小さなベイビー、大きな野望

春子

文字の大きさ
上 下
147 / 159

SIDE フラン

しおりを挟む
フランは、兄達に付添いをしてもらい、セミの抜け殻を集めている。
ノアと手を繋ぎながら、トコトコと歩いてる。
オテステリアル家にある森で、自然豊かな場所だ。
暑さにやられないように、帽子を被り、メイドが持ってきてくれている水筒を欠かさずに、こまめに、水分補給。
「これも良いんじゃない?」
「カッコイイ!」
キャッキャッ。虫かごに集まるセミの抜け殻。
二人は意外とかわいい顔をしながらも、虫は平気。
特にフランは家系的なこともあるが、トラード家は、数種類の虫を使役している一族だ。
トラードの家の番犬は、番犬ならぬ、大蜘蛛が、トラード家を護っている。
リーサ曰く、強そうな蜘蛛だといい、ツンツンして、叱られた。
フィルやコルルがトラード家に行く時は、虫を一切合切、視界に入れないように努めて、気を遣っている。
ちなみに、オテステリアル家の番犬は、オテステリアルの狂犬兄弟である。末っ子、ノアの為なら、何でもするブラコンを拗らせた兄達がノアの安全を護っている。
ノアは、優しい兄達だと言うが、リーサは、ノア以外に、優しくしてるとこを見たことがないと言う。
「ふたりとも、そろそろ、お昼寝の時間だよ。」
フランの兄が、日差しがきつくなってきた頃合いに、休憩を挟もうと口にした。
うん!と立ち上がろうとした瞬間、ノアとフランに異変が起きた。
「え?」
「フラン!!ノア!!」
切羽詰まった兄の伸ばした手を掴むことが出来なかった。
「きゃあああ。」
甲高い悲鳴声が響いてく。



フランは、パチパチと目を見開く。ノアがしがみついており、同じく、キョロキョロ。
「なーに?」
引っ張られた感覚があった。あのオスカーが使用した転移魔法とは違う気がする。
「ここ、どこ?レオがいないよ?」
ノアがキョロキョロして呟く。レオは、フランの兄である。メイドたちもいない。
「レオお兄様ー!」
大きな声を出してみるが、返事はなし。
不思議と怖さはない。暗くはなく、辺りは、明るいから、不安さはあまり感じない。
「レオって誰?」
子供らしい声がする。幼い子供の無邪気な声だ。
振り向くと、ほっぺたが零れ落ちそうな程のぷくぷくと、お腹もまん丸。ずんぐりむっくりの体型で、黒目の大きな瞳が興味津々にこちらを見てくる。
「せーこうした。人間の子供でしょ!!ふふ。兄様にいい子、いい子してもらお。」
ぴょんぴょん跳ねる少年に申し訳ないが、状況がわかってない二人は、ついていけない。
「あれあれ。人間は、おしゃべりだと聞いたのに。静かだよ?グルーピーったら、また嘘を言ったの?お兄様に叱ってもらう。」
「ねーねー、どちら様?」
「え?」
フランは、気づいた。少年の背中に、綺麗な羽がついてる。
もしや、悪戯ピンキーかもしれない。
「悪戯ピンキーさんなの?」
「悪戯ピンキー?違うよ!僕はね。エリアス。お兄様達はね、エリーって呼ぶよ。ふふ。人間を召喚できたあ。」
「ここは、どこなの?」
「僕のお部屋だよ。ああ!わかった。“お目々”がまだなんだね!いいよ。エリーが見せてあげる。」
エイッとエリアスと呼ばれた少年がフランとノアの目に細工を施した。
今まで、辺りに何も無かったのに、視界が広がり、家具が並んでいる。
ただ、見たことがないデザインの物ばかり。
白で統一している家具は、洗練さを兼ね備え、触り心地も良し。
「ね。君たちのお名前は?教えて。」
「フランだよ。」
「ノアだよ。」
「フランにノア。」
キャッキャッ。
波長が合ってしまった。最悪である。
フランの兄たちは、蒼白し、辺りを探し回っていたり、ノアを心配するノアの兄達の気迫迫る必死さを知らずに、子供たちは遊ぶ。


「あれれ。いま何時?帰らないと。」
「あっ。」
楽しく、遊んでいたが、帰らねばならない。
時計が無いから、何時かもわからない。
しかもレオは、二人がいなくなって、心配してるはずだ。アワアワするフランたちに、エリアスは、キョトンとしている。
「なんで?フランもノアもエリーといるの。」
「え?」
「…リーサみたい。」
エリアスは駄々っ子のように嫌と二人を離さない。
「帰らないとだめなんだよ。」
「兄様たちが心配しちゃうから。」
「だめー。」
いやよと抱きつくエリアスに、浮かぶリーサの駄々っ子の様子と重なる。

「エリー?エリアス!?お前、何をしたの?」
見知らぬ声が響く。エリアスは、ビクッと身動きした。
彫りの深い顔立ちをした黄緑色の長髪の青年が部屋に入ってくる。何か掴んでいる。そちらは赤紫の髪をした青年だ。
「兄様。」
「ー!エリー、なんて事を!!ああ。エリー、大丈夫か。このクズになんて吹き込まれた?ああ、やはり、このような奴をエリーに近寄らせた俺が馬鹿だった。」
「兄様。グルーピーのお口から、泡が出てる。」
「兄様に任せなさい。コイツの羽をもぎ落とす。」
到底しちゃだめな顔をする青年に、エリアスは喋っている。兄様と言うんだから、エリアスの兄だろう。
「あのー。エリアスのお兄様、僕たち、帰らないといけないんですよ。」
意を決して、話すフランに、こちらを向く、宝石のような輝く瞳をした彼は、驚愕している。
「人間を二人も…。…」
固まる彼におーいと声をかける。




「ぶえっくしゅ。」
今日一日、クシャミ連発するリーサ。
「風邪をひいちゃった?」
心配するフィルにツェリは、リーサを見る。
「あなた、どこかで悪戯でもしたんじゃないの?誰か、噂話をしてるんじゃない?」
「リーサはいい子だもん。ぶえっくしゅ。」
チーンと鼻かみをする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

ブリっ子系クラスメイトにワンコ系婚約者を取られたけど不良債権を引き取ってくれてありがとうとしか思えませんが?

Typhoon
恋愛
 アイリーン・フォン・メッサーシュミットはメッサーシュミット伯爵家の長女であり、フォークト辺境伯家の次男であるシュヴァルツ・フォン・フォークトと婚約していた。  しかし、パーティーの会場でシュヴァルツはアイリーンに対して婚約破棄を告げ、エリザ・フォン・ハインケル男爵令嬢との間に真実の愛を見つけたという。  婚約破棄を言い渡されたアイリーンは打ちひしがれ……。というものをシュヴァルツやエリザは予想していたのだが、そうはならなかった。  アイリーンの頭の中では「よっしゃ! 呼吸する不良債権を処分できた!」なんてことになっていて……。

指輪一つで買われた結婚。~問答無用で溺愛されてるが、身に覚えが無さすぎて怖い~

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約破棄をされて実家であるオリファント子爵邸に出戻った令嬢、シャロン。シャロンはオリファント子爵家のお荷物だと言われ屋敷で使用人として働かされていた。  朝から晩まで家事に追われる日々、薪一つ碌に買えない労働環境の中、耐え忍ぶように日々を過ごしていた。  しかしある時、転機が訪れる。屋敷を訪問した謎の男がシャロンを娶りたいと言い出して指輪一つでシャロンは売り払われるようにしてオリファント子爵邸を出た。  向かった先は婚約破棄をされて去ることになった王都で……彼はクロフォード公爵だと名乗ったのだった。  終盤に差し掛かってきたのでラストスパート頑張ります。ぜひ最後まで付き合ってくださるとうれしいです。

single tear drop

ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。 それから3年後。 たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。 素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。 一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。 よろしくお願いします

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。 反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。 嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。 華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。 マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。 しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。 伯爵家はエリーゼを溺愛していた。 その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。 なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。 「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」 本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。

無価値と呼ばれる『恵みの聖女』は、実は転生した大聖女でした〜荒れ地の国の開拓記〜

深凪雪花
ファンタジー
 四聖女の一人である『恵みの聖女』は、緑豊かなシムディア王国においては無価値な聖女とされている。しかし、今代の『恵みの聖女』クラリスは、やる気のない性格から三食昼寝付きの聖宮生活に満足していた。  このままこの暮らしが続く……と思いきや、お前を養う金がもったいない、という理由から荒れ地の国タナルの王子サイードに嫁がされることになってしまう。  ひょんなことからサイードとともにタナルの人々が住めない不毛な荒れ地を開拓することになったクラリスは、前世の知識やチート魔法を駆使して国土開拓します! ※突っ込みどころがあるお話かもしれませんが、生温かく見守っていただけたら幸いです。ですが、ご指摘やご意見は大歓迎です。 ※恋愛要素は薄いかもしれません。

処理中です...