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21章 責任
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「モニカ嬢はニーナを恨んでいた。幼少期に、ルーク様との縁談を自分で断っておきながら、自分の家が没落しそうになったら、デイヴィス侯爵家の援助を狙い、自分が婚約者に収まろうとした。だが、脅してもニーナは婚約者の座を降りなかったし、ルーク様もニーナ以外と婚約しようとはしなかった。モニカ嬢の家は没落した。辛うじて男爵の地位にはしがみ付けたものの、生活は苦しかったと聞いている」
お兄様はローゼリア様から視線を外し、裁判官達を見た。
「残念なことに、モニカ嬢はニーナを逆恨みした。そこで、モニカ嬢はローゼリア王女に目をつけた。ローゼリア王女を利用して、ニーナに復讐しようとしたのです」
少しずつ、お兄様は裁判官の席に向かって歩いていく。
「モニカ嬢はローゼリア王女のお気に入りとなり、王女に取り入った。そして、英雄と魔獣や魔物について調べ、英雄の血が魔獣に好まれることを知った。ローゼリア王女の権力を使い、学園に忍び込み模擬剣を真剣にすり替える。ルーク様に怪我を負わせて出血させる。もちろん、ニーナは手当をしましたよ。必死に魔法を使って治し、血で汚れたところをハンカチで拭って」
裁判官達の席まで来ると、お兄様は茶色く薄汚れたハンカチを裁判官達に差し出した。
「モニカ嬢はなんらかの方法でこのハンカチを取得し、ローゼリア王女の動かす兵を使って結界から魔獣を誘き出した。ハンカチを使えば簡単なことだったでしょう。何もしなくても魔獣が引き寄せられるのだから。そして、この後はみなさんがご存知のあの悲劇です」
そこまで言うと、お兄様は元いた席についた。
ざわざわと傍聴席が細波のように騒めく中、裁判官が目を見開いたまま、お兄様に問いかける。
「この血液のついたハンカチを使って魔獣を誘き出したというのは、ミラー卿、あなたの妄想では……?」
「……妄想かも知れません。しかし、オレはあの日、血溜まりの中横たわる妹とこのハンカチを見つけ、側で横たわるモニカ嬢の姿を見た時に確信したのです。誰かがオレ達の可愛いニーナを殺したんだと。末っ子の妹は、甘えんぼで、でもがんばり屋で、みんなに愛される子でした。それをあんな風に殺されて……!」
だんっ!
お兄様は目の前の机に拳を振り下ろした。
「それが計画的であるならば、絶対に首謀者を突き止めると決めました。そして今日、やっと、この事実を公表できる……!」
お兄様は薄暗い笑みを浮かべる。
わたしは、こんなお兄様を見たことがない。
こんな、こんなにお兄様が苦しんでいたなんて。
気がつくとわたしのまなじりには涙が浮かんでいた。
滲んでぼんやりとしてしまった視界の中で、お兄様が裁判官達の前へ歩み出る。
お兄様は、ぱさりと紙の束を裁判官の前に差し出した。
「これは、モニカ嬢が魔獣を結界から出す時に協力した兵士の証言をまとめたものです。必要があれば証言台にも立つと、同意書ももらっています。これも、王家の力がなくなったために得られたものです。この王族達に力を持たせておくことが、どんなに危険なことかお分かりいただけるでしょう」
裁判長は黙って証言書に目を通した。
そして、深いため息をつくと、お兄様を見た。
「ミラー卿。確かにここに書いてあることは、あなたの述べた内容と合致しています。モニカ嬢はローゼリア王女の命令で、ミラー卿の妹君を害するために魔獣を使うと言っていたようですね。その方法を思いついたのは、ローゼリア王女の許可で王宮書庫で魔獣について調べていた時だとも」
裁判長の横に座る2人の裁判官も、順番に証言書を読み、深いため息をつく。
「学生のうちからこんなおそろしいことを企てるとは……」
「これは、想定していたよりも罪が重い」
動揺する裁判官に、裁判長は目線で合図を送る。
2人の裁判官が前を見据えたところで、ガベルを鳴らした。
「では、ここで一旦休廷とします」
裁判官がそろって退廷すると、王族の3人も刑務官に連れられて、一度法廷から出て行った。
ルーク様の隣に座る大臣も、ルーク様とお兄様に何やら声を掛けて、席を立った。
法廷に残されたのは、ルーク様とお兄様だけだったけど、ルーク様は俯いたまま動かなかった。
お兄様はローゼリア様から視線を外し、裁判官達を見た。
「残念なことに、モニカ嬢はニーナを逆恨みした。そこで、モニカ嬢はローゼリア王女に目をつけた。ローゼリア王女を利用して、ニーナに復讐しようとしたのです」
少しずつ、お兄様は裁判官の席に向かって歩いていく。
「モニカ嬢はローゼリア王女のお気に入りとなり、王女に取り入った。そして、英雄と魔獣や魔物について調べ、英雄の血が魔獣に好まれることを知った。ローゼリア王女の権力を使い、学園に忍び込み模擬剣を真剣にすり替える。ルーク様に怪我を負わせて出血させる。もちろん、ニーナは手当をしましたよ。必死に魔法を使って治し、血で汚れたところをハンカチで拭って」
裁判官達の席まで来ると、お兄様は茶色く薄汚れたハンカチを裁判官達に差し出した。
「モニカ嬢はなんらかの方法でこのハンカチを取得し、ローゼリア王女の動かす兵を使って結界から魔獣を誘き出した。ハンカチを使えば簡単なことだったでしょう。何もしなくても魔獣が引き寄せられるのだから。そして、この後はみなさんがご存知のあの悲劇です」
そこまで言うと、お兄様は元いた席についた。
ざわざわと傍聴席が細波のように騒めく中、裁判官が目を見開いたまま、お兄様に問いかける。
「この血液のついたハンカチを使って魔獣を誘き出したというのは、ミラー卿、あなたの妄想では……?」
「……妄想かも知れません。しかし、オレはあの日、血溜まりの中横たわる妹とこのハンカチを見つけ、側で横たわるモニカ嬢の姿を見た時に確信したのです。誰かがオレ達の可愛いニーナを殺したんだと。末っ子の妹は、甘えんぼで、でもがんばり屋で、みんなに愛される子でした。それをあんな風に殺されて……!」
だんっ!
お兄様は目の前の机に拳を振り下ろした。
「それが計画的であるならば、絶対に首謀者を突き止めると決めました。そして今日、やっと、この事実を公表できる……!」
お兄様は薄暗い笑みを浮かべる。
わたしは、こんなお兄様を見たことがない。
こんな、こんなにお兄様が苦しんでいたなんて。
気がつくとわたしのまなじりには涙が浮かんでいた。
滲んでぼんやりとしてしまった視界の中で、お兄様が裁判官達の前へ歩み出る。
お兄様は、ぱさりと紙の束を裁判官の前に差し出した。
「これは、モニカ嬢が魔獣を結界から出す時に協力した兵士の証言をまとめたものです。必要があれば証言台にも立つと、同意書ももらっています。これも、王家の力がなくなったために得られたものです。この王族達に力を持たせておくことが、どんなに危険なことかお分かりいただけるでしょう」
裁判長は黙って証言書に目を通した。
そして、深いため息をつくと、お兄様を見た。
「ミラー卿。確かにここに書いてあることは、あなたの述べた内容と合致しています。モニカ嬢はローゼリア王女の命令で、ミラー卿の妹君を害するために魔獣を使うと言っていたようですね。その方法を思いついたのは、ローゼリア王女の許可で王宮書庫で魔獣について調べていた時だとも」
裁判長の横に座る2人の裁判官も、順番に証言書を読み、深いため息をつく。
「学生のうちからこんなおそろしいことを企てるとは……」
「これは、想定していたよりも罪が重い」
動揺する裁判官に、裁判長は目線で合図を送る。
2人の裁判官が前を見据えたところで、ガベルを鳴らした。
「では、ここで一旦休廷とします」
裁判官がそろって退廷すると、王族の3人も刑務官に連れられて、一度法廷から出て行った。
ルーク様の隣に座る大臣も、ルーク様とお兄様に何やら声を掛けて、席を立った。
法廷に残されたのは、ルーク様とお兄様だけだったけど、ルーク様は俯いたまま動かなかった。
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