小さなベイビー、大きな野望

春子

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デニエルとリリーエ(2)

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デニエルがリリーエとの思い出話を聞かしてると、大分、時間が、かかっていた。
コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「デニエル?」
「入って。」
リリーエが部屋にやってきた。
「何か用だったの?」
リリーエを呼び出したのは、デニエルだが、元は、リーサである。
「座って。リリーエにもコーヒーを。」
メイドが素早く、コーヒーを淹れる。
リリーエは淹れられたコーヒーに、お砂糖のみを入れている。
「さっきまで、リーサがリリーエとの馴れ初めを聞いてきてね。教えていたんだよ。」
「あらまぁ。そうなの?」
やっぱり、そう言ったことも、興味津々なのかしら?  
「おじいちゃんとおばあちゃんが仲良しだと嬉しい。」
「まあ!」
リーサがリリーエにはじめて会った印象を聞く。
リリーエは、目を瞑りながら、語る。
「あの日は、私、きちんとせねばと、緊張で、固まっていたわ。カイゾル家の娘として、恥じるような真似は、できませんから。しかし、私は、デニエルを見て、絵本に出てくるような優しい王子様のように映って、ドキドキばかりしてましたわ。」
その事を思い出してるのか、ほんのり赤い。
「うまく話せない私に無理強いしない優しい気遣いにも、庭を散策するときは、手を引いて、歩いて、歩調を合わせてくれたことも、今でも鮮明に思い出しますわ。」
私をリードしてくれる力強さにも惹かれた。
「私は、デニエルと絶対に、結婚すると、決めましたわ。お母様にお願いをして、有名な行儀見習いの先生の師事をお願いしましたわ。とても厳しくて、辛かったこともありますが、デニエルの妻になると、頑張ることを決めたのですよ。」
「リリーエは、同学年でも優秀な生徒で、マイ・レディーって言う称号を得たんだよ。」
マイ・レディーとは、淑女の行儀見習いで、最も美しく、品行方正なレディーの淑女に贈られる。
「デニエルは私にとても綺麗なバラの花束をくれたのですよ。あと、とても美しいアメジストのブローチ。今でも大事に保管していますわ。残念ながら、花は枯れてしまったけれど。」
「リリーエの心に残っているなら、本望だよ。」
「私は嬉しくて、嬉し涙を溢してしまって…。デニエルは、涙を優しく拭いて、抱きしめてくれましたわ。」
恋する乙女状態。ラブラブし始める祖父母にニコニコする孫娘。
「そうでしたわ。ある年、変な女性が、デニエルに近寄りましたわ。婚約者である私を悪役令嬢だの何だの、何を言ってるか、最後まで理解出来ませんでしたけれども。度々、私たちの逢瀬を邪魔されて…。」
「思春期特有の夢見がちでね。自分は異性から愛されて当たり前だと言う子でね。あの時は、周りは、ほとんど、婚約者がいる子達ばかりだったから、相手にもされてはいなかったけどね。嗜めてもあれは、ダメだったね。何人かは、彼女に謙遜して、婚約破棄を起こした人達もいたけど。」
流行った物語の主人公気取りだったのかもしれない。
「私はあのような女性にデニエルを取られるような愚かな真似はしませんわ。堂々と真っ向勝負で戦いましたわ!」
「はた迷惑だったけど、リリーエとの絆がより深まったと言うことは、感謝してるね。」
「おばあちゃんはどうやって勝ったの?ままみたいに雷を落としたの?」
「物理的に手をあげていませんわ。」
リリーエは怒っても、魔法は放たない。
「テストやコンクール等でですよ。」
「リリーエの足元にも及ばなかったよ。」
「アレックスおじいちゃんはお怒りにならなかったの?」
アレックスは、妹、リリーエを可愛がっている。リリーエの邪魔をする相手を放置するだろうか?
「アレックスお兄様はお怒りになられたけれど、私は、言ったのです。静観してほしいと。この私自身で、片をつけると。」
あの程度の娘に、兄が出る前に、片をつけねば、プライドが許さなかった。
「おばあちゃん。かっこいい!」
「ふふ。リリーエはいつも凛として、素敵だよね。」
リリーエはプライドが高い。娘のツェリそっくり。


「…。」
従兄弟たちは、出された魚のムニエルをしょっぱい顔をしながら、食べている。
何故ならば、何故か、花を飛ばしている祖父母のイチャイチャぷりに巻き込まれないように。 
「あら。お母様。お父様。いつもに増して、ラブラブね?」
ツェリは、疑問を放つ。
「つい、昔話をしたら、懐かしくてね。」
「昔話?」
「リーサが私達の馴れ初めを聞きたがっていたので、話したのですよ。」
お前のせいかとリーサは従兄弟たちに見られたが、ムニエルに夢中のリーサは気づかない。
「ふふ。あなた達もきっと聞かれますわ。リーサは、仲良くしていると、嬉しいらしいですからね。祖母としては、孫娘のために、話したわ。」
「そうなの?ああ。そう言えば、たまに話を聞きに来るわね?そうね?娘のために母として、話してあげるのも、務めね。」
従兄弟たち、気配を完全に消す。
「ままとパパ、おじちゃんとおばちゃんは、仲良し!おばあちゃんとおじいちゃんも仲良し!」
ニコニコ。
「あ!そうだった!あのね!おじちゃん。アルミンがね!」
何だか不吉な予感がする従兄弟たちは、目配せ。
「今度会ったら誘われるだろうけど、アルミンがね!妹自慢大会をやるから、来てね!って。」
「妹自慢大会?」
「そうだよ!アルミンはアイシャを自慢するの!お呼ばされた人達はみんな、妹大好きで、好きなように、自慢するの。でね!誰が一番、妹を愛してるかって優勝を決めるんだよ!」
「どこでやるの?」
「アルミンん家。あのね。有名な妹好きばかりを呼ぶんだって!アルミンは負けない!って言ってるよ!ニーヤも呼ばれてる!おじちゃん、ニーヤに負けないでね!」
アルミンから招待を受けたニーヤは、負けれないと不敵に笑い、今度こそ、ケリをつけると言ってるらしい。
「…そうなんだね。それは是非、参加しないとね。アルミンには可哀想な思いをさせてしまうけど。」
心中は、ニーヤに、わからせてあげないとねと不敵に笑う。
「兄自慢大会はないの?」
「わかんないけど、カイヤに負けないでね!まま。」
「もちろんだわ。」
絶対に、その日は近寄らないと、心に誓う従兄弟たち。
胸焼けするような思いを流すように、炭酸を飲み込む。

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