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魔功都市ジンフォルド
98 追跡者
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逃げることは素晴らしい、スタコラサッサと逃げてスマートに帰るつもりだったのだが、
「待てぇ!」
「逃がさねぇぞ!」
追手がいました。おそらく、アロケルの方が一枚上手だったようだ。俺が逃げることを想定して四方八方に兵士を配置していたらしい。
「あー!もう!なんでこうなんだよ!いっつもスマートに行かねぇよな!」
あと最近逃げてばっかりですよね。
「ゼェゼェ。しんどい…。体力があるわけじゃないんだよなぁ」
そして今思い出す。転移魔法のことを。らくできるじゃん!
「転移魔法!」
そしてものの見事にジンフォルドの外へ。あー、もう逃げるのやめよっかな…。
「な、何とかなった…」
安心も束の間。目の前にローブを深くかぶった人物が立っていた。
「久しぶりだな」
ローブの隙間からこぼれるように艶のある伸び放題の赤髪が覗く。
「えー、と。ああ!あの時の!」
ロイハイゲンで俺とぶつかった女性だ。綺麗なので覚えていた。あとは、この女性に対する違和感。人間ではないと確信は持てる。
「そうそう。あの時の女性だ。儂を覚えているとは、なかなか見どころのあるやつではないか」
ローブをパサっと脱ぐ。赤と黒のオッドアイの目。綺麗なはずなのに、薄気味悪い笑み。口元には八重歯が覗いている。美女というのかそれとも可愛らしいというのか、どっちつかずな感じだ。身長は俺とほとんど同じ。弩級の美女でさらに弩級の胸。あっはっは!変態ではないぞ!
「自己紹介がまだだな。儂は、サタン。七つの大罪、そして七天魔王の憤怒を司るサタンである」
「…。は?」
わけわからんぞ?なして?いきなり自己紹介に入りそしてこの名乗り方。頭がおかしいのか?
そんな俺の間抜け顔を見てサタンと名乗る女性は、鼻で笑う。
「ふんっ。何度も言わせるな。儂は正真正銘のサタンであるぞ。何なら、力比べでもしようか?」
普通、ここで断るのがセオリーだ。だがしかし!好奇心には勝てん!
「いいだろう。かかってきな」
構えて、しばらくの沈黙。そして、
パンッ!
サタンが先に動く。もはやそれは走り来るというより瞬間移動だ。
「ふっ」
即座にガードの姿勢に入る。次の瞬間にはサタンの重い一撃が俺にぶつかる。
「ぐっ!」
ガードしきれずそのまま後ろへ。負けじとばく転し勢いを抑え、なんとか壁との衝突を回避する。この時点でまだ一分もたっていない。
「なかなかやるではないか。だが、次はどうか…なっ!」
またもパンッという音とともにサタンが消え、俺の前に現れる。それを好機と俺はサタンめがけて魔力を帯びた拳で殴りつける。
「甘い」
その言葉の意味がわかった時にはもう遅い。
「ふんっ!」
殴りつけようとガードを崩したのが間違いだったことに気づく。
「…ゲッ…ッ!?」
メキメキッ。嫌な音が鳴り響く。おそらく肋骨が数本折れた音だろう。口の中が血の味で満たされていく。
「まだまだぁ!」
サタンはもう一度と言わんばかりの一撃を繰り出す。それが見事右肩にヒット。ぎゅぼと肩が外れる。
「あ、かっ…」
痛みは感じにくいが流石にこれは痛い。と、いうより激痛だ。
何故だ!?と考える暇はなく、俺は必死に酸素を肺の中に取り入れようとするが、なかなかどうしてうまくいかない。折れた肋骨が肺に刺さっているのだろうか。咳き込むと同時に血反吐が口から飛び出す。
「けぼっ、はっ」
ふらふらと俺の足取りはおぼつかない。これが七天大魔王の頂点の力。正直侮っていました。
「ふふん。その程度では儂と力比べは出来んぞ?貴公の剛撃なんぞアリの噛み付きの方がよほど効くわ」
艶のある長い赤髪がゆらりと揺れる。流石に危ない。これは死ぬかも…。
「儂等は捨てられた身。あの忌々しい研究者め。そして貴公はその研究者にそっくりではないか。ちょうどいい憂さ晴らしもできるもんだわい」
パンッ!という音とともに瞬く間にサタンがふらつく俺の元まで来る。
「だが安心せぇ。儂は貴公を大変気に入っておる。ベルゼブブを倒せれば儂も倒せるやもしれんな?それまではくたばってくれるなよ?」
ゴッ。鈍い音が響くと同時に視界が揺さぶられる。
「あがっ!?」
下顎を殴られたことに気づいた時には俺の意識は深淵の中へ引きずり込まれていた。
「待てぇ!」
「逃がさねぇぞ!」
追手がいました。おそらく、アロケルの方が一枚上手だったようだ。俺が逃げることを想定して四方八方に兵士を配置していたらしい。
「あー!もう!なんでこうなんだよ!いっつもスマートに行かねぇよな!」
あと最近逃げてばっかりですよね。
「ゼェゼェ。しんどい…。体力があるわけじゃないんだよなぁ」
そして今思い出す。転移魔法のことを。らくできるじゃん!
「転移魔法!」
そしてものの見事にジンフォルドの外へ。あー、もう逃げるのやめよっかな…。
「な、何とかなった…」
安心も束の間。目の前にローブを深くかぶった人物が立っていた。
「久しぶりだな」
ローブの隙間からこぼれるように艶のある伸び放題の赤髪が覗く。
「えー、と。ああ!あの時の!」
ロイハイゲンで俺とぶつかった女性だ。綺麗なので覚えていた。あとは、この女性に対する違和感。人間ではないと確信は持てる。
「そうそう。あの時の女性だ。儂を覚えているとは、なかなか見どころのあるやつではないか」
ローブをパサっと脱ぐ。赤と黒のオッドアイの目。綺麗なはずなのに、薄気味悪い笑み。口元には八重歯が覗いている。美女というのかそれとも可愛らしいというのか、どっちつかずな感じだ。身長は俺とほとんど同じ。弩級の美女でさらに弩級の胸。あっはっは!変態ではないぞ!
「自己紹介がまだだな。儂は、サタン。七つの大罪、そして七天魔王の憤怒を司るサタンである」
「…。は?」
わけわからんぞ?なして?いきなり自己紹介に入りそしてこの名乗り方。頭がおかしいのか?
そんな俺の間抜け顔を見てサタンと名乗る女性は、鼻で笑う。
「ふんっ。何度も言わせるな。儂は正真正銘のサタンであるぞ。何なら、力比べでもしようか?」
普通、ここで断るのがセオリーだ。だがしかし!好奇心には勝てん!
「いいだろう。かかってきな」
構えて、しばらくの沈黙。そして、
パンッ!
サタンが先に動く。もはやそれは走り来るというより瞬間移動だ。
「ふっ」
即座にガードの姿勢に入る。次の瞬間にはサタンの重い一撃が俺にぶつかる。
「ぐっ!」
ガードしきれずそのまま後ろへ。負けじとばく転し勢いを抑え、なんとか壁との衝突を回避する。この時点でまだ一分もたっていない。
「なかなかやるではないか。だが、次はどうか…なっ!」
またもパンッという音とともにサタンが消え、俺の前に現れる。それを好機と俺はサタンめがけて魔力を帯びた拳で殴りつける。
「甘い」
その言葉の意味がわかった時にはもう遅い。
「ふんっ!」
殴りつけようとガードを崩したのが間違いだったことに気づく。
「…ゲッ…ッ!?」
メキメキッ。嫌な音が鳴り響く。おそらく肋骨が数本折れた音だろう。口の中が血の味で満たされていく。
「まだまだぁ!」
サタンはもう一度と言わんばかりの一撃を繰り出す。それが見事右肩にヒット。ぎゅぼと肩が外れる。
「あ、かっ…」
痛みは感じにくいが流石にこれは痛い。と、いうより激痛だ。
何故だ!?と考える暇はなく、俺は必死に酸素を肺の中に取り入れようとするが、なかなかどうしてうまくいかない。折れた肋骨が肺に刺さっているのだろうか。咳き込むと同時に血反吐が口から飛び出す。
「けぼっ、はっ」
ふらふらと俺の足取りはおぼつかない。これが七天大魔王の頂点の力。正直侮っていました。
「ふふん。その程度では儂と力比べは出来んぞ?貴公の剛撃なんぞアリの噛み付きの方がよほど効くわ」
艶のある長い赤髪がゆらりと揺れる。流石に危ない。これは死ぬかも…。
「儂等は捨てられた身。あの忌々しい研究者め。そして貴公はその研究者にそっくりではないか。ちょうどいい憂さ晴らしもできるもんだわい」
パンッ!という音とともに瞬く間にサタンがふらつく俺の元まで来る。
「だが安心せぇ。儂は貴公を大変気に入っておる。ベルゼブブを倒せれば儂も倒せるやもしれんな?それまではくたばってくれるなよ?」
ゴッ。鈍い音が響くと同時に視界が揺さぶられる。
「あがっ!?」
下顎を殴られたことに気づいた時には俺の意識は深淵の中へ引きずり込まれていた。
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