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1.異世界召喚

6.

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スレーマンとジュリーの見事な連携であっという間にテーブルとお茶、お菓子が目の前に用意された。見た事がないお菓子もあったが見慣れたお菓子もあった。こちらも前の聖女の影響なのかもしれない。
目の前のお茶に口をつけるとちょうど良い熱さで飲みやすい。

「三葉には、お姉さんがいるんだね」
美優の話をどこかから聞いたのだろう。
「はい。血は繋がっていないのですが…」
「そう。私にも血が繋がっていない兄弟がいるから、同じだね」

赤髪王子のライアス殿下の事を言っているのだろう。2人ともイケメンだが確かに2人は似ていない。
少し悲しそうに言うアヒン殿下の表情から何かあるのかもしれないと思った。

「アヒン殿下の体調は生まれつき悪かったんですか?」
「生まれつきではないよ。ある日から段々体調が悪くなってね。今じゃ1人で歩くのもままならないんだ。私の事を可哀想と思うかい?」

隣に座るアヒン殿下が感情が読み取れない表情で見つめて来た。
なんだろう。可哀想と言ってはいけない気がする。

「いえ、殿下の成長に影響が出てるんじゃないかと心配です」
「私の成長?」
「はい!早寝早起きが成長の要ですからね!」
「ふふ。三葉は毎日良く眠れてそうだね」
一瞬固まったアヒン殿下だったが、直ぐ様いつもの天使の顔に戻った。
「はい!お陰様で快眠ですよ!あ!アヒン殿下お昼寝しませんか?」
「また突拍子もない事を言うね。三葉は。良いけどどこで寝るんだい?」
「ここです!この快適なお外だったら気持ち良く寝れるかもしれませんよ?さあ!俺の膝を使って下さい!」
両腿をパンパンと叩きここですよと合図を送る。
「三葉の足が疲れるんじゃないかい?」
「アヒン殿下の為なら大丈夫です!」
「寝ないと収まりそうにないね…では、お言葉に甘えて膝を借りても良いかい?」
「はい、どうぞ」

アヒン殿下は俺の膝に頭を乗せ寝転んだ。あ、これも不敬だったかとジュリー達を見たが特にお咎めはなさそうだった。寧ろ生暖かい視線を向けてくれていた。

「どうですか?枕の調子は?」
「うん。弾力があって良いね。よく寝れそう」
前の世界では帰宅部だった俺は体育でしか筋肉を酷使しておらず弛んでいるかもしれない。

「アヒン殿下は、どんな事をしている時が一番楽しいですか?」
「体を動かしている時かな」
アヒン殿下の頭を優しく撫でながらアヒン殿下の事について質問していく。
「殿下の好きな食べ物はなんですか?」
「基本的には何でも食べるよ。でも甘い物は少し苦手かな」

天使な見た目の割に甘い物は苦手なのか。それはそれでギャップが可愛い。
この後も質問を何個かして答えてもらっている内にアヒン殿下の反応がなくなった。どうやら寝てしまった様だ。寝顔も可愛い。
すーすーと寝ている様子に肩の荷が降りた気分になる。正直言って安心した。黒い隈を隠しきれていないアヒンの様子に夜も中々寝ていない事が伺えた。少しでも休んでくれればいいなと思って提案した昼寝だったが成功して良かった。
そう言えば殿下の病気は何なのだろうか?聞いても良いのかな?
折角寝たアヒンを起こさない様に今日も美しい庭園を眺めながらお茶を啜った。
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