小さなベイビー、大きな野望

春子

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虫の知らせ

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困ったなあ。
フランは、頭を悩ませていた。
目の前にいる妖精の少年は、兄らしき人物に叱られ、泣いている。
抱っこされているが、大粒の涙が、尋常ではない程の量で流れており、足元が水浸し。
強い魔力を感じている。
「エリー、人間の子供を二人も呼び寄せるなんて。お前の魔力でも、難しいんだよ。わかるだろう。大分、魔力が減っている。この大バカに何を言われても、無視しなさい。父上は大層、お怒りだ。逃げるな、グルーピー。」
エグエグと泣く彼に、諭すように話す彼は、グルーピーと言う青年に魔法をかけた。
「…さて、どうしたものか。」
「お家に帰れないのですか?」
「いや、帰れないと言うわけでないんだが、何分、ここは、妖精界だ。繋げるには時間が掛かってしまう。こちらの事情で、巻き込んでしまい、申し訳ない。」
気がついた。エリアスの兄の瞳が虹色みたいな虹彩を放っている。
「やー。」
泣きながらしがみついているエリアスは、グズグズしながら、拒否する。まだ遊びたい。
「妖精界って?」
ノアが首をかしげる。
「妖精だけの世界だ。君たちのいる世界とちょっとずれている。難しい話は置いておいて。転移術も時間がかかるし、暫し、ここにいてもらう他ないか。」
「あの!僕たちの家族が心配しちゃう。連絡は取れないんですか!」
レオは正義感と誠実さを兼ね備えた兄であり、もし、自分のせいでと、責めていたら、居た堪れなくなる。
「…無いわけでない。そうだな。」
思案する彼にドキドキしてしまう。




ところに代わり、庭に犬一匹に、子供が二人。
「モリア、ありそうだなと思ったら、吠えてね。掘るから。」
「ねーねー、リーサ、ほんとに、お宝出てくるの?」
「テレビでやってたもん。犬が庭で吠えたら、何か、出てくるんだよ!」
まず、モリアは、犬は犬でも、黒狗である。嗅覚は確かに鋭いが、躾されている立派な番犬。
庭を荒らしたことは、一度もない。
荒らすのは、いつだって、孫である。
「何かって、なーに?」
「えー。お宝だよ!金ピカのやつとか?」
「金ピカ?」
はしゃぐ二人に、モリアは、静かに佇んでいる。
「目がチカチカするぐらいの派手なやつ。」
「ダンジョンにあるみたいなお宝のやつがあるといいね!」
止める者がいない。あと、彼らは、砂場で遊ぶスコップ片手に、掘る気である。
正に、やる気満々。しかし、頭上から声がする。
「あなた達、やめなさいな。なんで庭を見ると、穴を堀りたがるの?フィルやコルルが、困るでしょう。」
窓からツェリが声を掛けてきた。
「まま!」
「こんな暑い日に、モリアを付き合わせるのは、止しなさいな。かわいそうだわ。あと、あなた、いくら言っても、帽子を被らないわね?庭に宝は埋まってないわ。」
「あるかもしれないじゃん。」
「おバカね。ここは、ロッシュヴォークの敷地よ?もっと厳重なところにあるに決まってるでしょ。お母様に庭を荒らして、怒られたばかりでしょ。」
自慢の庭に穴を掘った孫娘に、リリーエは、雷を落とした。
理由はお宝があるんではないかと、掘ったのだ。慌てた双子がリーサを庇った。
「おばあちゃんがあんなに怒るとはおもわなかったの。」
「お母様もまさか、孫娘が、穴を掘るなんて、思わなかったでしょうね。」
「ねーねー、ツェリおばちゃん。なんでクロッグを持ってるの?」
「そうだわ。あなた達、上がってきなさい。緊急事態よ。」
「?」
目を見合わせる。


「フランとノアがいなくなった?」
目をぱちくり。セミの抜け殻を探しに、森の中を探索したまでは良かったが、行方知れずになったらしい。
レオとメイドが同伴していた。
証言では、小さな光のような輪っかに吸い込まれていく二人を見たらしい。
捜索隊を出すレオたちと弟の安否がわからず、情緒不安定のノアの兄達から、助言を貰うべく、連絡画来たそうだ。多分、フランの兄の提案だ。
「お前、また何か、わからん踊りをしたわけじゃあるまいな!」
「してなーい!なんでリーサがしたことになってるの!あとわからん踊りじゃないやい!あれは、アメフラシのダンスだもん。」
ノアの兄であるイヴァンの詰問に動じないリーサは反論。アメフラシのダンスとは、かつて、甘えん坊たちが、間違った知識を得て、面白そうだからと、数日、踊っていた。
数日間、雨ばかり、降ったのだ。
あと、そのアメフラシのダンスは、可愛くなかった。がに股で延々とクルクルと周り、掛け声はよっよっと言う。即座に保護者は止めたが、面白がった子供たちには、逆効果。
「俺の可愛いノアを大抵、騒動に巻き込むのは、お前だ!」
「リーサじゃなーい!!」
男らしい柳眉な眉をひそめ、ノアと同じ青い海の色をした青年のイヴァンに食って掛かるリーサ。
横で今はそんな話じゃないと嗜めるレオが映っている。
「落ち着きなさい。ベイビーは何もしてないんだから。」
マルクスが前に出てくる。
「弟がいなくなって、不安がるのは、充分、わかるよ。でもベイビーは何もしてない。ベイビーを責めるのは、お門違いだよ。」
「すいません、マルクスさん。イヴァンは動揺してしまって。僕がいたのに…。」
「大丈夫だよ。レオ。」
レオは、弟たちが、消えた瞬間の魔法の流れを調べていると言う。
その光の輪のような魔力は、感じたことがない不思議な力だったらしい。
「光の輪…?」
アルミンが首をかしげる。
「どうしたの?アルミン?」
「アメフラシのダンス…あれ??引っ張られる?」
「?」
「んー?」
アルミンは考える。何処かで同じようなことを聞いた。
「あ!思い出したよ!コハクだあ!ほら、コハク、保育園の時にさ、行方不明になったじゃない?エルモおじいちゃんが暴れて大変だった時。」
「…?ああ!!あったあ。アメフラシのダンスを踊った時ね?」
「コハクに教えた時にさ、コハク、お外で踊ってたのに、いなくなっちゃって。次の日に帰ってきたの。怖くなかったって。お友達になったのって言ってたよ!」
「お友達って?」
「妖精だよ!妖精界の妖精だったって聞いたよ!悪戯ピンキーじゃなかったよ!って教えてくれたもん。」
画面越しのフランの兄もノアの兄の驚愕もその話を聞いていた周りの保護者らもあ然。
「妖精界の妖精…?」
「そうだよ!確か、コハク、妖精界へ行けるようになったって言ってたもん。」
ドカーンと爆弾を落とすアルミンに、後ろに気絶するイヴァンに、固まるレオの姿が映る。
「そうだった。悪戯ピンキーは妖精界にいないと聞いたの、がっかりしたの、覚えてる。」
別の意味で、悔しがるリーサにそうじゃないと、嗜める双子。
「コハクに連絡してみる?そしたら、二人は見つかるよ!多分。」
キラキラと目を輝かせるアルミンにリーサも妖精界に行きたーいと言うリーサ。
何処から突っ込めば、いいか、困り果てる周り。
妖精界とは特別な場所である。
おいそれと行けるような距離ではない。
「コハクにつなげて。」
無邪気にアルミンが提案する。 

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