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虫の知らせ(3)
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コハクは、準備に取り掛かった。
エルモの心配を大丈夫だと笑いながら。
「大丈夫だよ!エリーはね!リーサに似てるから!」
「それは、大変じゃないかな?」
「大丈夫!!」
コハクは、今、使命感で燃えている。
エリーの祖母から、施された術式が、コハクにはあるのだ。
「ん?あ!」
もぞもぞとなにか、感じて、下を見やると、トラード家の使いだ。
トラード家の守護神である蜘蛛の子飼。
胴体にトラードの家紋が浮かんでいる。
「ついてくるの?いいよ。おいで!」
手を差し伸べると、腕によじ登りに、肩にちょんと乗る。
「いいかい?コハク。妖精界にいる妖精には、気をつけるんだ。お友達がいても。妖精界にいる妖精は、気位が高い。世界が違うんだ。いいね?」
「知ってる。」
「何かあれば、その蜘蛛に魔力を流すんだよ。」
「大丈夫。」
緊急事態になった時の保険に、トラード家の蜘蛛を使う。
「このじいじを忘れちゃだめだよ?」
「じいじを忘れないよ?」
むぎゅう。愛しい孫を抱きしめる祖父にニコニコ。
コハクは、妖精が使う魔法陣に、立ち、すうと息を吸う。
ビュンと長い突風風が吹き、コハクの姿が消えていた。
「うちの蜘蛛も無事に転送が出来た。」
もしかしたら、弾き飛ばされる覚悟で、送り出したのだが、杞憂であったようだ。
頼みの綱であるコハクに同伴させる蜘蛛は、トラードの守護神である大蜘蛛の子供の一匹。
フランとレオの兄である長兄、クロムは、父親譲りの勇ましい体躯を弛緩させた。
「オスカーのバカに連れ去られた教訓が活かせたと思いたい。」
あのオスカーが仕込んだ魔法陣に、誤って、転移させられた弟が行き着いたのは、不幸中の幸いだが、色町の四天王が一人、ライオネルの元に飛ばされた。
あのバカは、リーサだけでなく、うちの弟までも毒牙にかける気かと、腸が煮えていたが、制裁を行うより前に、持ち前の逃げ足の速さで、消えてしまった。
フランには、常に、護衛をつけているが、完全とは言いにくい。
ならばとあらゆる角度からの方法を考えていたわけだが、まさか…妖精界と繋がるとは。
「レオ、心配するな。フランは、無事に帰ってくる。」
自分がいたのにと責めるレオの頭を撫でる。
武骨な掌ではあるが、安心感が強いクロムの手は、レオを慰めた。
加えて、トラードとは違う好戦的なノアの兄達は、母親によって、動きを封じられている。
「馬鹿な真似はやめなさい!収まることも、収まらないでしょう!あなた達も知ってるわよね?すでに、トラード家から使いは出しているし、許可を得ているコハクくんが、行ってるのだから!もし、妖精の機嫌を損ねたら、ノアは二度と帰らせてもらえないかもしれないわ!いつも言ってるわ!ノアの事になると、揃いも揃って、バカになるのだから!」
妖精界に喧嘩を受ける気かと、思うほど、過激な態度を取る息子に頭を痛める。
末っ子は、3人の兄達に甘やかされ、砂糖菓子等、匹敵しない程の甘さをとうに越したもうそれはそれは、煮詰めた砂糖の甘さがこびり付くような?いやそれ以上…?
普段は、冷静沈着で、あまり、執着心を見せないくせに、途端にノアが、絡めば、話が変わる。
「武装集団を呼ぶ必要はなくてよ!戦争でも行く気なの?今は、平和な時代だわ。」
オテステリアル家自慢の私兵を武装集団にしようとするなんて、頂けない。暗器まで仕込んで。
解散よ!とバンっと、オテステリアル家夫人として、命ずる。
「妖精界の妖精は特に気をつけなきゃいけないのよ。彼らは古の種族でもあるのだから。妖精王の怒りに触れないように。」
聞いた話では、コハクは、妖精王直々に、術式を施されたと聞く。おとぎ話ではないかと、疑ってしまうが、事実なのだ。
「彼らが戻るまで、待ちなさい。」
母に対しての表情ではないが、母も負けてない。
誰に向かって、反抗的な態度を取るのか。
教育的指導だわ。
ブルッ。
「なんか、今、怖い感じが…。」
「ねーねー、リーサ、おじいちゃんがリーサとアルミンは、お部屋から出ちゃだめだって!」
「えー!」
「つまんないね。お部屋で、宝探しゲームしようか。モリア、おいで。」
要注意人物は、隔離されている。
メロが佇み、目をギョロギョロと動かす。口元は不敵に笑いながら。
エルモの心配を大丈夫だと笑いながら。
「大丈夫だよ!エリーはね!リーサに似てるから!」
「それは、大変じゃないかな?」
「大丈夫!!」
コハクは、今、使命感で燃えている。
エリーの祖母から、施された術式が、コハクにはあるのだ。
「ん?あ!」
もぞもぞとなにか、感じて、下を見やると、トラード家の使いだ。
トラード家の守護神である蜘蛛の子飼。
胴体にトラードの家紋が浮かんでいる。
「ついてくるの?いいよ。おいで!」
手を差し伸べると、腕によじ登りに、肩にちょんと乗る。
「いいかい?コハク。妖精界にいる妖精には、気をつけるんだ。お友達がいても。妖精界にいる妖精は、気位が高い。世界が違うんだ。いいね?」
「知ってる。」
「何かあれば、その蜘蛛に魔力を流すんだよ。」
「大丈夫。」
緊急事態になった時の保険に、トラード家の蜘蛛を使う。
「このじいじを忘れちゃだめだよ?」
「じいじを忘れないよ?」
むぎゅう。愛しい孫を抱きしめる祖父にニコニコ。
コハクは、妖精が使う魔法陣に、立ち、すうと息を吸う。
ビュンと長い突風風が吹き、コハクの姿が消えていた。
「うちの蜘蛛も無事に転送が出来た。」
もしかしたら、弾き飛ばされる覚悟で、送り出したのだが、杞憂であったようだ。
頼みの綱であるコハクに同伴させる蜘蛛は、トラードの守護神である大蜘蛛の子供の一匹。
フランとレオの兄である長兄、クロムは、父親譲りの勇ましい体躯を弛緩させた。
「オスカーのバカに連れ去られた教訓が活かせたと思いたい。」
あのオスカーが仕込んだ魔法陣に、誤って、転移させられた弟が行き着いたのは、不幸中の幸いだが、色町の四天王が一人、ライオネルの元に飛ばされた。
あのバカは、リーサだけでなく、うちの弟までも毒牙にかける気かと、腸が煮えていたが、制裁を行うより前に、持ち前の逃げ足の速さで、消えてしまった。
フランには、常に、護衛をつけているが、完全とは言いにくい。
ならばとあらゆる角度からの方法を考えていたわけだが、まさか…妖精界と繋がるとは。
「レオ、心配するな。フランは、無事に帰ってくる。」
自分がいたのにと責めるレオの頭を撫でる。
武骨な掌ではあるが、安心感が強いクロムの手は、レオを慰めた。
加えて、トラードとは違う好戦的なノアの兄達は、母親によって、動きを封じられている。
「馬鹿な真似はやめなさい!収まることも、収まらないでしょう!あなた達も知ってるわよね?すでに、トラード家から使いは出しているし、許可を得ているコハクくんが、行ってるのだから!もし、妖精の機嫌を損ねたら、ノアは二度と帰らせてもらえないかもしれないわ!いつも言ってるわ!ノアの事になると、揃いも揃って、バカになるのだから!」
妖精界に喧嘩を受ける気かと、思うほど、過激な態度を取る息子に頭を痛める。
末っ子は、3人の兄達に甘やかされ、砂糖菓子等、匹敵しない程の甘さをとうに越したもうそれはそれは、煮詰めた砂糖の甘さがこびり付くような?いやそれ以上…?
普段は、冷静沈着で、あまり、執着心を見せないくせに、途端にノアが、絡めば、話が変わる。
「武装集団を呼ぶ必要はなくてよ!戦争でも行く気なの?今は、平和な時代だわ。」
オテステリアル家自慢の私兵を武装集団にしようとするなんて、頂けない。暗器まで仕込んで。
解散よ!とバンっと、オテステリアル家夫人として、命ずる。
「妖精界の妖精は特に気をつけなきゃいけないのよ。彼らは古の種族でもあるのだから。妖精王の怒りに触れないように。」
聞いた話では、コハクは、妖精王直々に、術式を施されたと聞く。おとぎ話ではないかと、疑ってしまうが、事実なのだ。
「彼らが戻るまで、待ちなさい。」
母に対しての表情ではないが、母も負けてない。
誰に向かって、反抗的な態度を取るのか。
教育的指導だわ。
ブルッ。
「なんか、今、怖い感じが…。」
「ねーねー、リーサ、おじいちゃんがリーサとアルミンは、お部屋から出ちゃだめだって!」
「えー!」
「つまんないね。お部屋で、宝探しゲームしようか。モリア、おいで。」
要注意人物は、隔離されている。
メロが佇み、目をギョロギョロと動かす。口元は不敵に笑いながら。
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