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第1章 禁断の魔道士
魔道竜(第1章、40)
しおりを挟むグハッッ!!
「……な……ッ……」
セルティガの体は勢いあまって豪快に尻餅をついた。
「痛ってぇ……!? 何をするんだ、このじゃじゃ馬ッ!」
「当然の酬いってものじゃない? 女性に対する配慮ってものがまったくなってないわ。聞こえよく言えば教育的指導」
「聞こえを悪くした場合は?」
「調教?」
「俺は獣なみか!?」
などとツッコミをいれつつ、
「だいたいからして、無防備な優男をつかまえて、ミゾオチをついてくる女性がどこにいるんだ?
それにそこまで言うのならこっちからも言わせてもらおう。
能天気にもほどがある。どこの誰ともしれない雇主のために命をハレるバカがどこにいるんだ? お前は前代未聞の大バカ者だ!!」
どこに優男がいるのかと言ってやりたいところではあるが。
「私はなんとしても冒険に出たかったのよ。すぐに申し出を受けたけれど、双方の利害が一致したからこそなんのためらいをもたなかった、ただそれだけのことよ。
なんか文句がある? あるなら言ってみなさいよ」
はぁ~……と大きくため息をもらし、セルティガは地べたにうずくまり頭をかかえた。
「そんなため息をつかないでよ。船長となったからには、私には船員を守るために最善の英断をその場でくださなければならない。
それなのに軽率だって言いたいんでしょ?」
「わかっているんじゃないか」
「きっかけはたしかに軽率だったかもしれない。
それでもね、私は人の命と運命その他もろもろをあずかっている。
それらを守る義務を忘れたことはただの一度もないわ。そのためならどんな困難もいとわない覚悟よ。禁術をつかってでもみんなを守るためならなんでもするわ」
たとえそれが禁忌なる術を唱える結果につながろうとも。
「頼もしい船長だな」
セルティガのティアヌを見る目つきがかわったのはこの時だった。
しょせん学生のお遊びと高をくくっていたのかもしれない。
ティアヌがどんな思いでこの危険きわまりない虚海を旅するにいたったのか、その意気込みのほどを知って、少しばかり認めてくれたのかもしれない。
一人の魔道士として…というよりも、ティアヌという一人の人間性を。
「長話しは無用よ。さ、デスマウンテンに登るわよ」
「おぅ!」
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