小さなベイビー、大きな野望

春子

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捕獲

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ゴゴゴ…

怒れる母親は、誰にも口を挟めない。
捕獲されたオスカーが、いつもの如く、ふてぶてしいが。

「オスカー!あなた、わかってるわね!よくもうちのベイビーたちに、転移魔法なんて、かけて!」
「あれは、あいつらを飛ばすために、設置した訳じゃあねーよ。てゆーか、引っ掛かったのは、事故だ。」
椅子に縛り付けられてるオスカーは、淡々と話す。
フィルは、気にしない。
「何を飛ばしたいかなんて、そもそも、関係がないのよ!!私のベイビーたちを巻き込んだのが、許せないの!どこの世界に!子供に転移魔法なんてかけるバカがいるのよ!」
「回収したとばかり、思っていた残骸だ。ライオネルの所でよかったじゃないか。」
ブチブチ…!
フィルの怒りは、収まらない。

「オスカーは、なんで、おばちゃんを怒らすことばかりしか言わないの?おバカなの?」
「私なら、逃げ出したいわ。オスカーはね。お母様とフィルのダブル説教すら、まともに受けないのよ?」
「…。」
祖母とフィルのダブル説教なんて、リーサからしたら、恐怖である。
「ねえねえ。まま、ノアのお兄ちゃんたちの顔が、怖いよ!」
「可愛いノアが危険に晒されたものね。あらあら、フランの兄達まで来ちゃったの。穏便には済まされないわね。あのバカも、少しは、懲りるでしょう。多分…ね?」
フィルによる猛追撃を受けてるが、まともに受け取らない。


「あなた、本当にバカなんじゃないの?アルコールで頭がやられたのかしら?」
「バカ言え。…お前、よく来れたな?」
「そうね。お兄様が来ないうちに、話すとするわ。あなた、何を探ってるの?」
本気を出せば、逃げ出せる状況下だ。
オスカーは、類いまれなる魔力と知識に、性格が加味しなければ、立派な腕利きの魔法使いだが、やること成すこと、常人には、理解できない。
無精髭をこさえてるオスカーは、大人の男で、危ない男が好きな女性からは、特に人気。何故…モテるのかは、ツェリにはわからない。
「好奇心は猫をも殺すぞ…ツェツリーエ。」
「あらやだ。私が気にしてるのは、あなたが野垂れ死のうが、なんだろうが、気にしないけど、うちのリーサを巻き込まないでほしいのよ?あなた、事故だと言うけど、確かに、回収忘れもあったでしょうけど、は、よく、四人が出かける場所だわ。いつ、引っ掛かっても、おかしくないもの。あなた、リーサを実験に付き合わせたわね?誤算は、リーサ以外のあの三人まで、転移されたことかしら?」
転移魔法は貴重で複雑な魔法の一つ。
魔法陣は複雑な展開図が必要で、一介の魔法使いには無理だ。
しかも、あの魔法陣にはオリジナルが入っていた。
複数を転移させることが出来るかの実験もあったろう。今回はうまくいった。いってなければ、大変な大事故。
何処に飛ばされたかわからない土地に、飛ばされるか、あるいは、五体満足でいられたか。
「成功してよかったわね?でも、一発、ぶん殴るわ。」
「殴る気満々の癖に今さらだな。」
「うるさいわ。」
バシーン。
ツェリは殴った手のひらを見る。
「慣れないことは…するもんじゃないな?」
「うるさいわ。…あなたのせいで、手のひらが痛いわ!お兄様の説教には助けてあげないから!」
ふんとツェリは出ていく。


「あ!まま。…?手、どうかしたの?」
「なんでもないわ?…フィルは何をしてるの?」
「イライラを発散するには、パンをつくるって。小麦粉を練ってる。みんな、お泊まりだって!やったあ。」
「リーサ、フィルの顔を見てみなさい。あれは、オスカーをヤル気満々だわ。」
他三名が、各々、好きなパンを伝えている。そこだけがほのぼのしており、息子たちは、母の怒りに触れないように、遠巻き。
コルルが痛ましそうに、甲斐甲斐しく、フィルの助手を務め、アンネが三人の好きなパンのアンケートを取ってる。
ノアとフランの兄たちは、オスカーへの制裁の話をしていて、物騒。
「おばちゃんのパン、楽しみだね。」
「ままは、たまにあなたの呑気さが、羨ましいわ。」
ツェリは肩をすくめる。
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