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鉱山都市ロイハイゲン編

71 少年オロバス 2

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 ピチャン。 

 広い風呂場。

「いっ、いいですからっ!一人で洗えますから!」

 少年もといオロバスは叫びながら仰け反る。オロバスの横に座っている女性、レヴィアタンがオロバスの背を流すと言って聞かないのだ。

「安心せえ。別に痛いことをするわけでもないのじゃから」

「違いますっ!そういう意味ではないですッ!そ、その、み、みえっ!?」

 オロバスの背中に柔らかい感触が触れる。レヴィアタンがオロバスの後ろに回り込み胸を押し付けているからだ。服の上からでは分からない大きさ。思春期真っ只中のオロバスには刺激が強過ぎる。

「なっ!?ななな何を!?」

「くきゃっ!まだまだ小童よのう?しかしまぁ、うむ、其方を食らうのも悪くは無いのう。初な小童も、たまには」

 耳元で艶かしく妖艶で甘美な声に、オロバスの背筋に悪寒が走る。
 
「ひぃっ!?」

 脱兎の如くオロバスは走る。が、ここは風呂場。床は滑りやすくなっている。結果は言わずもがな、盛大にずっこけてしまう。

「うべっ!」

「くきゃかっ!くきゃっ!其方は馬鹿か?」

 レヴィアタンは屈託なく笑い、そのままオロバスのもとに歩み寄る。

「ほれ、打ったところを見せて」

「ん…」

 殆ど軽い打撲だが、鼻を盛大にぶつけたようで鼻血が垂れている。

「やはりまだ人間なのか。傷の治りはさほど良い訳では無いな」

 その言葉にオロバスは顔を青ざめさせる。また捨てられてしまう、そう思ったのだ。

「すて…ないで…」

「む?」

「捨てないで…下さい…」

 殆ど涙声でレヴィアタンに訴える。また期待され捨てられたくないから必死でオロバスは訴える。その様子を見てレヴィアタンはオロバスをそっと抱きしめた。

「大丈夫じゃ。其方を捨てたりはせんよ。妾は従者を大事にするのでな」

 オロバスは鼻の奥がツンとなにかに突かれる感じがする。と、同時に生暖かく柔らかい何かが鼻に触れる。

「…ッ!?」

 それが何なのかオロバスにはすぐにわかった。レヴィアタンの舌がオロバスの鼻を舐めているのだ。

「な、何をーーーーーーーーーッ!」

 そしてそのままオロバスの意識は途絶えた。



   ○   ○   ○



 目が覚めるとベッドの上だった。

「やっと起きた」

 オロバスはキョロキョロと辺りを見回す。声の主がどこにいるのか分からなかったのだ。

「ここだ。違う、もっと上だよ」

 ばっと上を見上げると翼をの腕を持った少年が飛んでいた。

「やあ、オロバス君」

「君は」

「僕はハーピィ族のハルピア。よろしくな」

 サバサバとした性格はオドオドとしたオロバスの性格と波長があったのか二人は瞬く間に仲良くなった。戦闘の時、背を預けることができるほどに。その話はまた別の機会に…。

「おっと、レヴィアタン様がお前を呼んでるんだった」

「えっ!」

 あの出来事の後だ。正直顔を合わせづらい。だがそれで役立たずとして捨てられるのは怖い。

「案内するさ。しっかし、お前も初だな。迫られたんなら押し倒すくらいしろよ」

「なっ…!いつから…」

「はっはっは!レヴィアタン様の優美でメリハリのしっかりした体を見たいのは誰だってそうだろ?それにあの人そんなのあんまり気にしてないし。まぁそれが余計男をモヤモヤさせんだろうな」

「おまっ!それ覗…」

 最後まで言う前にハルピアに口を抑えられる。

「むがっ!?」

「お前は何も聞いていない。いいね?」

 異論反論異議質問は一切受け付けないという鬼気迫る威圧をかけられる。それに物怖じしてしまいオロバスは抑えられた口をもごもごと動かしながら頷く。

「ア、ハイ…」

「分かればいいさ」

 ぱっと手を離しそして先程の無邪気な笑顔を見せる。

「さっ、言ってるうちに着いたぞ」

「えと、ここは?」

「食堂だ」

 なぜそんなところに呼ばれたのか、オロバスは全くわからなかったが食堂と聞いた途端お腹が盛大に鳴る。

「わっは!お前腹減ってたのか?まぁレヴィアタン様との晩餐だ。楽しめよ相棒!」

「え、うん」

 オロバスは不安な気持ちを抱いたまま食堂の中へ入っていった。


 

 

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