ショタ王子が第一王子なんて聞いてませんけど！？

3.隣国戦争

7.

見送りに来ていた者達がわらわらとはけて行く。出兵する者達だけが広場に残り騎士が中央にそれを囲う様に300人の魔法使いが並んだ。俺とアヒン殿下は、中央に立つ。ホワイトは、呑気に俺の腕の中で寝ている。可愛い。

「転移魔法陣発動！！」
アヒン殿下のよく通る声で命令すると一斉に魔法使いが転移魔法を発動させた。足元が光り細い光が走り抜け魔法陣を描き始める。どんどん大きくなる魔法陣を見て心臓が早鐘を打つ。
大きな光に包まれながら遠くを見やると涙ぐむジュリーとスレーマンの姿を見つけた。その2人に思いっきり手を振っていってきます！と叫ぶと同時に体が浮遊感に包まれた。

目を一瞬瞑って開けてみると全く違う光景が広がっていた。
転移は成功したのだろうか？

「よし。転移成功だ。各人準備に取り掛かれ」

その疑問は殿下の凛々しい声で一掃された。騎士達が背中に抱えていた荷物を下ろしテントを組み始めた。中には近くに水を汲みに行く者、木を集めに行く者もいた。魔法使いはご飯の準備に取りかかる者、浮遊魔法でテントを組み立てる者などそれぞれの役割どおり皆テキパキと動いて行く。

「俺も手伝います」
「いや、あちらは人が足りているから三葉はテントで休むと良いよ」
「そんな事出来ません！」

ただでさえ正式な聖女ではない引け目があるのに1人だけテントで休むなんて恐れ多かった。

「では今回の三葉の役割を説明しよう。こっちにおいで」

いつの間にか出来ている立派なテントに連れてこられ中に入ると空間魔法が使われているのか中はすごい広かった。教会の俺の部屋よりも広い。大きなベッド、テーブル、ソファ、机、椅子、台所やトイレ、お風呂までついている。とても野営とは思えない。

「座って」
ソファに座ったアヒン殿下の横をポンポンされる。そこにホワイトを抱えたまま座った。流れる様に自然に腰に手が回される。

「明後日、北の国ノルマンドと対立するから今日と明日に掛けて近くの村人を避難させる。三葉は村人の避難が終わったら聖女の力の訓練をして欲しい」
「分かりました」
「戦が始まったら救護班で怪我人の治療に専念して貰う。私の治療は朝と昼と夜の3回お願いしたい。三葉から離れている間はこのアクセサリーに魔力を込めて欲しい」

首元から先端に石がついたネックレスを出し見せてくれる。これに魔力を込めて魔力切れを防ぐのだろう。

「分かりました」
「それと三葉が寝るテントは私と一緒のここだから」
「へっ？」
「ん？」

どうしたの？という風に首を傾げられる。嫌、何で俺がアヒン殿下と一緒のテントなんだ？それって色々とやばくないか？

「俺は大丈夫ですが…殿下は1人部屋じゃなくていいんですか？」
「私は構わないよ。三葉は1人部屋が良かった？」
「いや、相部屋で大丈夫です！ただ殿下と一緒というのが恐れ多い…というか…」
「何で？何回か一緒に寝たじゃない」
「そうですね…」

殿下の言う通り何度か一緒に寝ているのだ。何回か増えた所で罪は変わらないだろうと思い諦めた。

「よしじゃあ、そろそろテントもたった頃だろうし外に出よう」
「分かりました！」
「その前に…はい」
「ん？」

殿下が目を瞑って顔を近づけてきた。これはどう言う意味だろう？まさか、俺からキスしろって事だろうか？

「殿下？」
「早くして」
「…………」

ちゅと口を合わせすぐ様離れた。俺の顔は熱が集まり赤い。
「ふふ、さ、行こう」
殿下に腕を引かれ外へと出た。