小さなベイビー、大きな野望

春子

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甘えん坊集団集結

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ハルベル家のリビングに、賑やかしい声が響く。
アルミン、フラン、ノアがやって来た。それぞれの保護者も遊びに来た。
フィル特製のカスタードクリームのシュークリームが、並べられ、バラの紅茶も淹れられた。
「ツェリは気分を害されて、気分を直すために、遊びに行かせたわ。魔法省もツェリの気質を知ってるくせに、一々、刺激して。」
フィルはため息を溢す。
コルルは、内情を知ってるため、ツェリに同情的。
「アルミンも監視をされたの。アルミンは、異変に気づいてね。不安がって、ペットたちが警戒して、威嚇するわで、一時、心が休まらなかったわ。」
「魔法省の中でも派閥はありますから。穏健派と過激派と言うか…旦那様も裏でなんとかしていますが…。」
フランの家の使用人であり、フランの乳母、アンネ。ロッシュヴォークともハルベルとも親交のあるトラード家の家長であるフランの父親は、魔法省警備課所長。穏健派であり、今回、幼すぎる二人の幼児を監視をしたことを苦言を呈している。
「そうね。私もジャックに言ってみるわ。」
ノアの母は、夫に相談すると言う。オテステリアル家もまた名家。フランの母とノアの母親が姉妹。だから、フランとノアは母方の従兄弟同士。
保護者たちが真剣に話してる横で、頬をパンパンにさせ、シュークリームにかぶつりつく四人。
「ノアん家に悪戯ピンキーが出たの!にいさまのお部屋を荒らしたの!」
「え。悪戯ピンキーが出たの!?」
悪戯ピンキーとは、名の通り、悪戯大好きな妖精で、見た目は愛らしく、好印象を抱かれるが、仕出かすことがかわいくない。盗み行動はしないものの、ふらっと現れては、人目を盗んで、悪戯をする。時には、部屋をぐちゃぐちゃにしたり、ようやく出来上がった書類をぐちゃぐちゃにされ、落書きがされていたり。出来上がった料理は散らばって、落とされていたり。
悪戯ピンキーはいつ、出てくるかも、予想は出来ず、例え、術を展開しても、100%防げない。
悪戯ピンキーが出たら、諦めろと言うことばがあるほど、自然現象のようなものだ。
「悪戯ピンキーって可愛いよね。」
図鑑で見た悪戯ピンキーは、目がくりくりして、ぽてとした体に、透き通った羽が生えてる。
「でも、見た人はあんまりいないって!」
「素早いって聞いたよ!人の目には止まらない早さだって!」
興奮しながら、話す四人。クリームが顔にベタベタ。保護者たち、顔を拭いて、洗浄魔法をかける。落ち着きなさいと背中を擦る。
「悪戯ピンキーなんて、誰もいやがるわ。可愛くても、悪戯をされたら、困るもの。」
昔、洗濯物をおじゃんにされた恨み辛みがあるフィルは言う。
「そうよ。」
同意する他三名。デート直前に現れて、着ていく服を汚された恨みや趣味の魔道具を壊されたり、宝石のネックレスをバラバラにされたり。
悪戯ピンキーは逃げ足が早く、捕らえることが出来ないため、泣き寝入りが多い。
「えー。」
まだ被害を被ってない四人は、不満げ。
「ノア、イアンがかなりキレていたの。見てたでしょうに。あなたとの写真をバラバラにされて、家を破壊するの!ってぐらいに暴れていたわ。あの子、ノア大好きで、ブラコンだから。大事にしてた写真をビリビリに破られたの。ログはあるから、復元は出来るのが、不幸中の幸い。」
「イアンにいさま。かわいそうだった。」
「うちにまた出たら、悪戯ピンキーは、ただでは済まないと思う。」
ノアは、イアンがかわいそうだとうなずいたが、リーサの頭のなかには、般若顔のイアンがちらついた。
「嫌なとこをついてくるのよ。」
「そうよね。」
愚痴るそれぞれ。
「悪戯ピンキーって、クッキーが好きなんでしょ?」
「そうだよ。ジンジャークッキー。」
こそこそ話す四人。



「きゃあああ!!!」
ツェリの叫びになんだなんだと掛けていく。
唖然。ツェリの大事なクロゼットが荒らされていた。服はぐちゃぐちゃ、保管していた宝石は散らばり、ネックレスの紐が切れて、パールがあちこちに散乱。
「ツェリ?どうしたの?」
サラトガがツェリに聞いた。
「やられたわ!!!あの忌々しい悪戯ピンキーよ!!!見て頂戴!!!この鱗粉。」
悪戯ピンキーの鱗粉は、金色にキラキラ光り、悪戯ピンキーが悪戯完了すると、大量の鱗粉を落としていく。傍迷惑である。
「直るかな?ツェリ。この宝石は、直せるか、店に持っていこう。服もクリーニングに出して…ああ。こんなにやるとは。」
ツェリの大事な洋服などは、かなりの量で質も良く、きちんと、管理されてる。
「まま。悪戯ピンキー。どこ??」
「いないわ!」
「えー。」
虫かごを持ってきたリーサは、くまなく、探すが、見つからない。
「今度、見つけたら、燃やしてやるわ!」
「悪戯ピンキーがいない!」
「こら。リーサ。やめなさい。ままはショックを受けてるから。」
悪戯ピンキーを探すリーサをだっこ。
「悪戯ピンキーもツェリおば様のクロゼットに入らなくても…命知らずな。」
「死にたくないなら、入るな。」
従兄弟たちが遠巻きにしてる前で、リーサは、怒り狂うツェリに、捕まるよ!と宣言する。
「絶対、許さないわ!」
「ツェリ。鱗粉が着てる服までついてるよ。ちょうどいいから、お風呂に入ってきなよ。片付けておくね。この前、買った入浴剤を試してみて。出てくる頃合いに、ツェリの好きなお茶を淹れるね。」
「わかったわ。」
ツェリはサラトガの言う通りにした。サラトガは魔法でテキパキと散乱した服を片付けて、鱗粉がついた洋服は洗浄してから、別にしておく。散らばったパールなどを集め、小箱に入れる。
「悪戯ピンキー。ジンジャークッキー、食べる?」
「リーサが悪戯ピンキーに会ったら、鼻を噛まれるよ。悪戯ピンキーは子供の鼻を噛むんだよ。」
ピャッと鼻を隠す。


「悪戯ピンキーってお鼻を噛むんだって!」
「ほんと???」
情報共有に余念がない四人は、わいわいしながら、きょうもまた遊ぶ。
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