小さなベイビー、大きな野望

春子

文字の大きさ
上 下
129 / 159

湖畔

しおりを挟む
毎年、夏になると、近くの湖畔まで、ピクニックに行くのが通例。
メイド達が、テキパキと準備をする横で、水辺にはしゃぐ子供らを宥める大人たち。
魚を釣るための釣り道具や泳ぐための道具等を用意してきた。
日焼け対策に余念のない女性陣が、パラソルを立て、テーブルや椅子を用意し、幾重にも、日焼け留めを塗りたくる。
「むー。」
「リーサ、あなた、将来、私に感謝するのよ!こんなに肌を気にしてあげる親はいなくてよ!咽び泣いて、感謝すべきだわ。」
母の使用している日焼け留めクリームは、甘い香料が入っており、その匂い=日焼け留めクリームだと認識している。
「もーいい。」
「待ちなさい。きちんとまだ塗ってないわ!あなたは知らないだろうけど!紫外線って言うのは、あなたが思うよりも、怖いものなの!今は気づかないかも知れないけれど、未来、気づかぬ内に、憎きシミに成り変わるかも知れない要素を与えるのよ?」
「飽きた!」
母親にがんじがらめにされ、塗りたくられているリーサは、早く、マッキーたちと水遊びをしたい。
「おばあちゃんにもままにもないから大丈夫。」
「バカね!私達は、常に準備をしてるの!努力と研究の賜物だわ!」
「見なさい。マッキーたちもやってるわ!」
鬼教官がいるのに、適当に、日焼け留めを塗りたくられない。
「若い内からこういうのは、しておくべきなのよ!ままは、あなた位の年には、お母様の日焼け留めクリームを貸して貰っていたわ。」
渋い顔をするリーサはまるで、潰れたような顔つきの猫のようだ。
「フィル、リーサはいつもああなの?」
「ベイビーは、あまり興味を持ってなくて。早く遊びたい気持ちが勝ってしまうの。」
孫娘の嫌がり方に、リリーエは困惑。
淑女として、幼き頃から、肌を気にするように躾られてきたリリーエは、同然、我が子たちに、そのように指導してきた。お陰で、ツェリは自慢の白いきめ柔さで、自慢の肌であり、息子二人も、シミ一つない、綺麗な肌をしている。
「ままの日焼け留めクリームを塗ってるのよ?」
「リーサ、クリームなら、カスタードクリームが好き。」
食べれないクリームに興味を持たない。
ちなみに、ツェリ愛用の日焼け留めクリームのお値段は、通常の市販のクリームより倍は、かかるお値段。
「あんまり奥までいかないよ。」
サラトガの注意が飛ぶ。




ワイルドに、餌をつけて、魚釣りに勤しむ。
ちなみにフィルやリリーエは、魚の餌は、頑なに見ない。
「あそこに鳥がいて、魚、狙ってる。」
「自然の摂理だよ。」
リーサのために、鳩は入らないように、魔法をかけているが、他の動物は、自然な行動をしている。
「あ!ちぎれた!パパ。」
「貸してごらん。」
サラトガが餌をつけ直してくれる。
「お母様、フィル、野性的なことは、リーサたちに任せて、私達は、ティータイムに勤しみましょう。」
メイドたちが、テキパキと準備をしたティータイムセットを指差す。


「ナギ、何してるの?」
「うん?木彫り。」
ある程度、魚釣りをして、休憩してるリーサは、ナギがなにかをしてるのに、気づいた。
「木彫り?模様?」
見たことない模様を、木の棒に、ナイフで、彫っている。
「これはね?僕の魔法の練習の為に、使用するものなんだ。ここに生えてるシラヅクの木は、魔力を帯びてていて、相性がいいんだ。」
「どんなことに使うの?」
「んー。詳しくは言えないけど、召喚の手助けになるやつかな?」
「ふーん?ナギの使い魔は、コウモリだもんね。」
「そうだね。アルミンに会わせると、はしゃいじゃうけどね。なんだろうね?アルミンからなにか、流れてるのかな?」
「アルミンは動物に好かれるの!」
そのせいで、コルルは、頭を痛めてるが、そこは、仕方ない。


「フィル様。通話が来まして…。」
「え?誰から?」
目を丸くするフィル。
ここで?と思いつつ、携帯クロッグを取る。
相手は、コルルからだった。
「フィル…!」
なにかあったのは、明白。
ナギの横でまったりしてるリーサに見やる。
「どうしたの?」
コルルの切迫詰まった口調に、相打ちをしながら、目を見開く。
「ベイビー。ちょっと来てちょうだい。」
呼ばれて、フィルを見るリーサは、なにかを感じとり、あわあわ。
「どうしたのです?フィル。コルルはなんて?」
「アルミンがまた拾い物をしたそうで、キタアカリキツネの一家…。それを隠していたそうで…しかもその見つけた日は、ベイビーといた日なの!」
「違う。違う。アルミンもリーサも拾うつもりなかったの!でもついてきたの!中に入って来ちゃったの!」
キタアカリキツネの生息圏は、もっと北よりの生息なのに何故?
リーサの供述によれば、いつの間にか、敷地内にいたらしい。
アルマが警戒していないし、何よりも、飼ってるペットたちが、威嚇してないから、安全性は大丈夫だと思ったらしい。
従兄弟たちは、あちゃーと頭を抱え、困ったねと苦笑いする男性陣。
「一匹じゃなくて、家族らしくて、少なくとも五匹。」
「寂しくないよ!」
「違うわ!ベイビー。報告はきちんとしなさい!見慣れない動物に近寄らない!」
「だってさ。あのさ。」
リーサ、悪くないと、ナギの後ろに隠れる。
「アルミンからどんな香りが流れてるのかしらね?」
ツェリは首をかしげる。クロッグ越しに、弁明するアルミンの声がする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

ブリっ子系クラスメイトにワンコ系婚約者を取られたけど不良債権を引き取ってくれてありがとうとしか思えませんが?

Typhoon
恋愛
 アイリーン・フォン・メッサーシュミットはメッサーシュミット伯爵家の長女であり、フォークト辺境伯家の次男であるシュヴァルツ・フォン・フォークトと婚約していた。  しかし、パーティーの会場でシュヴァルツはアイリーンに対して婚約破棄を告げ、エリザ・フォン・ハインケル男爵令嬢との間に真実の愛を見つけたという。  婚約破棄を言い渡されたアイリーンは打ちひしがれ……。というものをシュヴァルツやエリザは予想していたのだが、そうはならなかった。  アイリーンの頭の中では「よっしゃ! 呼吸する不良債権を処分できた!」なんてことになっていて……。

指輪一つで買われた結婚。~問答無用で溺愛されてるが、身に覚えが無さすぎて怖い~

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約破棄をされて実家であるオリファント子爵邸に出戻った令嬢、シャロン。シャロンはオリファント子爵家のお荷物だと言われ屋敷で使用人として働かされていた。  朝から晩まで家事に追われる日々、薪一つ碌に買えない労働環境の中、耐え忍ぶように日々を過ごしていた。  しかしある時、転機が訪れる。屋敷を訪問した謎の男がシャロンを娶りたいと言い出して指輪一つでシャロンは売り払われるようにしてオリファント子爵邸を出た。  向かった先は婚約破棄をされて去ることになった王都で……彼はクロフォード公爵だと名乗ったのだった。  終盤に差し掛かってきたのでラストスパート頑張ります。ぜひ最後まで付き合ってくださるとうれしいです。

single tear drop

ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。 それから3年後。 たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。 素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。 一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。 よろしくお願いします

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。 反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。 嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。 華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。 マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。 しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。 伯爵家はエリーゼを溺愛していた。 その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。 なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。 「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」 本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。

無価値と呼ばれる『恵みの聖女』は、実は転生した大聖女でした〜荒れ地の国の開拓記〜

深凪雪花
ファンタジー
 四聖女の一人である『恵みの聖女』は、緑豊かなシムディア王国においては無価値な聖女とされている。しかし、今代の『恵みの聖女』クラリスは、やる気のない性格から三食昼寝付きの聖宮生活に満足していた。  このままこの暮らしが続く……と思いきや、お前を養う金がもったいない、という理由から荒れ地の国タナルの王子サイードに嫁がされることになってしまう。  ひょんなことからサイードとともにタナルの人々が住めない不毛な荒れ地を開拓することになったクラリスは、前世の知識やチート魔法を駆使して国土開拓します! ※突っ込みどころがあるお話かもしれませんが、生温かく見守っていただけたら幸いです。ですが、ご指摘やご意見は大歓迎です。 ※恋愛要素は薄いかもしれません。

処理中です...