上 下
55 / 118
鉱山都市ロイハイゲン編

53 水面の影

しおりを挟む
 前回のあらすじ。

「満月の映る水面から水神獣リヴァイアサン爆誕」

「さぁあやつを仕留めましょうぞ!」

 だぁかぁらぁ!何でオメェなんだよぉ!

「来ますっ!」

 マグが叫ぶ。ばっとリヴァイアサンの方に振り向く。赤い真紅の嘴から水が飛び出す。

魔法抵抗マギレジスト!」

 唱えた瞬間刃状の水が俺の目の前で弾ける。が、それだけでは終わらない。次々に水刃は俺を攻撃する。その怒涛の勢いに俺は少しずつ押されていた。

「な、何だよこれぇ!」

 俺が悲鳴を上げたのを聞いたのか、マグが魔法を唱える。

裂傷魔法ラースレイズ!」

 ビシビシっと何かが切れる音がするが、リヴァイアサンは何事もないように俺に攻撃を続ける。

「抜刀術、居合い!」

 リヴィアンが刀を鞘から抜き、鞘の口からは火花が散る。が、

「う、硬い!」

 リヴァイアサンの鱗が刃を通さないのだ。キィィと音が鳴り響く。その反動のせいでリヴィアンは無防備だ。それを狙うかのようにリヴァイアサンが水刃を飛ばす。

「危ない!」

 そのとき、水刃が真っ二つに切れる。リヴィアンの前に立っていたのはウィルだった。

「ほっほっ。年甲斐もなく頑張ってしまったわい」

 手には刀が握られている。鈍色に光る刀。

「妖刀、神殺刀カミヲキルヤイバ。東洋の国では有名な神器でなかなか扱いが難しいのですよ」

 怪しく光る神殺刀の刃の部分に水滴が垂れる。

「さて、あやつには物理的な攻撃は効かないようですぞ。トリスト殿は魔法が得意でしょう?」

 キラリと光るウィルの目は、忍者ではなく侍に近しいものだった。

「ああ」

「わたくしが気を引きます。その間にトリスト殿はリヴァイアサンを奪取して下され」

 奪取?ナニソレ?

「神獣は召喚獣としても扱えます。奪取とは神獣を魔法陣に封印することで、その魔法陣は複雑であればある程操作が細やかにできるようになります」

 ははぁ、でもそんな封印の仕方わかんな

「あ」

 俺はリヴィアンを見る。そうだよ、なんか召喚師になり損ねたって言ってたし。士よりも師のほうが上なわけで、結果召喚師にはなれなかったが召喚士にはなれているわけだ!

「リヴィアン」

「嫌よ」

 ツンとそっぽを向く。リヴァイアサンはマグが相手をしているためこちらには気づいていない。

「お願いだよ!リヴィアンしかいないんだ!」

「そんな事言ったって、私は召喚師にはなれなかったの!こんな上級の神獣を操るなんて私には出来ない…」

 少しずつ焦燥が俺の心を襲うのを感じつつ、リヴィアンの説得に入る。

「だから、このままだと全員死ぬんだよ!」

「殺せばいいじゃない!」

「いや、考えろよ!」

「何をっ!」

 目に涙を浮かべてリヴィアンは俺を睨みつける。

「こいつを手駒にできればレヴィアタンを倒すのも容易にできるだろ!」

 その考えがなかったのか、リヴィアンはハッとする。この子ホントにバカの子かしら?

「いいわ、あの女を殺れるならいくらでもね!」

 リヴィアンの目が一瞬にして変わる。これは本気の目だ。

「良し。作戦はこうだ。俺がリヴァイアサンの周辺のマナを質量変換させて動きを鈍くさせる。その間に何とかしてくれ」

「何分くらい足止めできる?」

「長くても三分。最悪一分半。いけるか?」

 リヴィアンは強く頷く。決心を固めたように。

「ええ、いけるわ。私こう見えても首席だったんだから。まあ、召喚師になれなかったのは仲の悪かった女の子に召喚獣使っちゃったからなんだけど」

 全部自業自得じゃん!自分が悪いんじゃん!そう心の中で激しく突っ込みを入れる。それを感じ取ったのか、

「ふん。自分が弱いのがいけないのよ。私も弱かったせいでこうなったんだから」

 何とかリヴィアンの説得に成功。残る問題は、

「さて、いっちょ暴れますか」

「そうね、私もなんだか最近暗い感じだったし」

 リヴァイアサン奪取のみ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...