上 下
19 / 132
第1章 禁断の魔道士

魔道竜(第1章、18)

しおりを挟む


ガタン…ガタガターッと、セルティガは豪快な音をたててふたたび椅子からころげおちた。



「俺を無視して話をすすめるな!!」



この手のタイプの男はこういった場面で放置されるのは癇(かん)にさわるものらしい。



ティアヌはそんなことはお構いなしで話をすすめる。



「そもそも呪文とは『精霊語』、つまり紀元前より伝えられ現在では魔道士いがいには使われなくなった言葉であり、古語。ちまたで神代文字ともよばれているわ」



初代大神官が精霊から魔法をさずかりそれがいわゆる呪文であり、それを唱えることによって発動する『言霊』である。



言葉そのものに意味があり発することによって言霊として力がやどる。



時を経るごとに日常的に意味をなさなくなった精霊語は、嘆かわしいことに魔道における解釈すら今となれば後付けされたものにすぎない。


したがって現在では呪文の本質を理解できないまま呪文を唱えている魔道士もすくなくない。



「例えばファイヤーブレスなどの呪文のあとにつけくわえられた(火竜玉)というのが後付けされたおおよその意味をしめしているってわけよ、わかった?


ちなみに術の難易度があがると魔力六柱を高めるために前置きの【呪文】が必要とされる」



「ほぉ~」



「召喚術は知ってのとおり精霊を召喚してはじめて術が発動する。魔法は呪文を唱え、この世のあらゆる物質エネルギーや異世界とよばれる第三次元から力を集め発動させる。ここまではついてこれている?」



「ば、ばかにするな!それより、なぜ魔道士が高位精霊を召喚できたんだ?」



セルティガの疑問に答えたのはセイラだった。



「一般的には絶対召喚できない、ていうのが通説よね。しかも異形化した精霊を再生させたり精霊を召喚できないような状態で高位の精霊を召喚することだってなみの召喚術士にもなかなか、できないこと。ある意味…不可能、そうよねぇ?」



「どうやったんだ?」



「どうって…使役できる約定をかわした者のみ契約にもとづき召喚できるの。


精霊と契約をかわすには承伏(しょうふく)するいがい方法はない。


したがって精霊をよびだせない状態、もしくはそういった状況下におちいろうとも条件にかかわらず好きなときに召喚できるってわけ」



しかしその契約をかわすのになみの魔力六柱では到底できえない。膨大な魔力をもつことが契約をかわすための必要不可欠な絶対条件だ。



それゆえに精霊と契約をかわすことは誰にもできないことと長年されてきた。


しかし近年の大神官についての研究でわかったことが、大神官は精霊と契約関係にあったということだ。



「精霊と契約?そんなことができるのか?」



疑問の目がむけられた。



だがその質問には答えたくはなかった。



だがセイラにはすべてお見通しだったのだろう。



口をとざしたティアヌのかわりにセイラがその質問の答えをひきつぐ。



「一つだけ、精霊と契約をかわせる方法がある、そうよね…ティアヌ?


禁術の使い手『禁断の魔道士』ならこの世でただ一人、いとも簡単にやってのけるでしょうけどぉ、禁断の魔道士とよばれる魔道士はこの世でもっとも次なる大神官となりえる可能性がたかいのよねぇ?」



いまだかつてできないとされてきたことが大神官のみがそれをできた。結論からいえば精霊を使役できる魔道士は、もっとも大神官に近い力をもっている。そうセイラは核心をついてきたのだ。



しおりを挟む

処理中です...