小さなベイビー、大きな野望

お迎え参上

ツェリはいたく、ご立腹。
長い脚を組み、誰よりも、不満げ。
巻き込まれたライオネルにとっては、早く連れていけと催促する。
｢何故…デヴァイスなの？お兄様がいいわ。」
｢マルクス様の事情をお知りになりながら、そんな発言は、やめたほうがいいじゃないですかね…イテテ。ちょい。リーサ様。空気をお読みになってください。」
｢やい。デヴァイス。おじちゃんはどこなの？」
｢残念でしたー。お迎えは俺でーす！ちょっとリーサ様。迂闊すぎませんかね？なんで、転移魔法をかけられて、気づきませんかね？」
いらっ。リーサはまだ子供であり、転移魔法に気づけるわけない。しかも仕掛けたのは、あのオスカーだ。性格は兎も角、腕のある魔法使いだ。
ブチブチ。
完全なる被害者であるリーサに、デヴァイスはひどい。
｢おじちゃんに言いつけてやる！デヴァイスがリーサをいじめたって言ってやる！」
｢残念でした！そんな手には、かかりませんよ。」
｢フランツおじちゃんに言いつけてやる！｣
｢ちょっと。それは！笑えない…！」
フランツなら遠慮なく、デヴァイスに手を出す。
｢ねーねー。ツェリおばちゃん、あのさ、フィルおばちゃんはどうしたの？」
｢そうね。多分家だわ。」
ツェリは家にいた甥たちの頑張り次第で、フィルは、抑えられてる筈。
｢あのね？お外が騒がしいよ？」
｢アルミンの耳にも聞こえる？困ったわ…席を外したいわ？」
｢え？嘘だろ？ちょいー…！」
｢…おばちゃん？」
ピタッと止まるリーサ。センサーに引っ掛かった。
バンッ。
どこの世界も母親とは強いものだ。例え、そこが、誰もが恐れるようなギャングのボスの根城であろうと、怒れる母の持つオーラは、口に挟めない、尋常でない空気感。
｢オスカーは何処なの！？」
｢…落ち着いてちょうだい。フィル。」
｢毎度毎度…！今回は絶対許さないわ…！！」
リーサは、咄嗟に、デヴァイスを盾にした。我が身は可愛い。
｢フィルおばちゃん、一人できたの？…あ！リフとロクサスだあ。」
母を止められなかった哀れな息子たち。
フランとノアは、帰る準備をしている。
アルミンは、呑気に手を振ってる。
｢フィル様。お怒りはごもっともですが、落ち着いてください。あなたが来ていい場所では無いんですよ？」
｢デヴァイス！退きなさい！ライオネル…！オスカーは何処なの！」
｢隠してないわ。こっちこそ、探してるわ！」
｢もう、フィルをもう少し、粘って、家にいさせないと、困るわ。」
｢ツェリおば様。無茶を言わないで…マーベリック…。」
リフは気づいた。父の側近のマーベリックだ。
｢皆々様。お迎えに上がりました。ライオネル様。あの男を確保致しました。部下のクラスドルもいますが、同行なさいますか？｣
｢捕まえたか。」
｢はい。」
｢ライオネル？先に私に会わせてくれるわね？」
｢お前の旦那が良しとするか。」
ライオネルはビルを呼ぶ。直ぐにジャケットを羽織らす。


｢おばちゃん。お怒り、静まるかな？」
｢ンー。お怒りだもんね？」
｢オスカー、パチーンってされるんじゃないの？」
｢お説教？」
四人は、離れたところで、会議中。


｢私の出る幕はあるかしら？」
｢お願いだから大人しくしてて。」
甥たちの願いよりも、ツェリは、やり返したい気分で一杯である。