小さなベイビー、大きな野望

春子

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ゴーレム

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今日は、楽しい授業である。土魔法の基本の基本、ゴーレム作り。
土に魔力を練り入れ、形を成形していく。大抵は、人型。
「いいですか。みなさん。」
ゴットリーが手本を見せる。完璧なゴーレムだ。子供が怖がらないように、小さめに作ってあるが、魔力を込めれば、かなりの大きさを作るのも可能。
みんな、思い思いのゴーレムを作る。
「ちょっと難しいね。」
オフィーリアが言いながら、制作。手乗りサイズのゴーレムだ。
ジオルクも見本のように出来の良い形。
「できたあ。」
砂場の土いじりも大好きなリーサが喜びを露にする。どれどれと二人は見て、固まる。
ちょっと歪程度なら、そこら辺にたくさんあるし、問題ない。
が、リーサの作り出したゴーレムは違う。いや、形云々は奇抜でもなく、ちょっとでこぼこしてるだけで、よくできてる方だ。
それはあくまでも、形であり、ゴーレムの声だ。
唸り声を発してる。
「ヴォォォー。」
重低音のボイスで、この世の終わりを迎えるのかと言うほどの不気味さがある。
「…うん!上手だよ!」
「もう一体、作れる?」
「いいよ!」
誉められ、気分よくしたリーサは、もう一体作る。
成形してるときは、変わった様子は見受けられない。
にも関わらず…。
「できたあ。」
今度はさっきのより、大きめで、足の膝より、少し下の位置位のゴーレム。やはり…。
「ヴォォォー。」
なんで?
ニコニコしてるリーサにすごいよと二人は誉める。
「いつもながら、お前、才能ないな。呪い道具がそれ。」
ピクッ。リーサは振り向いた。やはり、お前か。
燃えるような真っ赤な髪と蜜色の瞳をした美少年だが、リーサにとっては、大したことはない。
隣のクラスのやつであり、今日は合同の授業だったため、同じ授業を受けている。奴の下には、ゴーレムがいる。
「黙れ。ルーシリア。」
「ルーシリア、やめて。いつも突っかかりにいくのは、良くないですよ!」
ルーシリアの保護者で、ルーシリアの両親から信頼を寄せられ、ルーシリアの面倒を見させられてる苦労人、コビト。癖っ毛の髪で人の良い顔つき、困惑しきりに、リーサに謝ってる。
「見てみろ。このゴーレム。呪いじゃないか。呻いてるぞ?」
「…個性があっていいんだよ。」
リーサの機嫌は、頗る悪い。ムッとしたリーサに釣られたのか、足元にいた二体のゴーレムが素早く動いて、顔面パンチを繰り広げる。ジオルクもオフィーリアも目を見開いた。
見事にクリーンヒット。
「ルーシリア!!」
「お前…。」
ルーシリアは殴られた頬を擦る。
そこに笑い声が響いた。
「あははは。ざまあないわね。ルーシリア。あははは。」
突如現れたのは、金髪碧眼で、いつもセットに余念がないらしいウエーブの自慢の髪を靡かせ、腰に手をやる少女。ちょっとぽっちゃりした体型。
「マリーウェザー。」
「リーサをからかうからよ。て言うより、あんた、サボるんじゃないよ!今日は日直でしょうが!」
マリーウェザーの背後には、マリーウェザーの背ぐらいある大きめのゴーレムがいる。かなり強そうな屈強のゴーレムだ。
「リーサ、あんた上手に出来たじゃないの!あたしのゴーレムはどう。」
「カッコいい!」
不機嫌を忘れて、マリーウェザーの背後にいるゴーレムに感動する。
「ふふ。でしょう?ねえ様たちのゴーレムに比べたらまだまだだけど!」
マリーウェザーの家名は、ミレアム。有名であり、ミレアム三姉妹の末っ子。ミレアム三姉妹に喧嘩を売るな、手を出すな、したならば、制裁の鉄拳の嵐が下るだろう。
「全く。あんた、目を離すと、サボるんだから!来な!コビト。甘やかしてもこいつは、なおらないよ。いっぺん、ぶん殴っても構わないから!あたしがおば様に許可、もらうから!」
「そんなことしたら仕返しが…。」
「あんた、コビトに感謝しな!ほらいくよ!」
「丁重に扱え。マリーウェザー。乱暴者が。」
「誰が乱暴者ですって?」
ピキッ。
マリーウェザー特技、鉄拳の制裁。
バコーン。良い音が響いた。


「でね!ルーシリアがね!マリーに殴られたの!プークスクス。」
夕飯で楽しく話すリーサにマリーの威力を知る従兄弟たちは微妙な顔をする。
ちなみに、ゴーレムを帰ってから製作した。
フィルは上手に出来たね!とほめ、マルクスは、凄い凄いと誉めちぎり。例え、唸ってようが、姪フィルターが掛かってる。
「ゴーレムが唸るなんて聞いたことない。」
「まあ、リーサだし、本人喜んでるから。」
従兄弟たちも驚いたが、それぞれ、ほめた。調子に乗って作りまくったのをサラトガが魔力使いすぎて、体力もたないよと諭され、やめた。
「意外と癖になる顔ね?」
ツェリは案外、気に入ったようだ。
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