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貿易都市グリゴレオ編

16 招かざる客人達

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 焼けた研究所の真ん中で、焼けただれた皮膚を見て枯れた声を錬金術師は弱々しく呟く。

 それも、ルシファー達魔王に向けて。

「こん、ことに…なる…なら、作らなければ…よかった…」

 言葉を聞いて、ルシファーは笑う。錬金術師を嗤う。

「はは、そうか。じゃあ俺が、いや。僕が!あんたの代わりに願いを叶えてやる!その代わり、あんたの」

 声が自然と震える。

「体と知識をくれよ」

 脆弱な嗤いは、深く闇の中へと消えた。



   ○   ○   ○



 質問に答えることのないマグ。

「じゃ、質問を変えようか?何故俺のーーーーーー」

 ベゴッ!

 地面が割る音に俺の質問は塞がれた。

「おやぁ!余計なことをしてくれたのは貴方ですか」

 現れたのは、以前俺と話し意味不明なことを言っていたいつぞやの

「エセ神!?」

「フー!辛辣ぅ!」

 薄気味悪い仮面を被り、ふざけるエセ神。

「これはなにかの運命を感じ」

「ないから」

 暫しの沈黙。そしてまた

「これはなにかの運命を感じ」

「ないから」

 こいつ、ウザいな。そしてしつこい。

 苛立ち露骨に表しながら、エセ神に話しかける。

「一体何の用だ?今立て込んでて忙しいんだ」

「ああ、リヴィアン=クロイツと傲慢の魔王の関係ね。私はそいつらを殺せと仰せつかっていましてね」

 俺はその一言で悟った。

「てめぇ、嫉妬の魔王の差し金か!」

「おお!ご名答です!素晴らしいです!さすが私が見込んだ女泣かし!」

 ぐえっおうふ!精神ダメージが…。

'そんな事どうだっていいでしょう。今は邪魔者の排除を'

「わあってる!」

 ダンっと地面を蹴り先攻を仕掛け蹴りをいれる。だが、その努力虚しく足は空を切った。

「おっそいですねぇ。それで私に勝とうとは。これなら配下だけで充分。ブエル!あなたの出番ですよ」

 エセ神の後ろから出てきたのは、顔がライオン、足が2足、手は3本ある大男。

「ハッ!この私めがアガリアレプト様の代わりにこの小僧を倒して見せましょうぞ」

 アガリアレプト!?このふざけた野郎が!?だけどその前にあの大男…。

 ブエル。五十の軍を率いるとされる悪魔。確かこいつは悪魔の賢者としてよく知られる。自然哲学、道徳哲学、論理学など全ての薬草の薬効を弱った人間(主に男性)に教え、良い使い魔を与えるとされるが…。もう一方では、アガリアレプトの配下としても有名だ。

「おい、小僧。貴様の名前を聞いておく。死後、また前世の世界へと生き返らせてやろう」

 響く声は何処までも深い。

 俺はその言葉を修正する。

「違うな、ブエル殿。俺はあんたを負かす男として名を教えるんだ」

「威勢のいい小僧だ」

「そりゃどうも。では改めて、俺の名前はヒノキ=ツマヅキ。軽くヒノキとでも呼んでくれ」

 ふっと笑うブエル。そしてブエルもまた、自分の名を言う。

「我が名はブエル!偉大な賢者を名乗る悪魔!グリモワール『ゴエティア』の50の軍団を率いる序列10番の地獄の大総裁である!」

 天晴れな自己紹介。俺はこの自己紹介で負けてしまった。

「では、行くぞ!」

 叫ばれ、俺は一瞬怯んでしまう。その隙を逃さずブエルは二つの種を俺へ投げ撒く。その種は

'不味いです!その場から離れてください!'

 その言葉に従い慌てて後ろに飛び退る。刹那、俺のいた場所が太い蔓で地面が裂けていた。

自然の真理ナトゥーア・ワーハイト。ヒノキの前世でいうところの」

 ニィッと賢者らしからない笑みを浮かべてこう言うのだった。

「ジャックと豆の木だ」


 
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