小さなベイビー、大きな野望

春子

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色町の女たち(2)

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マダムの娼館゙オーム"
オームの従業員たちは、大騒ぎ。
ハルベルの小さなお姫様がニコニコしながら、呑気にクーガいる?と聞いてるのだ。
「お馬鹿。アンタ、何してるの!?」
オームの従業員たちを束ねるママがリーサに立ち向かう。
「今はね。アンタがノコノコ、来ていい事態じゃないんだよ!アンタの大好きなおじさまが、知ったら、ああ!恐ろしい!」
「おじちゃんは怖くない!!」
「違うわ!アンタをここに連れてきたヤツは誰だ!…ネフェル。」
「はーい。」
にっこり。ネフェルがリーサの背後から、悠然と現れる。




リーサは、スペンサーから、吹き込み式ビー玉を貰い、研究部屋で吹き込んだ。ヨシッ。
後は、色町にいく方法を考えなきゃ。
リーサは一人での外出を認められてない。
しかも今は、マルクスが、不要不急の外出をしないように、家族に言っている。元々、行く方法が、思い付かない。
母も外出禁止を言い渡され、家にいるのだ。
つまらないわと言いつつ、兄の言うことに従ってる。
ままにバレたら、計画は頓挫する。
どうしようかな。
廊下をぽてぽて、歩いてると、背後から、長い腕が回って来た。ひょいと抱き上げられる。
「…ネフィ?」
「何してるの?リーサ??」
「あれ?ロクサスと一緒にいるんじゃないの?」
「やだな。四六時中一緒ってわけじゃないんだから。何をもってるの?」
「ネフィ。笑顔がくろーい。」
「ひどーい。」
クスクス。


クーガが慌ててやって来た。
「リーサ!!」
「クーガ!!これ、渡しに来たの!お姉ちゃんにあげて。」
「?」
クーガは、小さな手のひらに乗せられたビー玉を見つめる。クーガの後ろには兄貴分のエイブラがついてきてる。
「エイブラにもままに渡して。あげる。」
「これ、なんだ?」
「お守りだよ。なにかあった時の。」
ニコニコ。
「クーガ。」
エルザがやって来た。ストロベリーブロンドのフワフワした髪に、綺麗な翡翠の瞳。クーガの髪と瞳そっくり。
「これ、身につけるといいよ。きっと守ってくれる。゙腰抜けチキンヤロー"から。」
「わあ。リーサ。口悪い。誰に教わったの?」
「ネフィ!!」
キリッ。お口チャックと口を塞がれる。
ンー。リーサは何とか、逃れ、話す。
「腰抜けチキンヤローは、それには勝てない。」
「?」
「ちょいと、何の話だい?」
ママがとりあえず、中に入れてくれる。


クーガは、リーサが嘘をつかないことを知ってる。ちょっと困った部分はあるが、いいこで、自分の為に来てくれた、あれは何なのか、リーサはこっそり、耳打ちしてくれた。必ず、姉に持ってるようにいった。半信半疑のエルザだが、わかったとうなずく。
「普通にしていても、綺麗なビー玉ね。」
エルザは落とさないように、無くさないように、小袋に入れ、ポッケに入れる。
リーサとネフェルは、その後、怒りに満ちたロクサスに捕まり、強制帰宅。
二人して、お説教コース。



それが役に立ったのは、二週間後の月もない、真っ暗な深夜。
その日、同じ系列店のヘルプに入っていた。こんな時だから、本来なら、警護がつく。
もちろん、見えない所で、いる。
が、今夜は決戦だった。
しきりにポッケに仕舞っていた小袋を握る。
エルザは、喉が渇いて、へばりつく。
足が縺れそうなほど、恐い。
まさか…まさかと。
背後から伝わる恐怖は、エルザの体を蝕む。
石畳をヒールで駆ける音が響く。
元いた場所では、ヤバイ奴等は、そう珍しくなく、恐い思いも何度かしたが、あれを見るのは、今までのその恐怖と何かが違う。
ハアハアと息が上がり、路地裏に逃げる。この辺りは入り組んだ路地があり、土地柄を知らないと迷い込む。
「…来ないでぇ!!」
必死に叫ぶ。
エルザを恐怖に陥れたのは、目の前にいる猟奇的な女。犯人は男だと考えられていたが、女だ。しかもか細い。ただ、眉毛もない、髪は乱れ髪。
首まである真っ黒な古びたワンピース。
異常性のある目付きで、何処を見てるのか、わからない、薬中毒者?
ただ、おどろおどろしい力を秘めている。
どんなに叫んでも、誰も気づかない。
警護してくれる人と引き離された。どんな手を使った?
「フフフ。」
「来ないでよ…。」
エルザは一般人で、弟は違い、学校に通ってない。ろくな力を持ってない。
体が拘束するように、体が強ばる。
「いやあああ!!」
精一杯、叫ぶ。
すると、ポッケから光る。
「いっけないんだあー!!いけないんだ!!!意地悪なヤツは、許さないぞ!!!」
ビー玉がひとりでに、小袋から出てきた。ピカーン。
「お前なんて怖くなーい!!」
「!!?」
あのこの声!!?
「食らえ!!゙嘆きの咆哮"」
゙グルルアアアア!!!!"
圧倒的威圧感。これは何の声なの?腹の底から、這い上がるその鳴き声。明らかにあの子じゃない。
辺りがひび割れしたように割れ、襲ってきた女は混乱している。
女が気絶するように、泡を吹いて、ガンっと後頭部を大打撃しながら、倒れた。
「エルザ!!!」
引き離された警護たちが、怪我をしながらも、追い付いてきた。
「大丈夫か!!」
「お前、エルザを先に館に連れてけ。」
「これが犯人…身柄確保だ。」
わらわらとやってくる関係者。
マダムの右腕であるガランがやって来た。
「怖い思いをさせた。悪かったな。マチルダも無事だ。」
「ほんとですか?」
誰が狙われるか、わからない状態で、危険も伴う釣りを志願したのは、マチルダとエルザだった。
ママは、大反対したが、恩返ししたくて、立候補したのだ。
「単独犯じゃなかった。マチルダを襲ったのは、男だった。膝擦りむいてるな。手当てしよう。立てるか?」
「腰が抜けて…。」
「担ぐぜ。」
エルザを抱き上げる。

「ああ…。建物にも地面も割れてんじゃないか。」
ガランは、被害が及んだ回りを見渡す。
あの咆哮は、術を破り、こちらまで届いた。
しかも、うち以外の釣りの連中も持っていたようで、方々から、咆哮が色町に響いた。
咆哮の威力の損害は今は、目を瞑ろう。
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