鮮血の飛沫が宙に舞う。アーサー王の鎧ごとダガーが突き刺さっていた。それはこの戦いで初めて見たアーサー王の血だった。俺では出来ないことをアルブリヒトは平然とやってのけた。それも一撃で。
「手応えもないわね。早くアタシを踏み潰してみせなさいよ」
「ぎ、貴様ァ!!」
あのアーサー王を余裕の表情で凌いでいる。
「ま、今回はこれ位にしといてあげる。こっちも重傷者二人いるしね。じゃ、今度会うときは楽しみにしてるわ」
アルブリヒトはそう言うと俺とアロケルを担ぎ上げ、馬車に乗り込む。
「は、はぁ…。悪い、助かった…」
喉の焼けるような感覚がなくなり、喉仏を触る。血が固まり喉仏周りにこびりついていた。
「治ってますよ…」
隣でアロケルが起き上がりながら俺に言う。俺は改めてこの状況を理解する。たった一人の相手に、満身創痍。これはアロケルにとっても俺にとっても屈辱な敗北だと感じる。
「悪いな」
「何を謝る必要があるのですか。実力の無い自分と貴方は同等です。謝る必要も、そして謝られる必要もありません。これは、自分達の敗北です。貴方一人のせいではない」
ガラガラと車輪が回る音だけが馬車の中に響く。時折、機械の馬メロスが嘶く。
俺は初めての敗北を味わった。前の世界では勝敗なんてどうでもよかった。けど、ここは命がかかっている。それだけは、忘れてはいけない。
「まぁ、帰ったら飯でも食べて落ち着くといいわ」
落ち着いた雰囲気のアルブリヒト。こいつの性格もやはり白い竜に関与してるのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、ジンフォルドへの帰路についたのだった。
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