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貿易都市グリゴレオ編
15 気付いた感情
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嗚呼、僕は何を目指していた?わからない。博士は何を望んだ?わからない。何もかも感情も人格も全てが僕にはわからない。
家族が、欲しかったのかもしれない。僕以外の魔王たちは馴れ合おうとしなくて、僕は…。そうか、これが寂しいというものか。だから、僕の時と境遇が似ていてシンパシーを感じたのだろうか。それとも単に召使いが欲しかったのだろうか?
この気持ちは二千年以上前から続いていて苦悩は尽きない。でも、何故だろう。あの転生者が来てから、僕の抑えていた感情が土石流の如く押し寄せてきて抑えられなくなっていた。二千年以上前から考えていた頭が暴走したのか?
僕にはわからない。だから、わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわから
「もう、悩まなくてもいいから。私がいるから。貴方は、貴方はもうーーーーーー」
○ ○ ○
「救いの手を差しのべる。これが今回の事を綺麗に終わらす方法だ」
取り敢えず、暴れるルシファーをマナで押さえつけてそう言った。
「救いの、手?」
リヴィアンは不思議そうに首を傾げる。わからないこいつもあれだな、愚鈍と言うか鈍感と言うか。
「そうだ。救いの手いわゆる仏様がくれた蜘蛛の糸的なやつだ。ルシファーはお前という蜘蛛を助けた。ならルシファーは救われるべきだ。ただ」
「ただ?」
ただ、差しのべた手を握るか握らないかはルシファー次第だ。最後に決断するのは、自分自身なのだから。
だが俺はその言葉をぐっと飲み込む。
「いや、何でもない。さて、準備はできたか?」
スーハースーハーと息を整えたリヴィアンは深く頷く。
「ええ、準備オッケーよ」
では、と。
さぁ、始めようか。嫉妬の魔王。人間の底力とくと見やがれ。
「マザーズ第十二詠唱。聖母の子が譲り受けるは神の知なり。意思を通して心と話さん。いずれは十字に架けられる運命。銀貨はやがて地に落ちる!」
パンと手を鳴らす。どさっと音がしてリヴィアンが倒れたのを確認する。
「成功か?」
'ええ、恐らくは。それにしても、即興で考えたその詠。その割にはかなり凝ってますね'
それは言わない約束だ。
「ところでだな。マグ、お前にいくつか教えて欲しいことがあるんだが」
'何でしょうか'
「一つ目の質問。何で俺の傷が治ってるんだ?外傷も内傷も」
我ながら滑稽だ。自分の意思の集合体に聞くとは。だが、聞く他ない。怪しいし、むしろ俺が偽物なのでは?と無粋なことを考えてしまっているのだから。
○ ○ ○
リヴィアンはルシファーの様々な記憶をみた。自分と同じ境遇にあったこと。一人の錬金術師から七人の魔王が生まれたこと。ルシファーが悩み続けた二千年以上の歳月。
わかっていたのに、分かろうとしなかった情けない自分。そしてまた、フラッシュバックする妹の泣き声と助けを求める声。脳内で混じり合いそしてまた溶けるように消えていく。
そして意識の最深部へと届く。
そこでは、分からないと、自分の感情が分からないと子供のように自問自答を繰り返す魔王がいた。そしてこう言っていた。
「僕にはわからない。だから、わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわから」
リヴィアンはこの声を聞き、ようやく気づく。
"甘えたかった"のだ。リヴィアンに、母親の父親の代わりになって欲しかった。頼れる人がいない。それはどんなに辛いことだろうか。支えてくれることも愛をくれることもない。そして挙句の果てに、自分以外は信じれなくなった。
リヴィアンは微笑み、哀しい悲しい魔王を後ろから抱きしめ、言った。
「もう、悩まなくてもいいから。私がいるから。貴方は、貴方はもう」
更に抱きしめる腕に力を、慈しみを込め力強く抱擁し
「独りじゃないから」
刹那、悲しい魔王とリヴィアンは眩しい光に包まれた。
家族が、欲しかったのかもしれない。僕以外の魔王たちは馴れ合おうとしなくて、僕は…。そうか、これが寂しいというものか。だから、僕の時と境遇が似ていてシンパシーを感じたのだろうか。それとも単に召使いが欲しかったのだろうか?
この気持ちは二千年以上前から続いていて苦悩は尽きない。でも、何故だろう。あの転生者が来てから、僕の抑えていた感情が土石流の如く押し寄せてきて抑えられなくなっていた。二千年以上前から考えていた頭が暴走したのか?
僕にはわからない。だから、わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわから
「もう、悩まなくてもいいから。私がいるから。貴方は、貴方はもうーーーーーー」
○ ○ ○
「救いの手を差しのべる。これが今回の事を綺麗に終わらす方法だ」
取り敢えず、暴れるルシファーをマナで押さえつけてそう言った。
「救いの、手?」
リヴィアンは不思議そうに首を傾げる。わからないこいつもあれだな、愚鈍と言うか鈍感と言うか。
「そうだ。救いの手いわゆる仏様がくれた蜘蛛の糸的なやつだ。ルシファーはお前という蜘蛛を助けた。ならルシファーは救われるべきだ。ただ」
「ただ?」
ただ、差しのべた手を握るか握らないかはルシファー次第だ。最後に決断するのは、自分自身なのだから。
だが俺はその言葉をぐっと飲み込む。
「いや、何でもない。さて、準備はできたか?」
スーハースーハーと息を整えたリヴィアンは深く頷く。
「ええ、準備オッケーよ」
では、と。
さぁ、始めようか。嫉妬の魔王。人間の底力とくと見やがれ。
「マザーズ第十二詠唱。聖母の子が譲り受けるは神の知なり。意思を通して心と話さん。いずれは十字に架けられる運命。銀貨はやがて地に落ちる!」
パンと手を鳴らす。どさっと音がしてリヴィアンが倒れたのを確認する。
「成功か?」
'ええ、恐らくは。それにしても、即興で考えたその詠。その割にはかなり凝ってますね'
それは言わない約束だ。
「ところでだな。マグ、お前にいくつか教えて欲しいことがあるんだが」
'何でしょうか'
「一つ目の質問。何で俺の傷が治ってるんだ?外傷も内傷も」
我ながら滑稽だ。自分の意思の集合体に聞くとは。だが、聞く他ない。怪しいし、むしろ俺が偽物なのでは?と無粋なことを考えてしまっているのだから。
○ ○ ○
リヴィアンはルシファーの様々な記憶をみた。自分と同じ境遇にあったこと。一人の錬金術師から七人の魔王が生まれたこと。ルシファーが悩み続けた二千年以上の歳月。
わかっていたのに、分かろうとしなかった情けない自分。そしてまた、フラッシュバックする妹の泣き声と助けを求める声。脳内で混じり合いそしてまた溶けるように消えていく。
そして意識の最深部へと届く。
そこでは、分からないと、自分の感情が分からないと子供のように自問自答を繰り返す魔王がいた。そしてこう言っていた。
「僕にはわからない。だから、わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわから」
リヴィアンはこの声を聞き、ようやく気づく。
"甘えたかった"のだ。リヴィアンに、母親の父親の代わりになって欲しかった。頼れる人がいない。それはどんなに辛いことだろうか。支えてくれることも愛をくれることもない。そして挙句の果てに、自分以外は信じれなくなった。
リヴィアンは微笑み、哀しい悲しい魔王を後ろから抱きしめ、言った。
「もう、悩まなくてもいいから。私がいるから。貴方は、貴方はもう」
更に抱きしめる腕に力を、慈しみを込め力強く抱擁し
「独りじゃないから」
刹那、悲しい魔王とリヴィアンは眩しい光に包まれた。
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