甘い夢を見ていたい

春子

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死神VSアウル《4》

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エディに、組織の全容の話をした。
テオーリアーで行われてきた非道な数々。
「前にも言ったけど、飲まされた薬は、元々、私が飲む予定ではなかった。あれは、ベラトナがエリオットに飲ませるために、からデータを奪った。テオーリアーは、元々、絶対階級制度っていう制度があって、一番上にボス、次に宰相と呼ばれる秘書、次に私のように鳥の名前がついたメンバー、次に名無し。言わば、イーカロス以外のメンバー。これは多数のメンバーを示すんだけど。別枠で、監視員。イーカロスを含めたメンバーの監視を主にする。」
アクセルを全開。
「当時、ベラトナとダリヤは名無しだった。イーカロスメンバーじゃない。だから、本来なら、アウルに対して、発言が出来るような立場ではなかった。
しかも、ベラトナがアウルのデータを奪えるはずない。でも恐らく、何かしらの手口で、アウルのデータを奪った。あの薬は、元々、破棄される予定だった。」
「?」
「元々、イーカロスメンバーは、入隊した時に、手術を行う。肉体的強化と治癒能力を高めるための手術。断る奴はいない。強制的に行われる。だから、あれは、なにかの拍子で、出来た副産物で、イーカロスメンバーには、適さないと破棄されたの。他の名無しメンバーに飲ませたら別だろうけど。でも何人も名無しメンバーが狂って死んでいったから、実験は中止になった。ボスのお気に入りは、イーカロスメンバーで他の名無しは、代えの効く代用品。アウルは、規定通りに破棄する予定だった。でも、それを横流しにした。アウルが捨てたデータに手を加えて。より強靭により回復を持つ。DK・DRは、その特性と引き換えに、代償がある。」
「?」
「肉体を維持するために、必要なのは、健康体であること。すなわち、それは、成長を止めること。ある日を境に、体の成長が止まり、老いを忘れ、戦闘マシーンを維持するための器に変わる。私のこの体はこれ以上、成長しないし、歳を重ねるような事もない。一人だけ、時間が止まる。それがあの女の目的。エリオットを完璧な人形にするために、飲ませようとした。でもエリオットは拒否をし、当時、組織の魔の手から逃げ切れないと判断した弟子の為に、一粒だけ、盗んで飲ませた。確実に逃がすために。適合することは、運頼み。服用した中には、灼熱に似た体内の温度が急上昇して、軋む骨に痛みが走り、脳内にドーパミンが出て、アドレナリンが沢山、出る。その苦しさから逃げるために破壊行動を行う。収まるまで。耐えきれなくなった体は、燃えるように発火して、灰に代わり、砂のように落ちる。」
「ちょっと待て。それって。」
「まだいい方。BD・DRは、その劣化版だと言ったよね。適合することは、あまりない。しかも何が厄介って。あのアマ。DK・DRが作れなかったから、作ったものの、出来たのは、洗脳という悪趣味。作り変えられる細胞に抗うために、足掻く本能が、破壊行動に繋がり、敵だと認識させられた者を殺し回る。しかも中毒性がある。」
「確か、あの日、迷い込んできた奴がまさに、正気を失っていたな。殺したと思ったら、砂のように、形も無くなった。すげえ驚いた。」
「あの人は、多分、まだ適合したほうだけど、体が保たなかった。人間、身につけてない力をいきなりつけたら、耐えきれない。あれを見て、確信した。ベラトナ・ゴールドスタインが、何がやってるってね。」
逃したことを知った日から、こうなるとは、思った。
「最悪な魔の薬の作り手がいる以上、安息の地はない。」
苛ついて、アクセルを壊さない程度に踏む。



連絡を貰った待機組のシャオたちは、急いで武器を取る。
「シャオ!!」
小さな体で一生懸命に運んできたチャーリー。
そこには、重厚な武器の箱が複数。
「マリカがこれを持ってこいって。」
「なんだよ?これ。」
「マリカの最強の武器。」
一際大きい箱の中身を開けてみる。
真っ黒な胴台に厳つい装飾がなされた金の飾り。バズーカーだ。
持つだけで重たい。何キロあるんだ。これ。流石にチャーリーには持てず、持ってきて貰った。
「戦争でもしに行く気か?」
「マリカは、売られた喧嘩は、倍返しに返すから。国土消滅したら、全部マリカのせい。マリカは喧嘩はしたことない。するのは、敵の殲滅だから。ダークヒーローも真っ青な事をするよ。」
「これは、ライフル、ナイフに、鎌…?」
「マリカが一番、得意な武器。シャオ、ボスたちをお願い。」
「ああ。」
樒から武器庫と呼ばれるトレーラーに乗り込む。
「ほら、お前、降りろ。」
「ん。」
トールがチャーリーを受け止める。
「ここは任せとけ。金を貰っている以上、誰も潜入させないし、死なせねえ。」
「ああ。」
隠れ家の待機組の護衛に切り替えているトールは、トランクの中身をざっと見渡す。 
「気休め程度だが、これ、持ってけ。小型爆弾だ。これは投げやすい。致命傷は避けるが、確実に相手の意表はつける。」
「良いのかよ?」
「お前、この先にいく敵は、今まで、やったことない奴だ。あの女の組織にいた連中は、あの女以上に、危険で狡猾だぜ。13のガキが、生きて帰れる保証は低い。」
小さなキューブのような形をした小型爆弾。
「…ありがとう。」
シニカルに微笑んだトールは、クイッとシャオの首を近寄らせる。
「!?」
鼻の頭にキスをしたのだ。
「命は大事にしろよ。」
ニヤッと笑う彼は、年齢相応に見えた。




取っ捕まったジェイは、拘束され、暴力を振るわれている。
ガーターの一味だ。
性悪野郎。
「ぐっ。」
腹に一発、蹴りを入れられ、ゲホッと咳き込む。
「やめろ!!」
同じく拘束されているナオ。バカッ、やめろ。
そっちに、意識が向くじゃねーか。
「ガーター…てめぇ。よくも仲間を裏切ったな。しかも、エディを裏切るとは…見る目が無くなったか?」
「うるせえよ。テメーこそ、笑えるな。ボスの癖に、ズタボロとはあ。やっぱり、腑抜けにボスは、務まらねーよな?アヒャヒャヒャヒャ。」
「…。」
こいつ、元々、痩せ細っていたし、目つきもヤバかったが、こんな感じだったか?何か、薬をやっている?あのガーターか?コイツ、薬はやらない奴だった筈だ。
回ってきた薬は、部下に回して、売り捌いてはいたが、決して、口にしなかったはず。
だが、瞳孔が開いてるように見えるし、妙な高揚感を出している。
しかもまるであのガーターの性格からして、あり得ない。慎重で、狡猾で何よりも、臆病なやつ。だからこそ、遠回りになっても、確実に事を進める。だからこそ、エディが現れるまでは、シマを持っていた影響力のあるボスだった。
頭を回せ。拘束されている鎖は、頑丈だ。マリカなら壊せるが、何分、こちらは、生身の普通の人間だ。
見たところ、ガーターを含めて、この場にいる敵は、ざっと、7、8人。
おいおい。せめて、エディぐらいの運動神経あれば、別だが、何度でも言うが、こっちは、そこそこだぜ?勘弁してくれ。ナオを守りながらなんて、無理だ。
リンチのようなこの場面。ちっ。持ち上げるんじゃねーよ。俺は、そんな趣味ねーよ。吊るすな。サンドバックかよ!
「うらっ。」 
「…っ。」
口から、血が出る。ナオが必死に叫んでいる。やべえ。視界が霞んで…。
「ねえ。誰の許可を得て、勝手な真似をしてるの?やめろ。」
酷く冷たい声が体を縛る。
「そいつら、僕のお客だから。勝手な真似をするな。」
ギンッと睨む様は、ああ見覚えがある。あの目はー。
フッと意識を失う。

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