小さなベイビー、大きな野望

春子

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お出掛け

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サラトガとお出掛けすることになった。
乗り合い馬車に乗って、少し遠い町にいく。
以前、頼んだ物を受け取りに行くらしい。

「いい?ベイビー。サラトガから離れたらダメよ?暑いからって、帽子は、取らないの。誰か、見知った顔を見ても、ついていったり、呼んで、遊んでもらうことはしてはダメ。」
「知ってる~。」
「お店にいっても、物珍しいからと、あちこち、触ってはダメだし、サラトガにおねだりをして、買ってもらうのもダメ。」
「わかってるう。」
うんうんとうなずくリーサ。
「リーサ。お姉さんだから出来る。」
「ええ!そうね!」
何処から湧いて出てきたか、不明だが、やる気に満ちているリーサに、真剣にうなずく。
「リーサ。おいで。準備出来た?」
「うん!」
「よろしくね。」
サラトガは、リーサと手を繋ぐ。


乗り合い馬車の停留場には、分かりやすい目印の旗があり、定期的に、やってくる。
行き先によって、変わる。
「パパは、何を直して貰ったの?」
これから、行くのは、ちょっとした店で、修理屋さんだ。生活雑貨から、宝石などの貴金属、物珍しいものまで、様々なものを直す修理屋は、使い勝手もよく、何かがあれば、頼んでいる。
「ペンを直して貰っている。あのペンの材質は特別でね。メンテナンスが必要なんだよ。」
「リーサが触ったらダメなやつでしょ?マッキーたちもダメなの?」
「あれはね、普通のペンじゃない。護符が巻き付いてる特別製のものだからね。」
リーサが触ろうとしたら、サラトガは、ダメだと、直ぐに奪って、しまった。とても綺麗なガラス細工のような代物で、見たことない蒼い模様が、特徴的。
「コルルおばちゃんの指輪と同じ?」
「あれは、父さんがコルルを護るために、特別につくったものだよ。愚か者は、どこにいても、いて、困るね。」
コルルの指には、コルルの趣味ではない大きな黒真珠の指輪が嵌めてあり、それは、悪意をコルルから背けるために、作らせたものだ。
「ギルベルトおじちゃんとコルルおばちゃんは大恋愛の末に結婚したんでしょ?」
「そうだよ。いくつもの障害を乗り越えてね。ああ来たよ。」
乗り合い馬車がやって来た。


「ままとはあんまり乗らないから、楽しい!」
「ツェリは確かに乗らないかもね。乗るとしたら、貸し切りかな。」
窓から、景色を楽しむ。
「あ!見て。アルミンが好きそうなキツネ。」
「やめなさい。拾わないから。」
アルミンももう少ししたら、落ち着いて、動物を欲しがるのを…落ち着く筈。きっと。
「…でもアルミン、この前、見つけたって。」
「え?なに。聞こえない。なんて?」
リーサは、ハッとし、父に抱っこを所望。



修理屋。
閑静な住宅街に連なる小さな店で、回りの建物に馴染んでいる。
ウィンドウから見れる可愛らしいぬいぐるみを見ながら、手を引かれて、中に入る。
何だか、空気が変わった感じがする。
「ごめんください。」
「はい。いらっしゃいませ。」
ビスクドールのように精巧な顔立ちをしたお人形だ。魔法が掛けられている。ふんわりとしたドレスを身に纏まった可愛らしいお嬢さん。
「注文したペンを受け取りに来たんだ。」
「お待たせしています。サラトガ様。主から、承っています。どうぞ。こちらに。」
ここに売り物はないらしく、どれも、注文が入った修理品ばかりが、飾られている。直されれば、持ち主に返される仕組み。
天井に吊るされた地球儀のような球体や鳩時計など。
「主ってだれ?」
「ここの店主。変わり者なんだけどね。腕はたつし、かなりの技量の持ち主なんだけど、極度の人見知りも相まって、人形を操って、お店をやってるんだよ。」
「ふーん?お人形さんはお名前はあるの?」
「メアリーと申します。」
メアリーは、こちらにと、案内された部屋で、ゴシック調の椅子に座るように促された。
で御座いますね。なんと、数えて…いつ振りでしょうか。この目に映るのは。」
「はは。見なくても。確かに大分空いたけれど、君からしたらそうでもないだろう?」
「老害にならぬように、御配慮しているのですよ。サラトガ様。」
メアリーの声ではなく、落ち着いた男性の声だ。ぱちくりと、目をパチパチ。
「リーサって言うんだ。ツェリに似て、お転婆さんなんだけど、よろしくね。」
「リーサはお姉さんだもん!」
「はは。」
コロコロと笑う。

「こちらがお品で御座います。間違いないか、見てくださいね。」
赤茶のペンケースに入れられたクリスタルガラスのペン。蒼い模様がぐるりと巻き付いた胴体でありながら、繊細なデザイン。
「ありがとう。」
試しに持ってみる。
すうっと魔力を奪われる。そうこの感覚。
「お大事にしてくださいませね。それは、サラトガ様のもので御座います。」
「ありがとう。」
リーサの目に、魔力が浮かぶ。無意識に、ガルガンズが反応した為である。
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