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5.帰還
5.
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「私の事怖い?」
地上に出た後アヒン殿下が眉を寄せ少し怯えている様に聞いてきた。
「怖くはないです…それより…何も言い返せなかった俺が情けなくて…アヒン殿下の手を煩わせた事が辛いです…」
俺がしっかりしていればアヒン殿下があんな事しなくて済んだのだ。アヒン殿下は俺の為にやってくれた。殺すのなんて造作もない筈なのに手首だけで押さえてくれたのだろう。
「俺…強くなります…そしていっぱい勉強します…アヒン殿下の横にいるのは色仕掛けなんかじゃないという事を証明できる様になります。だから…だから…それまで俺の事待っててくれますか?」
今のままじゃダメだ。アヒン殿下を想う気持ちは誰にも負けない自信があるが、それ以外の取り柄と言えば聖女の力だけ。でも聖女の力もまだ未知数だしこれからもっと知っていかないと…
「勿論だよ。私も三葉の横にいて恥じない様な王になるつもりだ。それまで一緒に頑張ろう」
「はい!」
「あー取り込み中悪いが…ちょっと良いか?」
「どうしたの?ライアス?」
「あ、いや…聖女様と話したいんだ…」
「俺?…良いですよ?」
何故かチラとアヒン殿下の事を見るライアス殿下。
「私は溜まってる公務を片付けに行ってくるよ。何かあったら近くの侍女に声かけてね」
「分かりました。頑張って下さい!」
「うん。いってくる」
ちゅとおでこにキスを落とすとアヒン殿下は城の奥へと歩いて行った。
ライアス殿下と中庭に移動してきた。色取り取りの花が咲いており綺麗だ。吹き抜ける風が気持ち良い。
「アヒンと結婚するんだな…」
「はい。まー俺がしっかり勉強してからになりますけど…」
「そうか…ありがとう」
「え?」
何で俺お礼言われてるんだろ?
「アヒンがあんなに楽しそうなの久しぶりに見た」
いつもニコニコしてるけど、楽しそうなのかな?
「そうでしょうか?俺にはいまいち分かりません…でもいつも側で見ていた義弟のライアス殿下が言うならそうなんでしょうね…嬉しいです」
「やめろ…俺はあいつの義弟と言われたくない…」
「どうしてですか?」
あれ?お母さんは違うけどお父さんは一緒だよな?
ライアス殿下の悲痛な顔に何か思いを隠しているのが分かる。
「それって…ライアス殿下がアヒン殿下を避けてる事と関係ありますか?」
「っ!…気づいてたのか…」
「最初は俺と美優さんみたいに単純に仲が悪いのかと思いました。でもアヒン殿下は特に怒ってる様子もありませんし寧ろ寂しそうです。なのでライアス殿下が避けてるのかなと…」
罰が悪そうな顔をする。
「俺はアヒンの側にいたらいけないんだ…」
「どうしてですか?」
「お前、アヒンから呪いの原因聞いたんだろ?」
「聞きました」
ライアス殿下のお母さんが、アヒン殿下のお母さんとアヒン殿下を呪ったという話だろう。
「俺はそんな女が産んだ子だ。誰だって呪いを掛けた女の息子と仲良くしたくねーだろ?」
「それって直接アヒン殿下に聞いたんですか?」
「聞かなくても分かる」
「ライアス殿下は全然分かってませんよ」
「なっ!お前に何が分かる!」
俺の物言いにムカついたのかライアス殿下が大声を出す。何事かと遠目から庭師がこちらを見ているのを感じる。
「ライアス殿下の葛藤は全く分かりません。でも…勝手にアヒン殿下の事見くびらないで下さい」
「見くびる?」
「はい。俺の好きな人は、そんな事でライアス殿下を恨みません。そんな事では立ち止まりません」
「そんな事…?今も呪いに苦しんでるんだぞ?」
「はい。残念ながら呪いを掛けたのはライアス殿下のお母さんです。そしてそんな方の血を引いているから罪悪感があると言うライアス殿下の言い分も分かります。でも、ライアス殿下に流れている血はお母さんだけの物じゃありません。アヒン殿下と同じ国王陛下の血が流れています。だから貴方達は立派な兄弟です。そして一緒に育った家族です」
「だから何だよ?」
「だから1人で悩む必要はありません。1人で突っ走る必要はないんです。どうして家族を避けるんですか?」
「でも…」
「でもじゃありません!!」
俺の大声にまたまた庭師が心配そうに見ているのが分かる。
「今すぐアヒン殿下の元に行って話を聞きましょう!ちょっとそこの庭師の人!アヒン殿下の元へ案内して下さい!!」
「はっ?お前いきなり!」
「いいから行きますよ!いつまでも逃げるなんて男としてオモール国、第二王子として恥ずかしくないんですか!?それに約束しましたよね?何でもするって。だから黙ってついて来て下さい!」
俺はグダグダしてるライアス殿下の手を掴み遠くで様子を見ていた庭師に詰め寄って案内をお願いした。
「やあ。随分早く再開出来て嬉しいよ」
勢いよく部屋に突入した俺とライアス殿下に一瞬目を見開いたが直ぐに冷静になったアヒン殿下が部屋に入れてくれた。
「アヒン殿下、お仕事中申し訳ありません!!今お話いいですか?」
「構わないよ。おいで」
ソファに促され俺はアヒン殿下の隣に、ライアス殿下が目の前に座った。
「それで?話って?」
ニコニコとアヒン殿下が俺の髪をすきながら話を促してくる。
「実は俺じゃなくてライアス殿下からお話があるんです」
ライアス殿下が、凄い睨んで来ているのが視界の端から伝わってくる。
「ライアスが?どうしたの?」
ん?とライアス殿下の方へ体を向ける。
「あーなんだ…その…こいつ…聖女様と呪いの話になってな…」
歯切れが悪いライアス殿下の話を嫌な顔一つせずアヒン殿下が真剣に聞いている。
「怒られた」
「ん?」
「ちょ!話飛びすぎです!ライアス殿下!!」
びっくりしてテーブル越しにライアス殿下に詰め寄る。そんな俺をはしたないと思ったのかアヒン殿下に左腕を引っ張られソファに戻る。そしてまた席を立たない様になのか腰をぐっと抑えられた。
「すまん。脈絡がなかった。あーその…アヒンが俺の事恨んでないって話になって…でも俺は「恨んでないよ」…はっ?」
「だから恨んでないよ?」
「な訳ねーだろ!?俺はあいつの息子で血が繋がってんだぞ!?」
「くす。なんでライアスに怒られるのかは分からないけど、私は呪いの事でライアスを恨んだ事は一度もないよ」
「嘘だろ…?」
ライアス殿下が信じられないといった表情でアヒン殿下を見る。
「話ってそれだけ?」
「それだけって、何で恨んでないんだよ!?」
「逆に何で恨む必要があるの?」
首を傾げる殿下は本当に疑問に思っている様だ。
「確かに私の母を殺して私を殺そうとしたのは君の母君だ。でもライアスは、それに加担した訳じゃないでしょ?それとも私を殺そうと思った事あるの?」
「ある訳ないだろ!!」
「じゃあ私がライアスを恨む必要はないよね?」
「嘘だろ…じゃあ俺は今迄…」
頭を抱えて項垂れるライアス殿下。相当衝撃的だったのかもしれない。
「もしかして私を避けてたのってそれだったの?」
「…そーだよ…」
ちょっと不貞腐れた様に言うライアス殿下。
「私が君の母君を奪ってしまったからだと思ってたよ」
「…いや、俺の母は悪事を働いてそれ相応の罰を受けただけだ。お前を恨むのは筋が違う」
ライアス殿下気づいてないのかな?それが自分にも当てはまるって言う事を。
「そっか。ならもう避ける必要はないよね?昔の様にアヒン兄ちゃんって呼んで欲しいな」
「なっ言うわけないだろ!?」
「何で?恥ずかしいの?」
「恥ずかしいとかじゃなくて…俺達はもう大人だから…その…」
ライアス殿下気づいてないのかな?アヒン殿下に揶揄われてるの…
「それじゃあ、俺は戻る」
少し3人でお茶会をした後、ライアス殿下が立ち上がった。
「うん。またお茶に付き合ってよ」
「……分かった」
少し照れてるライアス殿下が可愛らしい。
「あ、俺も戻りますね。お邪魔してすいませんでした」
アヒン殿下はお仕事中なのだ。勢いよく来たけどこれ普通に邪魔してるよね?俺も部屋に戻ろう。
「三葉は、話があるから残ってくれるかな?」
「え、でも…?」
俺邪魔だよね?
でも、アヒン殿下が俺の左手首を掴んで離さない。何か笑顔が怖い。ここは従った方が良さそうだ。
ライアス殿下を2人で見送り、何の話だろうとドキドキしているとアヒン殿下がお茶を入れ直してくれた。
「あの…怒ってますか?」
「うん」
やっぱり!!俺が仕事の邪魔したから怒ってるんだ…
「盛大に勘違いしてそうだから言うけど、三葉は誰の婚約者なのかな?」
「それは…アヒン殿下の婚約者です…」
恥ずかしくて若干俯き加減に答える。それが気に食わなかったのかおいでと言われ殿下の膝に乗せられる。
「私の婚約者だよね?」
「ひゃ…そうです」
後ろから耳を嵌まれながら再確認される。
「どうしてライアスの手を握っていたのかな?」
「あ、あれは勢い余って!」
そう言えばグダグダしてるライアス殿下にヤキモキして手を掴んだまま部屋に突入したんだった。アヒン殿下の婚約者として恥ずかしくない様になるって言ったばかりなのに情けない。
「あ、すいません。皇族の体に不用意に触るなんて…」
はあーと後ろで大きい溜息をはかれる。
「皇族だけじゃないよ。他人にあまり触らないで欲しいな」
「ごめんなさい………いぁっ!」
乳首をいきなりきゅと摘まれ体が大きく跳ねる。
「三葉が私以外の者に触れているのを見ると嫉妬でどうにかなりそうだよ」
「え…嫉妬…?」
婚約者として恥ずかしい行いに怒ってたんじゃないの?
「こうやって…場所も関係なく私の物だという証を付けたくなる」
「いあっ!!」
首を思いっきり齧られる。昨日齧られた所の跡もまだ消えてないのに更に跡を付けられる。
「三葉、私のこの憤りを受け止めてくれる?」
「あぁ…はぃ…俺にアヒン殿下の気持ちを…ぶつけて下さい…」
「っ…」
上に着ていたシャツを破かれ釦が飛び散るのを遠目に見ながらソファに押し倒された。そのまま殿下の気持ちが落ち着くまで殿下の強欲を受け止め続けた。
地上に出た後アヒン殿下が眉を寄せ少し怯えている様に聞いてきた。
「怖くはないです…それより…何も言い返せなかった俺が情けなくて…アヒン殿下の手を煩わせた事が辛いです…」
俺がしっかりしていればアヒン殿下があんな事しなくて済んだのだ。アヒン殿下は俺の為にやってくれた。殺すのなんて造作もない筈なのに手首だけで押さえてくれたのだろう。
「俺…強くなります…そしていっぱい勉強します…アヒン殿下の横にいるのは色仕掛けなんかじゃないという事を証明できる様になります。だから…だから…それまで俺の事待っててくれますか?」
今のままじゃダメだ。アヒン殿下を想う気持ちは誰にも負けない自信があるが、それ以外の取り柄と言えば聖女の力だけ。でも聖女の力もまだ未知数だしこれからもっと知っていかないと…
「勿論だよ。私も三葉の横にいて恥じない様な王になるつもりだ。それまで一緒に頑張ろう」
「はい!」
「あー取り込み中悪いが…ちょっと良いか?」
「どうしたの?ライアス?」
「あ、いや…聖女様と話したいんだ…」
「俺?…良いですよ?」
何故かチラとアヒン殿下の事を見るライアス殿下。
「私は溜まってる公務を片付けに行ってくるよ。何かあったら近くの侍女に声かけてね」
「分かりました。頑張って下さい!」
「うん。いってくる」
ちゅとおでこにキスを落とすとアヒン殿下は城の奥へと歩いて行った。
ライアス殿下と中庭に移動してきた。色取り取りの花が咲いており綺麗だ。吹き抜ける風が気持ち良い。
「アヒンと結婚するんだな…」
「はい。まー俺がしっかり勉強してからになりますけど…」
「そうか…ありがとう」
「え?」
何で俺お礼言われてるんだろ?
「アヒンがあんなに楽しそうなの久しぶりに見た」
いつもニコニコしてるけど、楽しそうなのかな?
「そうでしょうか?俺にはいまいち分かりません…でもいつも側で見ていた義弟のライアス殿下が言うならそうなんでしょうね…嬉しいです」
「やめろ…俺はあいつの義弟と言われたくない…」
「どうしてですか?」
あれ?お母さんは違うけどお父さんは一緒だよな?
ライアス殿下の悲痛な顔に何か思いを隠しているのが分かる。
「それって…ライアス殿下がアヒン殿下を避けてる事と関係ありますか?」
「っ!…気づいてたのか…」
「最初は俺と美優さんみたいに単純に仲が悪いのかと思いました。でもアヒン殿下は特に怒ってる様子もありませんし寧ろ寂しそうです。なのでライアス殿下が避けてるのかなと…」
罰が悪そうな顔をする。
「俺はアヒンの側にいたらいけないんだ…」
「どうしてですか?」
「お前、アヒンから呪いの原因聞いたんだろ?」
「聞きました」
ライアス殿下のお母さんが、アヒン殿下のお母さんとアヒン殿下を呪ったという話だろう。
「俺はそんな女が産んだ子だ。誰だって呪いを掛けた女の息子と仲良くしたくねーだろ?」
「それって直接アヒン殿下に聞いたんですか?」
「聞かなくても分かる」
「ライアス殿下は全然分かってませんよ」
「なっ!お前に何が分かる!」
俺の物言いにムカついたのかライアス殿下が大声を出す。何事かと遠目から庭師がこちらを見ているのを感じる。
「ライアス殿下の葛藤は全く分かりません。でも…勝手にアヒン殿下の事見くびらないで下さい」
「見くびる?」
「はい。俺の好きな人は、そんな事でライアス殿下を恨みません。そんな事では立ち止まりません」
「そんな事…?今も呪いに苦しんでるんだぞ?」
「はい。残念ながら呪いを掛けたのはライアス殿下のお母さんです。そしてそんな方の血を引いているから罪悪感があると言うライアス殿下の言い分も分かります。でも、ライアス殿下に流れている血はお母さんだけの物じゃありません。アヒン殿下と同じ国王陛下の血が流れています。だから貴方達は立派な兄弟です。そして一緒に育った家族です」
「だから何だよ?」
「だから1人で悩む必要はありません。1人で突っ走る必要はないんです。どうして家族を避けるんですか?」
「でも…」
「でもじゃありません!!」
俺の大声にまたまた庭師が心配そうに見ているのが分かる。
「今すぐアヒン殿下の元に行って話を聞きましょう!ちょっとそこの庭師の人!アヒン殿下の元へ案内して下さい!!」
「はっ?お前いきなり!」
「いいから行きますよ!いつまでも逃げるなんて男としてオモール国、第二王子として恥ずかしくないんですか!?それに約束しましたよね?何でもするって。だから黙ってついて来て下さい!」
俺はグダグダしてるライアス殿下の手を掴み遠くで様子を見ていた庭師に詰め寄って案内をお願いした。
「やあ。随分早く再開出来て嬉しいよ」
勢いよく部屋に突入した俺とライアス殿下に一瞬目を見開いたが直ぐに冷静になったアヒン殿下が部屋に入れてくれた。
「アヒン殿下、お仕事中申し訳ありません!!今お話いいですか?」
「構わないよ。おいで」
ソファに促され俺はアヒン殿下の隣に、ライアス殿下が目の前に座った。
「それで?話って?」
ニコニコとアヒン殿下が俺の髪をすきながら話を促してくる。
「実は俺じゃなくてライアス殿下からお話があるんです」
ライアス殿下が、凄い睨んで来ているのが視界の端から伝わってくる。
「ライアスが?どうしたの?」
ん?とライアス殿下の方へ体を向ける。
「あーなんだ…その…こいつ…聖女様と呪いの話になってな…」
歯切れが悪いライアス殿下の話を嫌な顔一つせずアヒン殿下が真剣に聞いている。
「怒られた」
「ん?」
「ちょ!話飛びすぎです!ライアス殿下!!」
びっくりしてテーブル越しにライアス殿下に詰め寄る。そんな俺をはしたないと思ったのかアヒン殿下に左腕を引っ張られソファに戻る。そしてまた席を立たない様になのか腰をぐっと抑えられた。
「すまん。脈絡がなかった。あーその…アヒンが俺の事恨んでないって話になって…でも俺は「恨んでないよ」…はっ?」
「だから恨んでないよ?」
「な訳ねーだろ!?俺はあいつの息子で血が繋がってんだぞ!?」
「くす。なんでライアスに怒られるのかは分からないけど、私は呪いの事でライアスを恨んだ事は一度もないよ」
「嘘だろ…?」
ライアス殿下が信じられないといった表情でアヒン殿下を見る。
「話ってそれだけ?」
「それだけって、何で恨んでないんだよ!?」
「逆に何で恨む必要があるの?」
首を傾げる殿下は本当に疑問に思っている様だ。
「確かに私の母を殺して私を殺そうとしたのは君の母君だ。でもライアスは、それに加担した訳じゃないでしょ?それとも私を殺そうと思った事あるの?」
「ある訳ないだろ!!」
「じゃあ私がライアスを恨む必要はないよね?」
「嘘だろ…じゃあ俺は今迄…」
頭を抱えて項垂れるライアス殿下。相当衝撃的だったのかもしれない。
「もしかして私を避けてたのってそれだったの?」
「…そーだよ…」
ちょっと不貞腐れた様に言うライアス殿下。
「私が君の母君を奪ってしまったからだと思ってたよ」
「…いや、俺の母は悪事を働いてそれ相応の罰を受けただけだ。お前を恨むのは筋が違う」
ライアス殿下気づいてないのかな?それが自分にも当てはまるって言う事を。
「そっか。ならもう避ける必要はないよね?昔の様にアヒン兄ちゃんって呼んで欲しいな」
「なっ言うわけないだろ!?」
「何で?恥ずかしいの?」
「恥ずかしいとかじゃなくて…俺達はもう大人だから…その…」
ライアス殿下気づいてないのかな?アヒン殿下に揶揄われてるの…
「それじゃあ、俺は戻る」
少し3人でお茶会をした後、ライアス殿下が立ち上がった。
「うん。またお茶に付き合ってよ」
「……分かった」
少し照れてるライアス殿下が可愛らしい。
「あ、俺も戻りますね。お邪魔してすいませんでした」
アヒン殿下はお仕事中なのだ。勢いよく来たけどこれ普通に邪魔してるよね?俺も部屋に戻ろう。
「三葉は、話があるから残ってくれるかな?」
「え、でも…?」
俺邪魔だよね?
でも、アヒン殿下が俺の左手首を掴んで離さない。何か笑顔が怖い。ここは従った方が良さそうだ。
ライアス殿下を2人で見送り、何の話だろうとドキドキしているとアヒン殿下がお茶を入れ直してくれた。
「あの…怒ってますか?」
「うん」
やっぱり!!俺が仕事の邪魔したから怒ってるんだ…
「盛大に勘違いしてそうだから言うけど、三葉は誰の婚約者なのかな?」
「それは…アヒン殿下の婚約者です…」
恥ずかしくて若干俯き加減に答える。それが気に食わなかったのかおいでと言われ殿下の膝に乗せられる。
「私の婚約者だよね?」
「ひゃ…そうです」
後ろから耳を嵌まれながら再確認される。
「どうしてライアスの手を握っていたのかな?」
「あ、あれは勢い余って!」
そう言えばグダグダしてるライアス殿下にヤキモキして手を掴んだまま部屋に突入したんだった。アヒン殿下の婚約者として恥ずかしくない様になるって言ったばかりなのに情けない。
「あ、すいません。皇族の体に不用意に触るなんて…」
はあーと後ろで大きい溜息をはかれる。
「皇族だけじゃないよ。他人にあまり触らないで欲しいな」
「ごめんなさい………いぁっ!」
乳首をいきなりきゅと摘まれ体が大きく跳ねる。
「三葉が私以外の者に触れているのを見ると嫉妬でどうにかなりそうだよ」
「え…嫉妬…?」
婚約者として恥ずかしい行いに怒ってたんじゃないの?
「こうやって…場所も関係なく私の物だという証を付けたくなる」
「いあっ!!」
首を思いっきり齧られる。昨日齧られた所の跡もまだ消えてないのに更に跡を付けられる。
「三葉、私のこの憤りを受け止めてくれる?」
「あぁ…はぃ…俺にアヒン殿下の気持ちを…ぶつけて下さい…」
「っ…」
上に着ていたシャツを破かれ釦が飛び散るのを遠目に見ながらソファに押し倒された。そのまま殿下の気持ちが落ち着くまで殿下の強欲を受け止め続けた。
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