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プロローグと序
盗賊少女Ⅱ
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少女がおっさんにボコられるちょっとだけ前の事。
クエストを引き受けた理源は、早速街の外に出る...前に市場で道中の楽しみにと何か食べ物を買おうとしていた。
旅にも遠足にも魔物退治にもおやつは必要である。理源はそう考えていた。
なんとなくで美味そうに熟れた赤い果物と菓子を買い、人混みを避けるため家屋の屋根に跳び登った。
他に何か良さそうなものはないかと真下の市場で売られている品物に目を配る。
店員らしき男の「盗っ人だ!通してくれ!」という声が何度も聞こえ、やがて諦めたのか引き返し始めた。
交差点を跳び越え、向こう側の屋根にまた降り立つ。
そして再び下を見下ろすと何やら円の空間ができている。
円の中には二人の人影。1人は大きな男、もう1人は男に比べてとても小さい。子供だろうか。
なにやら面白そうだ、そう思った理源はその円に向かって屋根から飛び降りた。
しかし着地場所がズレたようだ。
わざとズラしたのかもしれない。
理源が着地した場所は、大男の頭上だった。
「がっ!?」
予想外の方向からの衝撃に大男は地面に倒れる。
「あ、ごめん、悪気は無かった」
理源は顔の前で両手を合わせた。
周りを取り囲む市民からなんだなんだとざわめきが聞こえる。
蹴りを恐れて目を閉じていた少女が異変を感じおそるおそる眼を開けて顔を上げる。
「えっ」
自分を蹴り飛ばそうとした男が倒れていて、しかもまったく見たことのない長身の黒衣装の男がまるで最初からいたかのようにそこに立っていたのだ。
「なんかおもしれーことでもやってんのか?」
男が無邪気な少年のような表情と声で聞く。
しかし呆気にとられた人々は彼の問いに答えられなかった。
大男が頭を振って立ち上がる。
「てめぇ...どこのどいつだ」
ぶつけた箇所をさすりながら理源を睨む。
「ただの一般市民だ。そんな怒んないでくれよ、俺が悪かったから」
「ふざけんじゃねぇ!」
適当になだめようとした理源に激怒した大男が殴りかかる。
しかし大男の拳は理源の胴体を捉えなかった。
それどころか姿さえ見えない。
「あ?」
消えたのか?そう思った大男は辺り左右を見る。
しかしいない。
次の瞬間、突然膝に強い衝撃が加わった。
かくんっ、と大男の膝が崩れる。
不意をつかれた大男は膝をつき、後ろをばっ、と振り返った。
満面の笑みを浮かべた理源がいた。
「死ねぇええ!!」
虚仮にされてより血の気が増した大男が再び殴りかかる。
今度は姿は消えなかった。
しかしそこにいるはずなのに大男の拳は全く当たらない。
苛立った大男が一撃で仕留めようと右足を踏み込もうとしたその瞬間だった。
理源は全体重を乗せていた左足を蹴り上げた。
足を掬われた大男は空中で一回転し、ばたりと倒れた。
「やべ、逃げよ」
ついやってしまった。
正当防衛とはいえ、元はと言えば上からぶつかってきた自分が悪いのだ。
問題になる前にとっとと逃げてしまおう、そう思った理源は現場から離れようとした。
そういえば近くで倒れてた少女がいた気がする。
少女は一部始終を間近で見ながらも、あまりの光景に目を疑っていた。
優男とも言える体格の若者が熊のような筋骨隆々の大男を弄び、いとも簡単に倒してしまった。
はっ!と少女は我に返る。
この隙に逃げるとしよう。
「おーい」
立ち上がろうとした少女はびくっ、と体を震わせる。
先程の男がこちらへ歩いてくる。
(こういう時は、とりあえず撤収!)
少女は全速力で逃げ出した。
後ろから「あ!おい待て!」という声が聞こえるが無視した。
捕まったら何をされるか分からない。
少女は土地勘があるため、いつも追っ手を撒く時に使っている路地裏へ消えた。
クエストを引き受けた理源は、早速街の外に出る...前に市場で道中の楽しみにと何か食べ物を買おうとしていた。
旅にも遠足にも魔物退治にもおやつは必要である。理源はそう考えていた。
なんとなくで美味そうに熟れた赤い果物と菓子を買い、人混みを避けるため家屋の屋根に跳び登った。
他に何か良さそうなものはないかと真下の市場で売られている品物に目を配る。
店員らしき男の「盗っ人だ!通してくれ!」という声が何度も聞こえ、やがて諦めたのか引き返し始めた。
交差点を跳び越え、向こう側の屋根にまた降り立つ。
そして再び下を見下ろすと何やら円の空間ができている。
円の中には二人の人影。1人は大きな男、もう1人は男に比べてとても小さい。子供だろうか。
なにやら面白そうだ、そう思った理源はその円に向かって屋根から飛び降りた。
しかし着地場所がズレたようだ。
わざとズラしたのかもしれない。
理源が着地した場所は、大男の頭上だった。
「がっ!?」
予想外の方向からの衝撃に大男は地面に倒れる。
「あ、ごめん、悪気は無かった」
理源は顔の前で両手を合わせた。
周りを取り囲む市民からなんだなんだとざわめきが聞こえる。
蹴りを恐れて目を閉じていた少女が異変を感じおそるおそる眼を開けて顔を上げる。
「えっ」
自分を蹴り飛ばそうとした男が倒れていて、しかもまったく見たことのない長身の黒衣装の男がまるで最初からいたかのようにそこに立っていたのだ。
「なんかおもしれーことでもやってんのか?」
男が無邪気な少年のような表情と声で聞く。
しかし呆気にとられた人々は彼の問いに答えられなかった。
大男が頭を振って立ち上がる。
「てめぇ...どこのどいつだ」
ぶつけた箇所をさすりながら理源を睨む。
「ただの一般市民だ。そんな怒んないでくれよ、俺が悪かったから」
「ふざけんじゃねぇ!」
適当になだめようとした理源に激怒した大男が殴りかかる。
しかし大男の拳は理源の胴体を捉えなかった。
それどころか姿さえ見えない。
「あ?」
消えたのか?そう思った大男は辺り左右を見る。
しかしいない。
次の瞬間、突然膝に強い衝撃が加わった。
かくんっ、と大男の膝が崩れる。
不意をつかれた大男は膝をつき、後ろをばっ、と振り返った。
満面の笑みを浮かべた理源がいた。
「死ねぇええ!!」
虚仮にされてより血の気が増した大男が再び殴りかかる。
今度は姿は消えなかった。
しかしそこにいるはずなのに大男の拳は全く当たらない。
苛立った大男が一撃で仕留めようと右足を踏み込もうとしたその瞬間だった。
理源は全体重を乗せていた左足を蹴り上げた。
足を掬われた大男は空中で一回転し、ばたりと倒れた。
「やべ、逃げよ」
ついやってしまった。
正当防衛とはいえ、元はと言えば上からぶつかってきた自分が悪いのだ。
問題になる前にとっとと逃げてしまおう、そう思った理源は現場から離れようとした。
そういえば近くで倒れてた少女がいた気がする。
少女は一部始終を間近で見ながらも、あまりの光景に目を疑っていた。
優男とも言える体格の若者が熊のような筋骨隆々の大男を弄び、いとも簡単に倒してしまった。
はっ!と少女は我に返る。
この隙に逃げるとしよう。
「おーい」
立ち上がろうとした少女はびくっ、と体を震わせる。
先程の男がこちらへ歩いてくる。
(こういう時は、とりあえず撤収!)
少女は全速力で逃げ出した。
後ろから「あ!おい待て!」という声が聞こえるが無視した。
捕まったら何をされるか分からない。
少女は土地勘があるため、いつも追っ手を撒く時に使っている路地裏へ消えた。
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