ショタ王子が第一王子なんて聞いてませんけど！？

5.帰還

6.最終話

「ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」

あれから1年半経った。アヒン殿下は無事、次期国王陛下就任を賜り、陛下の仕事の8割を引き継いでいる。俺には教師役として公爵家長女で第二王子ライアス殿下の婚約者のサーシャ様がつけられ、みっちりと教育を受け先月やっと先生の太鼓判を貰えた。その間聖女としての公務も蔑ろにしたくなかった為、度々遠征に行っては聖女の力を磨いた。今ではアヒン殿下の呪いにも大分効き目が出て、一度体を交われば2週間位は補給しなくても保てる様になったと思う…。何故思うなのかは、アヒン殿下が2週間も俺の体に触れられないのが耐えられなくて実際に測ったわけではないからだ。まあ、かく言う俺も耐えられないけど…
そうしてお互いに成長した姿を国王陛下に認められ晴れて今日、アヒン殿下と結婚する。

俺は真っ白な聖女服に身を包み、頭にベールを掛けられている。耳にはアヒン殿下を思わせる真っ青な石が付いたイヤリングを付けている。俺の横を歩くアヒン殿下は綺麗な金髪を後ろに流し真っ白なタキシードに身を包み、耳には真っ黒な石が付いたピアスをしている。いつもよりも神々しくて格好いい。この人が今日から俺の旦那さんなんて未だに信じ難い。

「ん？どうしたの三葉？」
「幸せすぎて泣きそうです」
「ふふ。困ったね。三葉の可愛い泣き顔は私だけの物なのに」
にこと笑われてしまえば、こちらも釣られてしまう。
主教様が待つ祭壇に着くと、主教様に微笑まれた。今日は拝まれないみたいで安心した。




「新郎アヒン　ジ　オモールは、ミツバ　　トウヨウを健やかなる時も、病める時も豊かな時も、貧しき時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ命のある限り真心を尽くすことを誓いますか？」
「はい。誓います」
主教様がこくりと頷く。
「新婦ミツバ　　トウヨウは、アヒン　ジ　オモールを健やかなる時も、病める時も豊かな時も、貧しき時も、あなたを愛し、あなたをなぐさめ命のある限り真心を尽くすことを誓いますか？」
「はい。誓います」
主教様はにこりと微笑み大きく頷いた。

「では指輪の交換を」
用意された指輪は、シンプルなデザインだがお互いの色の石が相手の指輪に嵌め込まれている。石は大きくない為、近くに行かないと見えない程度だ。毎日付けることを考えるとシンプルな方が機能性が高くて良い。
アヒン殿下が俺の指にゆっくりとはめてくれた。今迄に感じた事のない満足感が胸を満たしている。俺がアヒン殿下に指輪をつけると目を細め朗らかに笑ったアヒン殿下にまた胸を打たれてしまった。
だめだ。今日のアヒン殿下の色気が凄い。心臓がもたないよ…

「では誓いのキスを」
アヒン殿下がこくりと頷くと俺の顔に掛かっているベールをまくり後ろに流してくれた。そして綺麗な青色の目で見据えられる。

「今日から私の妻になるんだね」
「はい。アヒン殿下も今日から俺の夫です」
「ふふ。嬉しくて泣いてしまいそうだ」
「俺もです」
「これからも困難な事が私達を待ち望んでいるかもしれない。そんな時は1人で抱え込まず2人で話し合って支え合っていこう」
「はい。勿論です」
にこっと微笑んだ美しいアヒン殿下の顔が近づき俺の口に触れた。
今迄何度もキスしてきたが今日のキスが1番幸せだ。
唇が離れるとアヒン殿下が参列者の皆んなに体を向けた。

「ここに誓う。オモール国は、私と聖女三葉によってよりよい国にする。二度と戦争のない平和で皆が笑って過ごせる国にするとここで宣言する！！」
アヒン殿下が言い終わるや否や皆んなから歓声が上がった。スタンディングオーベーションまでしてる人もいる。
教会は暫く熱気が収まらず拍手が長い時間鳴り響いた。



突然異世界に来て聖女候補になり、粗相をして城から追い出され戦争に出兵するなど色々あった。きっとこれからも色んな苦難に見舞われるだろう。でも今は1人じゃない。新しく家族になったアヒン殿下と共に乗り越えこの国の為に生涯尽くす事を俺はひっそりと誓った。

end