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本編

であい

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 自由。
 自由のなかに囚われている。


  ◆


 空はじわじわ紺に染まりだし、早くも星がまたたきだしている。
 錆びついたフェンスとそこらに転がる空き缶。崖の上の廃れた公園は、ジ、ジジ、とすりきれた街灯の光を浴び、影をおとしていた。

「次は……ここにするか」

 スマホの画面をなぞる指が止まる。

 ポケットに電源を切って突っ込み、その公園を後にした。
 しようとした。

 一歩踏み出したとき、突然目の前に、大きな鳥が現れたのだ。

 烏か、それにしては羽色が薄い。
 灰色っぽいというわけではなく、半透明?という感じがするのだ。

 実際透けているわけではない。
 それなのに、存在しているのかが曖昧なのだ。

 普段ならスルーしているのだが、その時は何故かできなかった。

 近づいてもその鳥は頑として動かない。

 カメラを向けてみても、触ってみても、嫌がる素振りを見せない。

 随分と人に慣れてるな、と。
 そういう印象を抱く。


 遠くから、猫が威嚇する声がきこえた。


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