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3.隣国戦争

17.

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(アヒン殿下サイド)

一向に戦況が進展しない事に指揮官達がイライラしている。それが兵達にも影響が出て統率に乱れが出始めた。
こちらは限られた兵士の数。対してあちらは圧倒的な兵士の数と武器、そして恐怖による完璧な統率力。この数日間よく耐えた方だろう。そろそろ増援が来ないと厳しい状況だ。私も無意識にため息を吐いた。

「殿下!このままでは押されてしまいます!どうするおつもりですか!?」
「これは殿下の責任問題では?」
まだ負けてもいないのに責任問題の話を出してくる指揮官に頭が痛くなる。あわよくば私に汚名を着せてライアスを次期皇帝に推したいのであろう。

「国境ギリギリで抑えていますが、時間の問題でしょう。王都からの増援はまだ来ないのでしょうか?」
「増援はまだ来ない。先行して5,000の兵がこちらに向かっているが着くのは5日後だろう」
「5日後…」
それまでここが持つかどうか怪しい。皆下を向いて頭を悩ませていた。

「私があちらの戦力を削って来よう」
「なっ!大将が前線に出てどうするんですか!?」
どよめきが走る。
「では私に匹敵する位魔術と武術に特化した者はいるか?」
「それは…」

皆口をつぐんだ。最高位の範囲攻撃が出来る私に敵う者などこの国にはごく僅かだ。増してや私程の魔力量を持っているのは更に限られて来るだろう。
簡単な話あちらの兵力が多いのであれば削ってしまえばいいのだ。

「伝令です!」
「なんだ!」
作戦本部のテントに先触れの兵が入って来た。
「敵が武装車で突っ込んで来ました!前衛の盾が破損しそこから兵が流れ混んで来ています!!」
「なにっ!?」
指揮官達が皆びっくりして立ち上がる。
「ハイセンはいるか!?」
「はっ!」

丁度救護テントから出てきたハイセンが作戦本部に駆け込んで来た。

「復帰直後で申し訳ないが、流れ込んで来た敵の排除を頼む」
「畏まりました!」
「私は武装車を排除してくる」
「っ…畏まりました」
ハイセンは敬礼すると私に続いてテントを出た。


浮遊魔法を起動し上空から現状の把握に努める。先触れの通り5台ほどの武装車が突っ込んで来て崩れた防衛線から兵達が流れ込んで来ていた。村の建物は破損し火事まで起きており言ってしまえば最悪の状況だ。
私は両手を広げ魔法陣を展開する。雷の範囲攻撃を起動し詠唱が終わると右腕を振り下ろした。魔法は無事発動し全ての武装車に落雷し車を突き抜け地面に迄大きな穴を開けた。ぷすぷすと黒い煙が立ち込めている。周りにいた兵士達もいくらか巻き込まれた。
魔法を起動した私に気づいた敵兵が私に向かって銃や矢を撃ってくるが全て魔法壁で弾き返す。そして次の魔法陣を起動する。私の魔法を起動するにあたり空が厚い雲で覆われる。先程まで晴れていたのに急に曇った空のせいで強い風が吹き始める。ビュービューと鳴る風に敵兵の進行速度が遅くなる。
魔法詠唱が終わり魔法を起動すると巨大な竜巻が現れた。それも3つ。巨大な竜巻は敵兵達を巻き込み暴れ狂う。人や馬が簡単に飛ばされていく。数分間暴れ狂った竜巻は役目を終えると厚い雲と共にどこかえ消えて行った。

「ふう。こんなもんかな」
消費魔力が激しい。三葉に補給してもらわないと今日は持たないかもしれない。このまま敵兵全軍を制覇出来れば良かったんだが5分の1程度しか駆除出来なかった。だがこれでこちらにも少し余裕が出来たであろう。あちらの進行が止まった。一度作戦本部に持ち帰って作戦を練り直すのであろう。有難い。
私は地上に降りると救護テントへと向かった。
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