女子に追いかけられて死んで転生した:ヌルゲーで異世界生活:

貿易都市グリゴレオ編

13 癒しを求めた戦い 後編

 自分が何処で生まれたかはわからない。いつの間にかそこに"居た"。正しく言い直せば"存在していた"。

 そしてそこに自分を含め七人の子供がいた。そして、白い服を着た錬金術師も。

「ようこそ、君たちは魔王になることを決められた。早速だけど、死んでくれたまえ」

 そしてあたり一面が真っ赤に染まり、自分も血の海に溺れた。

 気づけば、身体はいつしか青年の体型になり周りの七人も同じ様に成人になっていた。

「僕の知識を君たちの脳に埋め込んでおいたよ。これはね、持論なんだけど死ねば死ぬほどマナは高まり肉体は強靭になると思うんだ」

 べらべらと喋り出す彼の言葉はすぐに理解出来た。先程まで言葉すら話せなかったのに。

「そして同時に僕は気付いた。これが実現すれば世界は平和になる。君たち魔王がいないから、人間やエルフ、獣人族に吸血鬼。更に機巧人形（オートマタ）までもが戦争する始末。ほかの種族も例外ではない」

 希望を語る彼は正しく善人そのものだった。その姿に最も惹かれたのは、傲慢の魔王ルシファーだった。叶うことのできるかもしれない夢をルシファーも欲しかった。

 だが、現実は全て上手くいくわけがないと錬金術師は思っていなかったのだ。



   ○   ○   ○



 あー笑った。

「感情に飲まれた、だと？」

「そーそー。あんた、いつ嫉妬の魔王に会った？」

「会ってなどない」

 ほう、じゃ嫉妬の魔王がここに来たってことか。偵察っぽいことしてたのか。…ステルスゲームを思い起こされるな。

「その感情のことを、あんた。知りたいか？」

 知ることは必要だ。何事も知らなければならない。生きる意味、いわゆる存在価値。世間体、自治問題etc.…

 これらを知ると同時に、自分はどう思ったかという意見そして"感情"。感情がなければ自分にどうして何をして欲しいかという、一つの意見すらまともに出せない。あの人がいうから、こんな状況だからといって詮索することもしない。俺はそんなこいつにむかっ腹がたっているのだ。

「貴様ごときに答えられるものではない！」 

 叫ぶ。息を荒らしそれでも葛藤するルシファー。

「答えれるさ。答えは単純明快で至極まっとうなんだぜ？」

「なら、下等な転生者の気様にわかって何故僕にはわからない！？」

 わからないのではない。分かろうとしていないだけ。自分が傲慢の感情しか持てないと、勘違いをしているだけ。

「さぁ、答え合わせと行こうか。馬鹿でお間抜けな魔王さん」

 そして俺は盛大に笑う。説明開始。手始めに、動かない体を無理やり動かす。ミシッやらメギッと音を立てるが気にしない。

 次に呪文を唱える。

「マザーズ第三詠唱!誰が殺した駒鳥を。その問に答えるはスズメ。誰が見つけたか駒鳥の死体を。その問に答えるはハエ。延々と続く問答に終焉（おわり）は来ず。始まるのは駒鳥の葬式！其の仇に問答をぶつけよ、クックロビン！」

 クックロビン。英国で生まれたマザーグースの中で長大であり14連で構成される作品の一篇。 駒鳥の死から駒鳥の葬式までの過程を語った物語だ。私が駒鳥の死の行方を探っていきいつしか葬式へと映る、不思議な童謡だ。

 俺が使ったのは、ルシファーの心にある感情を問いかける為にこれを使った。

…ちなみに言いますと、この呪文。俺が咄嗟に考えついたものなんです。どう？かっこ

'悪いですね最悪ですダサいです意味がわからんです安直です'

 い、いきなりは酷くない！？