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魔功都市ジンフォルド
101 迎え
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バキッ!
手に残る骨や肉を殴る感触。俺は息を切らして目の前のアルブリヒトに目をやる。
「ま、まだいるのか?」
「あと、五百人ちょっとよ」
かくんと頭を垂らしてしまう。人数が人数だろ。なんだよ五百人ちょっとって。
「もういい加減逃げても良くないか?」
俺のぼやきにアルブリヒトはフンと鼻で笑う。
「案外大したことないのね。まぁ、あとはアタシ一人で何とかなるからアンタは後ろで休憩でもしてなさい」
が、こういう風に言われるとカチンとくるものもある。俺はムキになってアルブリヒトと交戦中の兵士を容赦なく殴りつける。
「はっは、ワロス!この程度でヘタるわけないだろ!」
「やってくれるわね」
それからは敵を取るか取られるかの殴り合い。俺と交戦していた兵士をアルブリヒトが殴り倒す。それに張り合うように俺はアルブリヒトと交戦中の兵士を殴る。それらを繰り返し数時間。あたりには痛みに呻く兵士の山と、その真ん中に立つふたりの立つ影だけだった。
「ゼェ、は。はは。ははははっ!平兵士如きが俺に歯向かうなんぞ数百万年早いわ!」
「何言ってんのよ。アタシの方があんたより多くぶん殴ったでしょ?」
「いいや、俺の方が多いね」
「ふん。言ってれば?アタシが多いのは変わりないから」
アルブリヒトは心底俺を見下した目で俺を見る。こいつ、いつか寝てる時にぶん殴ってやろうかな。そんな出来るはずもないことを考え、これからの方針を聞く。
「で、このあとどうするのさ?街にでも出りゃ見回りの兵士に追いかけられるのは目に見えてるし」
「その心配はないみたい」
「は?」
今の現状を理解出来ていないが、アルブリヒトの言うことはさらにわからない。
「お迎えよ」
アルブリヒトが空を指さす。その方向を見ると何かが空からこちらを目掛けて飛んでくる。え、ちょっと待って、待って待て!
「おいぃ!なんか近づいてくるのはいいけどスピードが落ちてないんですがー!?」
「ふ、ふん。ちゃんと止まるに決まって、る」
むしろ止まるどころかスピードを上げてきている。猛スピード。それはその何かにふさわしいものだった。
「きゃぁぁ!?何で止まんないの!?」
「知るかよ!」
俺達は思い切り逃げる。そして、
ズドン!
酷く鈍い音が鳴り響き、地面に墜落する。砂ぼこりが舞い俺とアルブリヒトは軽くむせる。
「けほっ!うう、加減を知らないのかしら…」
「げふっ。それは俺が言いたい台詞だ」
砂ぼこりのモヤから出てきたのは、
「全く、派手に暴れるなと言ったのに。本当、傭兵は扱いづらい」
アロケルだった。呆れた表情で俺たちを見下ろしていた。
「ふむ。久しいというよりもまた会ったな、の方がいいのか?それにしても、貴様はなかなかどうしてしぶといな」
「は、そりゃお互い様だろ」
「違いない」
柔らかい笑みで俺を見つめる。おっほ!やばい!今のはキュンと来たぜ!え!?これがギャップ萌え!?やばい!まじやばい!やばいことがもうやばい!
「いやー。アタシ的には隠密行動だったんだけどなー」
たははと後頭部を掻きながら苦笑いをするアルブリヒトに対し、アロケルはこめかみを押さえ苦虫を噛み潰したような顔をする。
「さて、もうそろそろ行くぞ。敵の軍勢がそこまで来ている。それに、マンモン様もお待ちだ」
「マンモン、ねぇ。一つ聞きたい」
俺の言葉に、焦りの混じった顔でアロケルは頷く。
「今の状況は、ブリトニアが敵で、ジンフォルドが味方でいいのか?」
「いや、自分らジンフォルドは貴様の味方ではない。今はまだ敵対こそしていないが、いつ自分が貴様の敵になるかわからない。故に信じてもらっては困る」
敵か味方か。俺はそれを決めなければならない。しかし、今この現状でそれを理解するのは難しい。
「そうか。なら俺がとる行動は、ここから逃げるか大人しくついていくか、だな」
俺のその一言を聞いた途端、アルブリヒトとアロケルは俺を睨みつけてくる。
「貴様がもし、仮にだが。もしこの場から逃げようというのならば、ここで始末せざるを得ない」
「アタシも一応金のためとはいえ雇われている身だからねぇ。逃げるなら殺るよ?」
この二人を相手にするのは少々骨が折れる。ので、ヘタレで情けない俺はヘラヘラと笑い誤魔化す。
「ははっ!冗談だよ。さ、早く行こうぜ」
後に気づいたのだが、この時テレポートでも使っていれば逃げれていたよな。やはり、俺はどこから抜けているのかもしれない。
手に残る骨や肉を殴る感触。俺は息を切らして目の前のアルブリヒトに目をやる。
「ま、まだいるのか?」
「あと、五百人ちょっとよ」
かくんと頭を垂らしてしまう。人数が人数だろ。なんだよ五百人ちょっとって。
「もういい加減逃げても良くないか?」
俺のぼやきにアルブリヒトはフンと鼻で笑う。
「案外大したことないのね。まぁ、あとはアタシ一人で何とかなるからアンタは後ろで休憩でもしてなさい」
が、こういう風に言われるとカチンとくるものもある。俺はムキになってアルブリヒトと交戦中の兵士を容赦なく殴りつける。
「はっは、ワロス!この程度でヘタるわけないだろ!」
「やってくれるわね」
それからは敵を取るか取られるかの殴り合い。俺と交戦していた兵士をアルブリヒトが殴り倒す。それに張り合うように俺はアルブリヒトと交戦中の兵士を殴る。それらを繰り返し数時間。あたりには痛みに呻く兵士の山と、その真ん中に立つふたりの立つ影だけだった。
「ゼェ、は。はは。ははははっ!平兵士如きが俺に歯向かうなんぞ数百万年早いわ!」
「何言ってんのよ。アタシの方があんたより多くぶん殴ったでしょ?」
「いいや、俺の方が多いね」
「ふん。言ってれば?アタシが多いのは変わりないから」
アルブリヒトは心底俺を見下した目で俺を見る。こいつ、いつか寝てる時にぶん殴ってやろうかな。そんな出来るはずもないことを考え、これからの方針を聞く。
「で、このあとどうするのさ?街にでも出りゃ見回りの兵士に追いかけられるのは目に見えてるし」
「その心配はないみたい」
「は?」
今の現状を理解出来ていないが、アルブリヒトの言うことはさらにわからない。
「お迎えよ」
アルブリヒトが空を指さす。その方向を見ると何かが空からこちらを目掛けて飛んでくる。え、ちょっと待って、待って待て!
「おいぃ!なんか近づいてくるのはいいけどスピードが落ちてないんですがー!?」
「ふ、ふん。ちゃんと止まるに決まって、る」
むしろ止まるどころかスピードを上げてきている。猛スピード。それはその何かにふさわしいものだった。
「きゃぁぁ!?何で止まんないの!?」
「知るかよ!」
俺達は思い切り逃げる。そして、
ズドン!
酷く鈍い音が鳴り響き、地面に墜落する。砂ぼこりが舞い俺とアルブリヒトは軽くむせる。
「けほっ!うう、加減を知らないのかしら…」
「げふっ。それは俺が言いたい台詞だ」
砂ぼこりのモヤから出てきたのは、
「全く、派手に暴れるなと言ったのに。本当、傭兵は扱いづらい」
アロケルだった。呆れた表情で俺たちを見下ろしていた。
「ふむ。久しいというよりもまた会ったな、の方がいいのか?それにしても、貴様はなかなかどうしてしぶといな」
「は、そりゃお互い様だろ」
「違いない」
柔らかい笑みで俺を見つめる。おっほ!やばい!今のはキュンと来たぜ!え!?これがギャップ萌え!?やばい!まじやばい!やばいことがもうやばい!
「いやー。アタシ的には隠密行動だったんだけどなー」
たははと後頭部を掻きながら苦笑いをするアルブリヒトに対し、アロケルはこめかみを押さえ苦虫を噛み潰したような顔をする。
「さて、もうそろそろ行くぞ。敵の軍勢がそこまで来ている。それに、マンモン様もお待ちだ」
「マンモン、ねぇ。一つ聞きたい」
俺の言葉に、焦りの混じった顔でアロケルは頷く。
「今の状況は、ブリトニアが敵で、ジンフォルドが味方でいいのか?」
「いや、自分らジンフォルドは貴様の味方ではない。今はまだ敵対こそしていないが、いつ自分が貴様の敵になるかわからない。故に信じてもらっては困る」
敵か味方か。俺はそれを決めなければならない。しかし、今この現状でそれを理解するのは難しい。
「そうか。なら俺がとる行動は、ここから逃げるか大人しくついていくか、だな」
俺のその一言を聞いた途端、アルブリヒトとアロケルは俺を睨みつけてくる。
「貴様がもし、仮にだが。もしこの場から逃げようというのならば、ここで始末せざるを得ない」
「アタシも一応金のためとはいえ雇われている身だからねぇ。逃げるなら殺るよ?」
この二人を相手にするのは少々骨が折れる。ので、ヘタレで情けない俺はヘラヘラと笑い誤魔化す。
「ははっ!冗談だよ。さ、早く行こうぜ」
後に気づいたのだが、この時テレポートでも使っていれば逃げれていたよな。やはり、俺はどこから抜けているのかもしれない。
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