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死神VSアウル《6》
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グッと力を握りしめる。ポタポタと血が滴り落ち、床に落ちていく。
「注射って嫌いなんだよね。痛いから。人様に向けて、刺すんじゃねーよ。どアホ。はい。お返し。」
右手で首の頸動脈スレスレに、ぶっ刺す。
「ギャアアア!!!」
「うるせーよ。喚くな。」
バンッと邪魔なガーターをはっ倒す。
ついでに刺されたままの注射針を抜く。
ナイフで、拘束具を取り外した。
「…はっ。おい!大丈夫かよ!打たれてんじゃんか。バカッ。」
身動きが自由になったジェイは、動揺しながら、起き上がる。
「あー…大丈夫。馴染みある熱さ。コレならイケる。ただ、ちょっと手加減、むずいやも。」
火照る体が中から燻り、徐々に、燃え上がる体温が、暴れまわる。だが、まだ大丈夫。
下でもがいて、苦しんでいるガーターの様が、まるで、死に際の虫のようで、眉をひそめる。
過呼吸を起こしているように痙攣しまくり、目が、白目で、舌も剥き出し。
「無様だね。ガーター。裏切るなら相当の覚悟を持ってやれ。」
ブンッと剣で一刺し。ブシュッと血が吹く。
「人間が神になれるなんて、戯言だよ。過ぎた力は、恐れられるだけで、何も意味を持たない。神も化け物も一緒だよ。」
ブンッ。首をチョンパ。いくら、薬でも、首を切られれば、再生は不可能。
あ…あ…とヨダレと血を吹くガーターの生首。
「さようなら。ガーター。先輩である化け物から一言。ようこそ。化け物の世界へ。そしてさようなら。」
ザンッ。
「うっ。」
ジェイが吐いた。
「見なくて良いのに。ごめん。配慮が足りなかった。もう砂になった。」
どんどん、砂粒のように、サラサラと粒状になり、消えていくガーターだったもの。血は固まり、砂と共に消える。
「呆気ない最後だな。ジェイ。あのバカ、止めてくれる?死体に何回、撃ってんの。無駄撃ちしないでよ。」
ナオを殴った男は、無残にも、ブチ切れなエディによる蜂の状態。
「体が痺れて…。」
「盛られた?じゃあいいや。その内、醒めるだろうし。シャオ。出てきな。」
柱からこちらを伺っていた彼を呼び寄せる。
「ジェイを運んで。ハオに担がせて。そっちに行かないように注意しておく。」
「了解。」
ハオがジェイを抱える。
あっちを見る。
トンッ。降り立ち、構えた。銃でまず、アウルを拘束してる大男を射殺。脳天に一発。ぐらりと倒れる男を思い切り、蹴っ飛ばす。眼の前にいるダリヤに向かって。
「キャーッ!」
つんざくような煩い悲鳴に、頭が痛い。辛うじて、当たらなかった男の体は、壁に激突。
「イチからやり直しはキツイな。手加減をまた覚え直しとは。ハーイ。こんばんは。ダリヤ。久しぶりだね。大丈夫?老けた?」
髪は乱れ、蒼白した顔に、恐怖に駆られたその顔は、無様一択。
「な…な…。」
「んー。ご自慢の美貌も台無しだね?唯一の取り柄だったのにね?残念だね?でもわかるよ。仕方ない。だって、お前、頭悪いし、弱いもん。しょうがない。しょうがない。」
「はあ!?」
歪んだ顔は、一層、醜い。ピキピキと動く眉間に、血走った目。
「アウル。アイツに何を盛ったの?」
「…ガリバー。」
「あーなーる。訓練受けてないやつには、無理だわ。もしかして、ガーターにも盛ったの?」
「御名答。」
拘束具を外してやる。ゆっくり起き上がる。
「ガリバーってさ、粗悪な薬と同じなんだけど、一点違うのは、思考能力を徐々に奪うんだよね。そして、情緒不安定に繋がる。自分で作った薬に気づかないバカっている?」
「気づかないよ。そこの女は。行為に夢中だったから。」
「アウル!?」
衝撃に打ちひしがれる彼女は、信じられないと、ワナワナ、震えている。
「食事に警戒するお前に、自然と体内に入れるには、うってつけだっただけ。僕自身に、ガリバーは効かないから。お前が僕を誘う度に、仕込んでた。気持ち悪いのを我慢してね。」
声にならない悲鳴と罵声。
「中毒性があるもんね。んー。あんなに乱れてる奴はそうはいないね。一気に老けたんじゃない?お肌、大丈夫?シワシワだよ。あっ。ごめん。元からだわ。」
「お前…!!」
「誰に口聞いてんだよ。三下。イラつくわ。ねえ。ダリヤ・ゴールドスタイン。アウルの真名を知ってる?」
「は?」
固まるダリヤは、比べようもない程に、呆気にとられ、全身が固まる。いや、やめてと拒絶する。
「アウルの本当の名前はね。エンリケ・イヴリル・ノーマンだよ。」
「正解。」
シュタ。
「さようなら。醜い化け物。」
ザンッ。首を刎ねた。ブシュー。
目を見開いて、愕然としたままの顔で、死んでいく。
「名前、覚えてたんだ。」
「わざわざ、教えてくれたんでしょう?あの子を使って。あの子の方がクローン?」
「そう。でもきっと、彼は、救われた。ありがとう。解放してくれて。」
「…死んだのに?」
「それでも飼われてるよりマシだよ。ありがとう。」
あの時、殺したのは、クローンのアウルだった。
「…積もる話は後にしよう。ここから脱出する。そこでアウルにお願いがある。」
「?」
「ストッパー役を頼みたい。ジェイがいないし、もうひとりは今、ポンコツだし。今、ちょっと、ヤバい。手加減、出来なさそうだから。」
「ストッパー役?…わかった。」
「ちょっと抱えてこんでいい?何かを持っていたほうが、やり過ぎない。経験上。」
「抱え込む…?」
キョトンとする彼に、そうとにこやかに笑う。
「舌噛まないようにしてね。」
「え?」
ヒョイ。持ち上げる。浮遊感を感じたアウルは、わあと抱きしめる形になった。
「邪魔者、全員、潰す。」
剣からライフルに持ち変える。これもまた、黒の胴体でぐるりと金の装飾。
「さて、行きますか。」
グッと足に力を込める。スピードを出すために。
バッバっバッ…
容赦ない銃弾の嵐。息もつけない程のスピード。
ようやく、エディが戻ってきた。
「戻ってきた?良かった。無駄撃ちしないでよ。弾も金かかるんだから。」
「うるせーよ。」
背後にナオを隠しながら、ライフルで、撃ちまくり。
手を繋いでるわ。こう言う場面でなければ、叫ぶのに。
「シャオ達のもとに行こう。雑魚どもは引き受ける。先に行って。」
「わかった。離れるなよ。」
「うん。」
援軍皆殺しである。半分、マリカのせい。
「酔ってない?大丈夫?」
「うん…」
マリカに抱え込まれたアウルは、スピードも相まって、風を感じる。おかしい状況なのに。胸が苦しい。
喉にせり上がる熱い何か。
「出口だ。」
バンッ。
階段を飛び降りる。ヒューッと冷たい夜風が、アウルに当たる。
「…。」
ツーっと涙が流れていく。仕掛けていた爆弾の起動スイッチが発動し、建物が焼けていくのに。
何かも焼かれて無くなる。自分を縛っていた忌々しいもの。全て。
「こっちだ。早く!」
シャオが手招きしている。
「注射って嫌いなんだよね。痛いから。人様に向けて、刺すんじゃねーよ。どアホ。はい。お返し。」
右手で首の頸動脈スレスレに、ぶっ刺す。
「ギャアアア!!!」
「うるせーよ。喚くな。」
バンッと邪魔なガーターをはっ倒す。
ついでに刺されたままの注射針を抜く。
ナイフで、拘束具を取り外した。
「…はっ。おい!大丈夫かよ!打たれてんじゃんか。バカッ。」
身動きが自由になったジェイは、動揺しながら、起き上がる。
「あー…大丈夫。馴染みある熱さ。コレならイケる。ただ、ちょっと手加減、むずいやも。」
火照る体が中から燻り、徐々に、燃え上がる体温が、暴れまわる。だが、まだ大丈夫。
下でもがいて、苦しんでいるガーターの様が、まるで、死に際の虫のようで、眉をひそめる。
過呼吸を起こしているように痙攣しまくり、目が、白目で、舌も剥き出し。
「無様だね。ガーター。裏切るなら相当の覚悟を持ってやれ。」
ブンッと剣で一刺し。ブシュッと血が吹く。
「人間が神になれるなんて、戯言だよ。過ぎた力は、恐れられるだけで、何も意味を持たない。神も化け物も一緒だよ。」
ブンッ。首をチョンパ。いくら、薬でも、首を切られれば、再生は不可能。
あ…あ…とヨダレと血を吹くガーターの生首。
「さようなら。ガーター。先輩である化け物から一言。ようこそ。化け物の世界へ。そしてさようなら。」
ザンッ。
「うっ。」
ジェイが吐いた。
「見なくて良いのに。ごめん。配慮が足りなかった。もう砂になった。」
どんどん、砂粒のように、サラサラと粒状になり、消えていくガーターだったもの。血は固まり、砂と共に消える。
「呆気ない最後だな。ジェイ。あのバカ、止めてくれる?死体に何回、撃ってんの。無駄撃ちしないでよ。」
ナオを殴った男は、無残にも、ブチ切れなエディによる蜂の状態。
「体が痺れて…。」
「盛られた?じゃあいいや。その内、醒めるだろうし。シャオ。出てきな。」
柱からこちらを伺っていた彼を呼び寄せる。
「ジェイを運んで。ハオに担がせて。そっちに行かないように注意しておく。」
「了解。」
ハオがジェイを抱える。
あっちを見る。
トンッ。降り立ち、構えた。銃でまず、アウルを拘束してる大男を射殺。脳天に一発。ぐらりと倒れる男を思い切り、蹴っ飛ばす。眼の前にいるダリヤに向かって。
「キャーッ!」
つんざくような煩い悲鳴に、頭が痛い。辛うじて、当たらなかった男の体は、壁に激突。
「イチからやり直しはキツイな。手加減をまた覚え直しとは。ハーイ。こんばんは。ダリヤ。久しぶりだね。大丈夫?老けた?」
髪は乱れ、蒼白した顔に、恐怖に駆られたその顔は、無様一択。
「な…な…。」
「んー。ご自慢の美貌も台無しだね?唯一の取り柄だったのにね?残念だね?でもわかるよ。仕方ない。だって、お前、頭悪いし、弱いもん。しょうがない。しょうがない。」
「はあ!?」
歪んだ顔は、一層、醜い。ピキピキと動く眉間に、血走った目。
「アウル。アイツに何を盛ったの?」
「…ガリバー。」
「あーなーる。訓練受けてないやつには、無理だわ。もしかして、ガーターにも盛ったの?」
「御名答。」
拘束具を外してやる。ゆっくり起き上がる。
「ガリバーってさ、粗悪な薬と同じなんだけど、一点違うのは、思考能力を徐々に奪うんだよね。そして、情緒不安定に繋がる。自分で作った薬に気づかないバカっている?」
「気づかないよ。そこの女は。行為に夢中だったから。」
「アウル!?」
衝撃に打ちひしがれる彼女は、信じられないと、ワナワナ、震えている。
「食事に警戒するお前に、自然と体内に入れるには、うってつけだっただけ。僕自身に、ガリバーは効かないから。お前が僕を誘う度に、仕込んでた。気持ち悪いのを我慢してね。」
声にならない悲鳴と罵声。
「中毒性があるもんね。んー。あんなに乱れてる奴はそうはいないね。一気に老けたんじゃない?お肌、大丈夫?シワシワだよ。あっ。ごめん。元からだわ。」
「お前…!!」
「誰に口聞いてんだよ。三下。イラつくわ。ねえ。ダリヤ・ゴールドスタイン。アウルの真名を知ってる?」
「は?」
固まるダリヤは、比べようもない程に、呆気にとられ、全身が固まる。いや、やめてと拒絶する。
「アウルの本当の名前はね。エンリケ・イヴリル・ノーマンだよ。」
「正解。」
シュタ。
「さようなら。醜い化け物。」
ザンッ。首を刎ねた。ブシュー。
目を見開いて、愕然としたままの顔で、死んでいく。
「名前、覚えてたんだ。」
「わざわざ、教えてくれたんでしょう?あの子を使って。あの子の方がクローン?」
「そう。でもきっと、彼は、救われた。ありがとう。解放してくれて。」
「…死んだのに?」
「それでも飼われてるよりマシだよ。ありがとう。」
あの時、殺したのは、クローンのアウルだった。
「…積もる話は後にしよう。ここから脱出する。そこでアウルにお願いがある。」
「?」
「ストッパー役を頼みたい。ジェイがいないし、もうひとりは今、ポンコツだし。今、ちょっと、ヤバい。手加減、出来なさそうだから。」
「ストッパー役?…わかった。」
「ちょっと抱えてこんでいい?何かを持っていたほうが、やり過ぎない。経験上。」
「抱え込む…?」
キョトンとする彼に、そうとにこやかに笑う。
「舌噛まないようにしてね。」
「え?」
ヒョイ。持ち上げる。浮遊感を感じたアウルは、わあと抱きしめる形になった。
「邪魔者、全員、潰す。」
剣からライフルに持ち変える。これもまた、黒の胴体でぐるりと金の装飾。
「さて、行きますか。」
グッと足に力を込める。スピードを出すために。
バッバっバッ…
容赦ない銃弾の嵐。息もつけない程のスピード。
ようやく、エディが戻ってきた。
「戻ってきた?良かった。無駄撃ちしないでよ。弾も金かかるんだから。」
「うるせーよ。」
背後にナオを隠しながら、ライフルで、撃ちまくり。
手を繋いでるわ。こう言う場面でなければ、叫ぶのに。
「シャオ達のもとに行こう。雑魚どもは引き受ける。先に行って。」
「わかった。離れるなよ。」
「うん。」
援軍皆殺しである。半分、マリカのせい。
「酔ってない?大丈夫?」
「うん…」
マリカに抱え込まれたアウルは、スピードも相まって、風を感じる。おかしい状況なのに。胸が苦しい。
喉にせり上がる熱い何か。
「出口だ。」
バンッ。
階段を飛び降りる。ヒューッと冷たい夜風が、アウルに当たる。
「…。」
ツーっと涙が流れていく。仕掛けていた爆弾の起動スイッチが発動し、建物が焼けていくのに。
何かも焼かれて無くなる。自分を縛っていた忌々しいもの。全て。
「こっちだ。早く!」
シャオが手招きしている。
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