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貿易都市グリゴレオ編
21 リトライ
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この世界に来て何回目か分からない覚醒。
「う、気持ち悪い…」
頭がぐわんぐわんと回り、視界が揺れている。それはもう気持ち悪いを通り越して死にたくなるようなものだ。
と、コンコンと扉が叩かれる。
「あ。起きた?ご飯食べる?」
入ってきたのはリヴィアンだった。手にはお粥と思しきものが乗ったお盆を持っていた。俺はそのまま頷く。
「貰うよ」
リヴィアンは俺の側にとてとてとよってきて横に座る。そして、次にした行動は
「はい、あーん」
「自分で食えるわっ!」
突っ込む。何故このタイミング!?もっと雰囲気のいい感じになってからやっていただきたいよ!なぁ?マグ。
''
返事がない。変に思いもう1度マグに呼びかける。
「おいマグネット」
''
音信不通。おかしい。あのノリでいくと必ず冷めた切り返しが来るはずなのに。今回はそれが来ない。何か嫌な予感がする。
「今は夜か?朝か?昼か?」
変な質問をリヴィアンは不審そうに俺を見て答える。
「今は夜よ。それがどうしたの?」
これは、少し不味い。夜はあいつらの、アガリアレプト達の時間だ。特にブエルは相当ご立腹のはずだ。俺を殺しにこないはずがない。
「そうか、悪いな。変な質問をして」
「うん。大丈夫だよ。今はロビンフッドさんがいるから」
相当名を馳せているのだろう。俺も安心して外に出ることが出来るわけだ。
「ちょっと夜風に当たってくる。飯は置いといてくれ。お前が作ってくれたんだろ?」
するとリヴィアンは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「べべべ別にあんたのために作ったんじゃないわよ…。あ、余ったから、あんたがお腹すかしてるかなとか思っただけ…」
そっか、と笑いながら俺は部屋を出た。一階に降りるとがやがやと一気に騒がしくなった。どうやらここはロビンフッドの宿屋のようだ。ここの女将、ロビンフッドが俺を見て、歩いてきた。
「行くのかい?」
「ええ、まぁ」
ロビンフッドも気づいていたらしい。流石は元英雄、敵の殺気は遠くからでも分かるのだろう。俺も頷く。
「君の中にいたナビゲーターも反応しない。君は今、親のいない仔鹿同然だ。それでも君は行くのかい?」
親のいない仔鹿。言い得て妙だ。だけど、これだけには決着をつけなければならない。これは俺の問題であり、リヴィアンの問題だ。そしてリヴィアンの分の問題はすべて俺の問題だ。なら、きっちり締めてやるのだ。
「当たり前ですよ。あいつをぶっ飛ばしたあと嫉妬の魔王をぶちのめすのが俺の目的です。害のない魔王なら別ですがね」
「そうかい。なら、いいんじゃないか?君はこの世界を受け入れてきている。何の因果か君は…」
そこで言葉が途切れた。俺の訝しげな視線から逸らすように咳払いをする。
「まぁ頑張ってきたまえ。それから、帰ってきたら必ずリヴィアンのご飯を食べろ。これは私との約束だ」
俺は一つ返事の代わりに頷く。そして、今夜。奇怪な悪魔との舞踏会が始まる。それは果たして、シンデレラは舞踏会で何をするのか。人を殺すか、悪魔を殺すか。その決断は、自分にかかっていることも、覚悟していた。
「う、気持ち悪い…」
頭がぐわんぐわんと回り、視界が揺れている。それはもう気持ち悪いを通り越して死にたくなるようなものだ。
と、コンコンと扉が叩かれる。
「あ。起きた?ご飯食べる?」
入ってきたのはリヴィアンだった。手にはお粥と思しきものが乗ったお盆を持っていた。俺はそのまま頷く。
「貰うよ」
リヴィアンは俺の側にとてとてとよってきて横に座る。そして、次にした行動は
「はい、あーん」
「自分で食えるわっ!」
突っ込む。何故このタイミング!?もっと雰囲気のいい感じになってからやっていただきたいよ!なぁ?マグ。
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返事がない。変に思いもう1度マグに呼びかける。
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音信不通。おかしい。あのノリでいくと必ず冷めた切り返しが来るはずなのに。今回はそれが来ない。何か嫌な予感がする。
「今は夜か?朝か?昼か?」
変な質問をリヴィアンは不審そうに俺を見て答える。
「今は夜よ。それがどうしたの?」
これは、少し不味い。夜はあいつらの、アガリアレプト達の時間だ。特にブエルは相当ご立腹のはずだ。俺を殺しにこないはずがない。
「そうか、悪いな。変な質問をして」
「うん。大丈夫だよ。今はロビンフッドさんがいるから」
相当名を馳せているのだろう。俺も安心して外に出ることが出来るわけだ。
「ちょっと夜風に当たってくる。飯は置いといてくれ。お前が作ってくれたんだろ?」
するとリヴィアンは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「べべべ別にあんたのために作ったんじゃないわよ…。あ、余ったから、あんたがお腹すかしてるかなとか思っただけ…」
そっか、と笑いながら俺は部屋を出た。一階に降りるとがやがやと一気に騒がしくなった。どうやらここはロビンフッドの宿屋のようだ。ここの女将、ロビンフッドが俺を見て、歩いてきた。
「行くのかい?」
「ええ、まぁ」
ロビンフッドも気づいていたらしい。流石は元英雄、敵の殺気は遠くからでも分かるのだろう。俺も頷く。
「君の中にいたナビゲーターも反応しない。君は今、親のいない仔鹿同然だ。それでも君は行くのかい?」
親のいない仔鹿。言い得て妙だ。だけど、これだけには決着をつけなければならない。これは俺の問題であり、リヴィアンの問題だ。そしてリヴィアンの分の問題はすべて俺の問題だ。なら、きっちり締めてやるのだ。
「当たり前ですよ。あいつをぶっ飛ばしたあと嫉妬の魔王をぶちのめすのが俺の目的です。害のない魔王なら別ですがね」
「そうかい。なら、いいんじゃないか?君はこの世界を受け入れてきている。何の因果か君は…」
そこで言葉が途切れた。俺の訝しげな視線から逸らすように咳払いをする。
「まぁ頑張ってきたまえ。それから、帰ってきたら必ずリヴィアンのご飯を食べろ。これは私との約束だ」
俺は一つ返事の代わりに頷く。そして、今夜。奇怪な悪魔との舞踏会が始まる。それは果たして、シンデレラは舞踏会で何をするのか。人を殺すか、悪魔を殺すか。その決断は、自分にかかっていることも、覚悟していた。
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