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第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、49)

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おそらく魔道のマの字もかじったことのないハンスでは、扉を封印するどころか邪蛇の発する邪気すら封印するにはいたらない。



もしも、その後ろに真の黒幕がいたとして、その人物は多少の魔道をかじっていて、召喚の理屈を理解し、それなりの知識のある一番だれからも疑われることのない意外な人だとする。



魔族を召喚して番人となせば無闇に扉を開こうとする人もいないだろうし、邪蛇の邪悪なる力がもれだす心配もない。



魔族の好物とするのが陰の気だとすれば、邪蛇の発する陰の気は魔族にとってこの上もないご馳走のはずだ。




「このトカゲ石ってもともと魔法がかけられたタダの石だったのよ。冒険書にもそう書かれてあるし」



しかし石は石でなくなってしまった。



「なぁ……あの魔族、やけに温和すぎないか? 眠っているようにも見えなくはないが……」



「そうね、眠っているのかも。いえ、眠らされているのかもね」



「それに、なんだかやけに混ざりあったような形をして………」



「キメラよ。トカゲと石、もしくはゴーレム+(プラス)魔族が融合されたキメラ」



「あれがキメラ……。俺はこの目で魔族を見るのは初めてだ。


色界に召喚された魔族ってすべてあんな感じなのか?」



「そうとばかりもいえないわ。寄生させる本体にもよりけりだし、一概にこうだ! って断定できる実例にもとぼしいから」



「なるほどな~混ぜ方しだいで、あんなにもグロテスクになるのか。近寄るのが嫌だな」



この色界を守るための魔族召喚ではないことは明白だ。


まだこの世界を滅ぼすことは妥当な判断ではないとの判断をしたからか?



それとも…………。




「これからどうするんだ? この魔族をいっそのこと叩き斬るか?」



「あのね~魔族に無闇に斬りつけるなんて、お利口さんのする行為じゃないわ、命知らずなおバカさんのすることよ」



「おバカで悪かったな」



「なに、本気で魔族に斬りつけようなんて考えていたの? 命冥加な………」



「物知りな誰かさんのおかげで、失わなくてもいい命が助かりました」



「どういたしまして」



ティアヌは右手を軽くあげ、セルティガに静止の合図を送るとセルティガはぴたりとその場から微動だにしない。



ティアヌはゆっくりと魔族に近づいていく。



歩み寄りながらティアヌは呪文を唱えはじめた。



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