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21章 責任

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わたしはルーク様に用意された傍聴席にいる。
お兄様からは、決してここから動くなと厳命されて大人しく座っていた。

この裁判の傍聴券は人気が高く、抽選にもれた人が外にまだトグロを巻いているというのに、わたしがここに居ていいのかしら……?
裁判なんて、聞いても多分わからないのにねぇ。

周りは大人だらけで、慣れない雰囲気にソワソワしながらひとりで座っていると、法廷の正面の席に黒い法服を着た年配の裁判官3人がやってきて、真ん中に座った人が木槌ガベルをカンカンと打ち鳴らした。

「静粛に。これより、国王並びに王太子、及び光の討伐隊隊長である王女の裁判を始める」

裁判官の声を合図に、まず四方を騎士に囲まれた国王が入ってきて、裁判官から見て左側の席に腰を下ろした。
いつもの煌びやかな服装とは違い、白いシャツに茶色のトラウザーズを着ている。それでも、その生地は見るからに柔らかそうで、良いものであることがわかる。
まぁ、わたしも商会の長女なので、品質の目利きには自信があるのよね。

それに続き、裁判官を挟んで反対側に、大臣様とルーク様、そしてお兄様が席に着く。

「裁判長、まずは証拠を提出致します」

ルーク様はそう言うと、裁判官たちの前に両手で抱えるほどの量の書類を提出した。

「これは、わたしの隊の副隊長であるミラー卿が王室編纂室から発見した資料です」

そこから、ルーク様とお兄様の猛攻は止まらなかった。
本来なら、ふたりと一緒に座っている検察側の大臣が国王を追い詰めるはずなのに、議会を代表としたふたりが口頭弁論のほぼ全てをおこなっていた。

数代前の国王の所業から始まり、50年に一度の生贄の話は、聴衆の怒りを買った。

だってそうだろう。
生贄として捧げられたのは、王室による要請で集められた討伐隊なのだから。

3人の裁判官の中で、真ん中に座る一番偉い裁判長が国王の方を見た。

「何か反論はありますか?」

裁判官の言葉に、国王は目を見開く。

「何か反論は、だと? わしをこんなところに立たせて、謂れもない罪を着せられ、反論しかないわっ!! しかも、デイヴィスの小倅こせがれの隣に座るのは我が国議会の大臣ではないかっ! 大臣がそんな者に騙されてそこに居るとは、先が思いやられるわ!」

荒ぶる国王を、隣に座る側近が宥める。

一応、国王側にも二人の側近が両隣に座っており、国王の陳述の助けをしてもいいことになっている。

ただ、今日王族側の被告席に一緒に座ることをよしとした側近はいなかったらしい。
嫌がってなすりつけ合い、やっとあそこに座る二人に決まったそうだ。

国王は席に座ったまま口を開く。

「だいたい、わしは国王だ。裁かれることはないっ!」

国王の言うことは一理ある。

ホイホイと国で一番偉い人が訴えられたら、国がたちいかなくなるため、王族は特別法で保護されている。

だけど……。

ルーク様は国王の座る席に足を進める。

「ご存じないのでしょうね。今まで一度も施行されたことのない法令ですからね。国王も裁ける法があるんですよ」

口角を上げて笑顔を作るルーク様だが、その瞳は笑っていなかった。


お顔の造作がとても整っているルーク様が、美しくも怖ろしく見えた。





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