小さなベイビー、大きな野望

春子

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誰にでも苦手はある

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リーサは、はっきりと好き嫌いは激しいが、苦手なものもある。
大抵の動物は、大丈夫であるが、一つだけ、苦手意識を持つ動物がいる。
平和な象徴とされているが、鳩である。
あれだけは、ちいさい頃から大の苦手。
近づいてきたら、だっこを要求したり、地団駄を踏んでるように、足で遠ざけたり。
何がダメなのかと言われると、たぶん、首の動きや意識に母親も苦手意識があるため、それを見ていたからだと思う。
鳩が近づくと、最早、怖がり、ご飯すら食べれない。
なので、リーサのために、家では鳩避けの魔法が、掛けられていて、鳩は侵入出来ない。

「私が苦手だから、あの子も怖がるようになったんだわ。」
ツェリは、昔、鳩による損害を負った。
父から貰ったお気に入りのブラウスに、あろうことか、飛行していた鳩が糞を落としたのだ。
ツェリはショックのあまり固まり、当時、付き添っていたメイドたちが慌てて、ブラウスの汚れを拭き取った。
そこから、ツェリは、鳩が苦手になり、無意識に遠ざけるようになった。
野生である鳩は、力のある相手の無意識な圧に生存本能が、刺激され、ツェリに近寄らない。
固まって、群れていても、ツェリが、圧を飛ばすと、一斉に飛び立つ。
そんな母を見ていたので、リーサの中では、鳩は恐怖対象と捉えられ、恐怖に陥るのだ。
鳩は怖いものだと。


リーサがどうしようと、迷ってるのは、前方に、鳩の群れに餌をやる人がいて、かなりの鳩が群がってる。進行方向にいるのだ。
一緒に並んで歩いていたジオルクとカイヤも気づいた。
「迂回しましょうか。きっと近づいたら、凄く飛ぶわ。」
それで、きっと、またリーサは怖がるだろう。
踵を返す。カイヤの腕に抱きついて歩いてるが、怒られない。
「気持ちはわかるわ。ツェリもそうだったけど、私もお気に入りのスカーフをやられたの。焼き鳥にしてやろうかと沸々と怒りがこみ上げたわ。」
「美味しくないよ。」
「無駄な殺生はしない主義よ。…!」
「リーサちゃん!」
ジオルクが、リーサを引き寄せる。
何の意図があってかは知らないが、複数の鳩が、此方に向かってきた。餌が欲しいのか、人馴れしていてる。動けないリーサは、ジオルクにしがみつく。
「餌はないわ。退きなさい。」
カイヤがシッシと追い払うが、慣れてるのか、飛ぶだけで、去らない。
そして、その中の二羽が、リーサに近寄る。嫌だとその場で、足で地団駄を踏むように、威嚇。
だが、弄ぶのか、鳩は去らず、近寄る。
たぶん、リーサが鳩より弱いと、鳩が認識したのかも知れない。
弱肉強食。弱いものから奪うという言葉はあるが、正に、この鳩二羽に関しては、リーサから強奪する気なのだろう。
正に飛んで近づく。イヤーと叫ぶリーサ。
しかし、鳩もまだまだである。若輩者だろうか。
そんなことを許すようなカイヤとジオルクではない。カイヤは、不愉快であった。
「やっぱり、焼き鳥にしてしまいましょうか。不愉快だわ。」
ジオルクが前に立って守る。カイヤは、不愉快だとばかりに、魔法で鳩を捕獲。
「忌々しいわ。その小さな脳に焼き付けなさい。私に逆らうなんて、何様なの?」
カイヤは、お気に入りのマニュキュアをつけた綺麗な指で、鳩二羽の頭を掴む。
「今すぐ、去らないと、その頭を捻るわ?」
カイヤの殺気にあてられた鳩二羽は、急いで飛び立つ。やーと叫ぶリーサに大丈夫だと宥める。
「手が洗いたいわ。…近くのカフェに行きましょう?確か、あったはず。」
「母さん。なにも鳩の頭を掴まなくても…。」
「だって、生意気だから…リーサ。いくわよ!気分を晴らしにね!」
「うん…。」
鳩にいじめられたリーサはしょげながらも、ついていく。




「鳩は平和な象徴じゃない…!」
「人間が勝手に決めたカテゴリーよ。鳩は悪くないわよ。」
「大丈夫?リーサちゃん。」
カフェで癒しタイム。
後日、聞いたツェリはあり得ないわと震えていた。
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