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貿易都市グリゴレオ編

18 宿屋の女将

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「ぜぇ、ぜぇ…」

 息が荒くなりまともに呼吸が出来ない。こころなしか体も重い。

「ふ、くははっ。息が切れているぞ?疲れたか?ならもう楽になるという手段もあるんだぞ?」
 
 愉快に笑うブエル。相手はまだまだピンピンしている。

 あれから数時間。もう朝日が昇り、俺達を明るく照らす。

「朝ですけど、まだ終わりませんかねぇ」

 悠長に俺を傍観するアガリアレプトに渾身の一撃を食らわしてやりたくなるのを押さえ込み、何度もブエルを斬りにかかる。

 左への薙ぎ払い切りを繰り出すも、軽く受け流される。

「ぜぇ、し、しんどい…」

 そろそろ限界だ。立つのすら精一杯になる始末。大口叩いた結果、このグダグタである。

'でももう終わりですよ'

 あ?何言って、

「あんたら!何うちの店の前で決闘なんてやってんだい!こう見えてうちは忙しいんだ!さあ、散った散った!」

 俺の後ろにある宿屋の扉がバンッと開き、宿屋の女将らしき人が出てきた。

「不味いな、あの人を守りながら戦うのはちょっと…」

'ノープロブレムと言うべきでしょうか。あの人、だいぶお強いようですよ?'

「ハッ、何言って」

 ヒュッと俺の頬をかすめる何か。その何かを見るため、恐る恐る後ろを向く。何かはブエルの飛び出した三本目の腕に深々と刺さっていたのだ。 

「おやおや、これはこれは。英雄ロビンフッドさんではないですか。これはまずいですねぇ。ブエル、ひとまず退散ですよ」

 先程まで悠長に話していたアガリアレプトだが、今の声には焦りが滲んでいる。

 って、

「ロビンフッドォ!?」

 そんな驚く俺を置いていくように、ブエル達は去っていった。


   ○   ○   ○

「大丈夫かい?」

 先程とは打って変わって、にこやかな若い女性である。

 綺麗な銀髪をウェーブ(?)をかけていて、碧眼。美しくもしまった顔立ち。まるで、ライオンを連想させるようだ。スタイルも申し分無く文句無しだ。

「え、ええ。まぁ今のところは」

「あんた、転生者かい?」

 安直に受け答えしても良いのだろうか。この人も俺達の敵という可能性はぬぐい去れない。

「安心しな。別にあんたらを取って食おうとは思ってないさ」

 優しい笑み。その笑顔を見た瞬間、俺の意識は闇の奥深くに堕ちていった。
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