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第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、34)

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この島には古くから伝わる伝説がある。


それは紀元前よりさらにさかのぼることおよそ一万年前、人類が神々の統治下におかれ安穏とした日々をおくっていたとされる天地開闢神話にもとづくものだ。



が、いまは小難しい箇所は省略する。



人類がはじめに祠ったのは、君臨しつづけたどの神々でもなければ聖人君子といったものでなく、精霊、炎だった。



それによれば、炎の精霊バルバダイを祠る神殿が人類の手によってはじめてこの島におかれるとしだいに各地へ波及し、それが精霊信仰のそもそもの始まりになったのだという。



それ以後、この島の聖域が炎の精霊バルバダイを祠る総本山として巡礼者がたえまなく参拝におとずれるようになり、またその厚い信仰は人類に火をさずけ、生きていくすべを与えてくれた感謝と畏敬の念の両者からなる純粋なあらわれからだった。



そうして人類は各地に聖地をきずき神殿を設けた。



人々の信仰は絶やされることなく次の世代へ連綿と受け継がれるはずだった。



しかし、時代をへるごとにその足はしだいに遠のき、信仰心もうすれ、やがてその聖域がどこにあるのか、聖域への行き方すら忘れられてしまった。



だが知識だけはごく一部の島民たちによって口伝として伝えられ、そのひとつがこれだ。



伝説ではその神殿はこの島の最下層、地中深くに掘られた洞窟の先にあるという。



その神殿に参拝におとずれたものにはバルバダイの祝福がえられるらしい。


祝福のなんたるかの詳細は不明だが、話しに聞くところによるとどんな願いも叶えてくれる……など、いかにもうさん臭い。



人間から見た精霊の姿、それは慈悲に富む神聖なる像の姿であらわされるものが大多数を占めるなか。



女性の話しを聞く限り、想像される御神体とはかなりことなるようだ。



『へ、蛇!?』



ここに本来あるべきはバルバダイの神像のはず。それが禍々しい女の顔をつけた巨大な蛇の像にすげ替えられていた。



「つまり信仰の対象がいつの頃からか変わったということね。何か思い当たる節がないわけではない、と言いたげな顔色ね。これだけあからさまに邪蛇を祠るお祭りを盛大におこなうぐらいだから、島民の心を動かすような一大事件があったはずよね?」



「一大事件、かわからないけど、二年前かしら……。事の発端はとある漁師が浜辺で拾った小さな小瓶らしいの」


「小瓶?」



「そぅ。どうやらそれはどこからか流れついたものらしく、前にも同じような瓶を拾ったその漁師は不思議がることもせず迷わず瓶をあけたらしいの」



「それってただの小瓶よね?」


「えぇ、ごくありきたりなどこにでもある小瓶だったそうです。その中に一枚の紙切れがはいっていて、それを面白がって回し読みしたそうなんです」


「そこにはどんなことが書かれていたの?」


「確か……何かの呪いか愛の詩のようなものが書かれていたとか、いないとか………」


ティアヌにはすぐに書かれてあったその内容に目星がついた。



「こんな内容じゃなかった?」

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