小さなベイビー、大きな野望

春子

文字の大きさ
上 下
131 / 159

デニエルとリリーエ

しおりを挟む
デニエルの部屋には、デニエルの趣味でもあるジャズ音楽のレコードがたくさん、保存されている。
古いアンティークの蓄音機が設置されていて、ゆったりと、曲が流れる。
メンテナンスも欠かさず、蓄音機を大切に扱ってるお陰で、今も現役。
今は、リーサが、デニエルの膝を占拠中。
「目は痛くない?」
「痛くない!リーサの目、綺麗でしょう!」
「うん。綺麗でかわいいよ。」
あの忌々しいアレが、無くなり、後遺症もなく、良かった。
「ガルガンズも大人しいよ!」
体内にいるガルガンズは、当初は、苛ついていて、術の進行を食い止めていたが、消すことが出来なかった事に、プライドが傷ついてる。
ダグラスが宥め、説得した。
「ガルガンズが暴れたら、駄目だもんね!ままが、ガルガンズが暴れていいのは、古狸に向けてなら、いいって言ってたから。」
「そうだね。古狸…。デヴィット…まあ、死なないだろうね。図太いからね。」
ツェリのデヴィット嫌いは、深刻である。
メイドがデニエルのために淹れたコーヒーの香りが部屋に漂う。デニエルは、ミルクもお砂糖も入れないブラックを好む。
「ブラックコーヒー、苦くないの?」
「苦味が美味しいかな。リーサの口には、合わないね。」
「苦いもん。」
ミルクやお砂糖をふんだんに入れなきゃ、飲めない。
リーサには、おねだりをして、入れてもらったコーラを飲んでいる。 
「キンバリーがね、診に来てくれるよ。まだ目薬は、つけてって。」
「そうだね。言うことはきちんと聞いてね。」
「いいこだもん。」
鼻を高くする。
「ねぇねぇ。おばあちゃんと結婚したのは、政略結婚だったで本当なの?」
「そうだね。私達の時代には、それが当たり前でね。家同士が決めた結婚が主流だったよ。昔よりは厳しくはなかったけど。それでも親が決めた相手と結婚するのは、当たり前だったよ。私の父とリリーエの父親が取り決めたんだ。家柄が釣り合い、相応しいかどうかでね。今でも思い出すよ。リリーエと出会ったのは、ちょうど、リーサ位の歳でね。リリーエは、もう既に、出来上がったお嬢さんで、おめかしをしたドレスが良く似合っていてね。赤いワンピースで大きなリボンをつけてね。でも緊張していたのか、ちょっと頬を赤くしていてね。毅然と挨拶をしていたのに、なんだか、いじらしくて。かわいいと思ってね。私は、一生、彼女を守ると決めて誓ったよ。」
デニエルたちの時代では、政略結婚は当たり前であり、親が決めた相手と結婚をするのは、当たり前。
昔のように親子ほど離れたような年頃を結婚させることは無くなっていたようだが、それでも、十歳差ぐらいなら、誤差以内。
「父親が7歳の子供の結婚相手を探すんだ。何人かね。そして、母親が振るいをかけて、調整をするんだよ。決められた一人と顔見合わせをするんだよ。まあ、私達のときは、あまりにも性格が合わないとかであれば、解消できたけど。」
「途中で嫌だってなったら?」
「話し合いが始まるよ。政略結婚って言うのは、難しくてね。いわば、家同士の契約だからね。違えると、違約金とか、新しいまた婚約者を見つけるのは、想像より大変でね。だからこそ、滅多に起きない。」
デニエルは昔を思い出すように話す。
「良かったか悪かったかは、結果論になってしまうけど、私達の時代に、政略結婚ではなく、恋愛結婚を推し進めるような物語が流行ってね。政略結婚で、相手をどうしても好きになれないとか、違う相手を好きになったとか、好きな相手と結婚出来ないと不満を抱えた人達から爆発的に広まってね。離婚するのは、中々難しい時代でね。仮面夫婦と呼ばれている人達は、それに飛びついたりね。各地で大騒動を引き起こして…議論が白熱して、まあ、緩和された部分もあるよ。」
だからこそ、自分たちの子供の頃は、あまり、政略結婚と言うのは、廃れていった。もちろん、政略結婚をしてる家柄もある。
「私達はね、マルクスたちには、自由に結婚させようと決めていてね。まあ、マルクスには、フィルという幼馴染がいて、リリーエのお気に入りだったし、でも相思相愛だったからね。家に来て貰うのは、当然だったけど。ツェリは、ある日、好きになったサラトガと結婚するって言って、驚いたけど。」 
クスクス笑う。
「ママは、絶対、パパと結婚するって決めてたって。」   
「サラトガがロッシュヴォーク家の子供だとわかってね。ダグラスと話し合いをした時は、リリーエがサラトガが、ハルベルに来るんだと譲らなくてね。ダグラスは、ツェリを寄越せと世迷い言を吐いてね。」
リリーエは、なぜ、ツェリを渡せねばならないと、サラトガが家に来れば良いのだと言ったが、ダグラスは、サラトガは家の長男であり、ロッシュヴォークの性を捨てさせる訳にはいかないと、リリーエとダグラスは争ったらしい。
ちなみに、サラトガとツェリは、結婚式の話で花を咲かせていたらしく、蚊帳の外。
「ままは、ジオルクが家に来るんだって!でもカイヤがリーサが嫁に来るんだからって喧嘩してる。」
歴史は、繰り返される。
「それはおかしな話だね?」
なぜ、リーサを渡せねばならないのか?
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

処理中です...