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鉱山都市ロイハイゲン編
83 マキャベリスト
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「どうしたもんかな」
唸るファフニルを見ながら俺は苦笑いをする。笑わないとやってられないしな、この状況。
「ドラゴンの鱗はどんな魔法や攻撃を通すことは無い。ただ、魔剣や天使など上位魔物、神様の攻撃は通す、か。目も弱点だが、食われちまう可能性があるわけだし」
無理ゲー。勝率は殆ど〇パーセント。勝てるわけがない。なら、
「召喚者を倒す!」
爆ぜるように俺はレヴィアタンに向かって走る。途中、ファフニルが俺に突進してきたが、左腕を犠牲に走り続ける。
「くきゃっ!くきゃっ!そういう単細胞な所は嫌いではないぞ。じゃが」
レヴィアタンに手が届くもう少しのところで異変に気づく。レヴィアタンの姿が歪んで…。
"キルキルキル!"
「!?」
歪んだ空間からファフニルが忽然と姿を現し、俺の右脇腹を食いちぎる。
「あ、がぁっ!!」
咄嗟で飛びずさったものの、血はぼたぼたと垂れている。ファフニルの口元には俺の血糊がべっとりと付着していた。そして体中を迸る激痛。わぁ、怖い…。
「げぼっ!ハァハァ、くっそ!聞いてねぇぞ」
「くきゃかっ!貴様は少し妾についての情報不足のようじゃ」
口元に手を押さえ笑うレヴィアタンは淡々と説明をする。
「これはの、同じ召喚陣を複数描くのじゃ。さすれば召喚獣も一瞬の内に妾の元へ来れる。しかしまぁこれの受け売りは、妾を作った科学者なのが癪じゃのう」
なるほど。すっげぇ痛い。話は大半聞いていない。が、傷はなんとか癒える。不死身とはいえ、再生速度が遅いのが玉に瑕だな。
「よっ、と」
「くふっ!治るのは遅いもんじゃ。あったものは元に戻せんのに、貴様は戻せるとな?全く都合の良い話じゃのう」
「まぁ?チートのご都合主義のタイトルで通ってるはずなんだが、ヌルゲーでも異世界で生活すらしてねぇよ。これは作者訴えられても反論しようがねぇよな」
「ちーと?なんじゃそれは」
いいや、こっちの話さ。お前にゃ関係ない。それより、あの様子だとレヴィアタンの周りは召喚陣だらけってことだ。だけど、恐らく頭上には召喚陣は展開されていない筈だ。ワームは地を這うもので、空中戦になったり空中に投げたされたりすると最早スライム同然の弱さになる。
「やめておけ、青二才」
「あ?」
「ワームは確かに空中に投げ出されると無力じゃ。しかし、妾がファフニルだけの召喚陣を展開していないとでも思っておるのか?」
確かに。ファフニル以外の召喚陣を展開されているという可能性はある。けど、俺を騙そうとしている場合もある。戦いでは常に頭をフル回転しておかなければならない。戦場で最も必要とされるのは、敵との駆け引き。それがどれだけ間抜けなゴブリンでもだ。
どんな戦況で置いてもこれだけは欠いては勝ち負けもない。下手すれば負けるどころか死ぬ。
「駆け引きねぇ」
「くきゃかっ!妾の言葉を鵜呑みにするのか、それとも」
きらりとレヴィアタンの目の奥が怪しく光る。
「己を信じるか」
さて、死ぬか生きるかの選択肢を普通の人間に聞いてみるとおそらくは生きるを選ぶだろう。だが俺は不死者で、相手は魔王。なら選ぶ選択は、
「己を信じる!のは無理だが、生憎俺の脳みそはゲーム脳なんでね。命があるんなら、いくつだって使ってやるのが主義だ」
俺は剣を握り直しそのままファフニルに突っ込む。
「…っ!?馬鹿か!?貴様は!!」
俺の思わぬ行動にレヴィアタンは目を見開く。俺とて死にたくはない。なので剣を突くような構えに変える。まぁレイピアみたいな感じの持ち方と思ってもらっても構わない。
「鱗で体が無理なら必然に目を狙うよなぁ!」
ファフニルは大口を開け俺に襲いかかる。それを素早く左に飛び退き、すぐさまファフニルの右目を刺す。
"ギルゥゥゥーーーーーッ!!"
激痛に体をうねらせ唸るファフニル。俺はそれを見ながら左目側に移動し、最後の一撃を食らわせる。
「残念でした」
"ギッ、ギリィィィィィィィ!!!!"
左目を思い切り刺す。しかしそれだけではなく、俺は剣を奥深くへと突き刺す。奥へ奥へと。だがファフニルもただ叫びをあげている訳では無い。最後の抵抗としてか俺の左足を食いちぎる。激痛が体を襲うが俺はまだ剣を刺し続ける。すると唐突に剣の手応えが軽くなった。潰れた右目の方に貫通したのだと分かる。
ファフニルはしばらく体を痙攣させ、そして数秒後動かなくなっていた。パギンッとファフニルの体が割れるように消える。
「なっ、貴様、なんという」
「ははっ。目的を、ハァハァ。達成するためには、手段は選ばねぇよ」
どっかの偉人が言ってたな。確か、マキャヴェッリだっけな。
「じゃぁ始めようか。嫉妬の魔王さん」
俺はにやりと笑った。
唸るファフニルを見ながら俺は苦笑いをする。笑わないとやってられないしな、この状況。
「ドラゴンの鱗はどんな魔法や攻撃を通すことは無い。ただ、魔剣や天使など上位魔物、神様の攻撃は通す、か。目も弱点だが、食われちまう可能性があるわけだし」
無理ゲー。勝率は殆ど〇パーセント。勝てるわけがない。なら、
「召喚者を倒す!」
爆ぜるように俺はレヴィアタンに向かって走る。途中、ファフニルが俺に突進してきたが、左腕を犠牲に走り続ける。
「くきゃっ!くきゃっ!そういう単細胞な所は嫌いではないぞ。じゃが」
レヴィアタンに手が届くもう少しのところで異変に気づく。レヴィアタンの姿が歪んで…。
"キルキルキル!"
「!?」
歪んだ空間からファフニルが忽然と姿を現し、俺の右脇腹を食いちぎる。
「あ、がぁっ!!」
咄嗟で飛びずさったものの、血はぼたぼたと垂れている。ファフニルの口元には俺の血糊がべっとりと付着していた。そして体中を迸る激痛。わぁ、怖い…。
「げぼっ!ハァハァ、くっそ!聞いてねぇぞ」
「くきゃかっ!貴様は少し妾についての情報不足のようじゃ」
口元に手を押さえ笑うレヴィアタンは淡々と説明をする。
「これはの、同じ召喚陣を複数描くのじゃ。さすれば召喚獣も一瞬の内に妾の元へ来れる。しかしまぁこれの受け売りは、妾を作った科学者なのが癪じゃのう」
なるほど。すっげぇ痛い。話は大半聞いていない。が、傷はなんとか癒える。不死身とはいえ、再生速度が遅いのが玉に瑕だな。
「よっ、と」
「くふっ!治るのは遅いもんじゃ。あったものは元に戻せんのに、貴様は戻せるとな?全く都合の良い話じゃのう」
「まぁ?チートのご都合主義のタイトルで通ってるはずなんだが、ヌルゲーでも異世界で生活すらしてねぇよ。これは作者訴えられても反論しようがねぇよな」
「ちーと?なんじゃそれは」
いいや、こっちの話さ。お前にゃ関係ない。それより、あの様子だとレヴィアタンの周りは召喚陣だらけってことだ。だけど、恐らく頭上には召喚陣は展開されていない筈だ。ワームは地を這うもので、空中戦になったり空中に投げたされたりすると最早スライム同然の弱さになる。
「やめておけ、青二才」
「あ?」
「ワームは確かに空中に投げ出されると無力じゃ。しかし、妾がファフニルだけの召喚陣を展開していないとでも思っておるのか?」
確かに。ファフニル以外の召喚陣を展開されているという可能性はある。けど、俺を騙そうとしている場合もある。戦いでは常に頭をフル回転しておかなければならない。戦場で最も必要とされるのは、敵との駆け引き。それがどれだけ間抜けなゴブリンでもだ。
どんな戦況で置いてもこれだけは欠いては勝ち負けもない。下手すれば負けるどころか死ぬ。
「駆け引きねぇ」
「くきゃかっ!妾の言葉を鵜呑みにするのか、それとも」
きらりとレヴィアタンの目の奥が怪しく光る。
「己を信じるか」
さて、死ぬか生きるかの選択肢を普通の人間に聞いてみるとおそらくは生きるを選ぶだろう。だが俺は不死者で、相手は魔王。なら選ぶ選択は、
「己を信じる!のは無理だが、生憎俺の脳みそはゲーム脳なんでね。命があるんなら、いくつだって使ってやるのが主義だ」
俺は剣を握り直しそのままファフニルに突っ込む。
「…っ!?馬鹿か!?貴様は!!」
俺の思わぬ行動にレヴィアタンは目を見開く。俺とて死にたくはない。なので剣を突くような構えに変える。まぁレイピアみたいな感じの持ち方と思ってもらっても構わない。
「鱗で体が無理なら必然に目を狙うよなぁ!」
ファフニルは大口を開け俺に襲いかかる。それを素早く左に飛び退き、すぐさまファフニルの右目を刺す。
"ギルゥゥゥーーーーーッ!!"
激痛に体をうねらせ唸るファフニル。俺はそれを見ながら左目側に移動し、最後の一撃を食らわせる。
「残念でした」
"ギッ、ギリィィィィィィィ!!!!"
左目を思い切り刺す。しかしそれだけではなく、俺は剣を奥深くへと突き刺す。奥へ奥へと。だがファフニルもただ叫びをあげている訳では無い。最後の抵抗としてか俺の左足を食いちぎる。激痛が体を襲うが俺はまだ剣を刺し続ける。すると唐突に剣の手応えが軽くなった。潰れた右目の方に貫通したのだと分かる。
ファフニルはしばらく体を痙攣させ、そして数秒後動かなくなっていた。パギンッとファフニルの体が割れるように消える。
「なっ、貴様、なんという」
「ははっ。目的を、ハァハァ。達成するためには、手段は選ばねぇよ」
どっかの偉人が言ってたな。確か、マキャヴェッリだっけな。
「じゃぁ始めようか。嫉妬の魔王さん」
俺はにやりと笑った。
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月見酒です。
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