普通になってみたい

春子

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プロローグ

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中2の初めの時期に、秘めていた気持ちをさらけ出した。
エスカレーター式の隠れた名門、柊谷院学園。
金持ち学校の一つ。
普通の坊っちゃん、嬢ちゃんの金持ち学校と違い、そもそもが、一クラス、6人から10人程度しか、取らず、学年も四クラスしかない。
初等部から大学まであるエスカレーター式学校であるが、入学資格には、キチンとした身分の出身及びを持っていること。
多額の寄付金により、支えられている柊谷院学園は、雄大な土地に、学園を丸々と構え、小規模な生徒数に比べ、かなりの設備が整っている。
学園では、移動教室が主であり、教科によって移動する。
しかし、クラスは存在するもので、ホームルームや休憩などを取るためのクラスルームはある。
子供たちの為に、ゆったりしたソファーと大きな机。簡易的ではあるが、飲食するための食器棚もあり、一つ幾らだと言うティーセット等が入ってる。
床は大理石で傷つきにくく、天井には、十分な明かりをつけるシャンデリア。
そこに我が家当然の佇まいにする生徒たち。
放課後ティータイムに勤しむ彼らは、目を丸くする。何故なら、初等部から一緒の持ち上がりで、お互いの家庭環境など筒抜けの仲なのだから、その一人が突然、言い出したことに、間抜け面を晒しても、致し方ない。

「いや、だからね、高等部に上がらないで、公立受ける。子供の内に、やりたいことやる。」
長い脚を組み、茶を飲む。
と突然言い出したのは、雪平こゆき。
母親譲りの冷たく見えてしまう容姿で、整いすぎて、冷たいと第一印象を持たれてしまう。
切れ長の瞳で、視力が落ちたため、眼鏡をかけてるので、余計にそう見えてしまう。中学生ながらも発育は良かったらしく、出てるとこは出て、引き締まってるボティ。口許にほくろがあるため、色っぽい。
「お前んとこの父親が許すか?」
中学生に見えないほどに落ち着きを払うクラスメート。
「みんなでこゆきが普通に高校に行けるか、賭けるか?」
「いくらで?」
悪のりが好きな連中がガヤガヤし始める。
「うるさい。騒ぐな。お前が影響された理由は知ってるが、平気なのか?普通なんて、俺らに一番縁遠いぞ?」
「私は、普通になりたい。」
たった3年間でも、普通を味わいたい。


雪平家は、例に漏れず、会社をいくつも経営してるグループの家柄であり、父もそこで役員として働き、母は、元の性格もあるのだが、研究者として日々、研究に勤しんでいる。
家族団欒は中々難しいのだが、その日は、偶々、家族が勢揃いした夕食。
「え?今なんて?」
ステーキを切っていたナイフを止める父に、口を開く。
「うん。高等部に上がらないで、公立受ける。子供の内に普通を味わいたい。」
「えー!ダメッ!」
抗議があがるのは、歳の離れた妹で、よく生まれてきたくれたと神に感謝するほど、愛らしい妹。
くるくるとした巻き毛で、つぶらな瞳に、小動物を感じさせる。
「チカもあともう少しで入学するんだから!一緒にいくのよ!」
慈(ちか)は、まだ保育園で、来年、入学を控えている。ぷっくりと頬を膨らます妹にデレデレの姉。
フリーズした父は、ハッとし、異性から王子様を体現させた容姿をしてる彼は、気を取り直し、ごほんと咳払い。
「どうして?あの子たちとうまくいってないの?」
「頗る、良好だけど。でも、私は、普通に学校生活を送ってみたいの。」
「もしかして、マキくんたちに影響されたの?」
「確かに…あっちは一般家庭だし、聞いてると、いいなあと思うとこはある。」
「恵まれた環境から、一転する可能性もある。しかも初等部からエスカレーターで来てるお前がいきなり、公立に行きますなんて、馴染むかも怪しいもんだよ。」
母親は冷静に、口に挟む。
娘と瓜二つではあるが、年齢を重ねてる分、妖艶さ 
増している。
「破天荒なままに言われたくないわ。」
「その口、黙らしてもいい。」
「まあまあ。」
似た者同士の親子だ。母に比べたら、可愛いものだ。
「今すぐにはとやかく、言えない。玲子が言っていたように、君は、初等部からあの学校にいるし、回りは同じような環境下で思考も変わらない。一般校
が悪いなんて言わないけど、身に付いたものを変えることは、中々、難しいものだよ。」
父は、そう言った。


めげずに、父を説得した。
父はため息をつきながらも、条件を出した。
一、高校3年間だけ、公立に行くことを認める代わりに、大学は戻ること。
二、トラブルがある場合は、直ぐ様に、報告を怠らないこと。
三、トラブルがあり、やむを得ない場合は、問答無用で、柊谷院に転校すること。
四、家から遠くない範囲内の公立に決めること。
「成績を落とすような真似はしないだろうから、条件にはいれないけど。いいね?」
「はい!」
憧れな公立に行けると、胸を踊らせた。

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