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20章 決着
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『その娘は……』
意識が朦朧とする中、魔物が声をあげるのがわかった。
『おまえは光の術者だな?』
ルーク様がわたしを魔物から庇うように抱きしめる中、魔物がわたしを覗き込む。
魔物を睨みつけ、ルーク様が答えた。
「確かにニーナは光の術者だ! しかし、術者が自分にかけた癒しのは魔法は効かない。治すことができないんだっ!」
叫ぶルーク様とは対照的に、魔物はゆっくりとわたしを見つめる。
『この者が、英雄の片割れだな。娘よ、まだ光の魔法は掛けられるか? おまえの、英雄のために』
途切れそうな意識の中、わたしの魂に魔物の言葉が引っ掛かる。
ルーク様のため……?
そうだ。
まだ、わたしはルーク様の火傷を治していなかった。
わたしを抱きしめて泣くルーク様に、わたしの全てを注ぎ込んで、魔法を掛けなきゃ。
わたしの意識が、学園で魔獣に引き裂かれた記憶と混濁する。
冷たくなった指先を、ルーク様へと向ける。
必死に顔を動かしてルーク様を見るけど……。
あれ?
ルーク様、大人の顔になってる。
火傷の痕がない。
あぁ、そうか。
わたしはもうジーナじゃないんだっけ。
じゃあ、何に魔法を掛ければいいの?
魔法をかけるために上げた指先を下ろそうとすると、魔物が慌てて剣をわたしに向けた。
『この剣に魔法を掛けよ。英雄を想って、ありったけの光を注ぎ込め』
黒いルーク様がわたしに言う。
あれ? 黒いルーク様って、魔物だっけ?
考えることも難しくなったわたしは、魔物に言われるがままに、魔法をかけようとした。
そこに、お兄様が近付いて来る。
「もう力を使わせないでくれっ! このまま、体力が落ちる前に、光の塔に連れて行って治療を受けさせる」
わたしを庇うように抱くルーク様を、更にお兄様が庇うように魔物の前に立ちはだかった。
『オレはそれでも構わないが、その娘の体力では、このから動かしたら即死だぞ。それなら、この剣に魔法を掛けてみてもよいだろう?』
魔物の言葉に、わたしを抱くルーク様の腕がぴくりと動く。
魔物は真剣な目で、わたしを見つめる。
『英雄の為に、この剣におまえの全てを捧げよ。そして、その現実を受け止めろ』
もう、意識を保つことが難しいほど朦朧としてきたわたしは、ルーク様と同じお顔をした者の言うなりに、指先に力を込めた。
ルーク様。
ルーク様のお力になれるのなら、わたしの精一杯の力を注ぎます。
ルーク様が、幸せになれますように……。
最期の力を振り絞り、ありったけの魔法を指先から放つ。
もう、目もよく見えないけど、わたしの魔法は黒いルーク様の持つ剣に吸い込まれていった。
ジーナが死ぬ直前に掛けた魔法は、とても強力な魔法だった。
自分の体力の為に放つ力を調節することなく、ジーナの命を一滴残らず注いだからだ。
今解き放った魔法も、同じように強力だったはず。
だって、命を残らす魔力に変えたんだもの。
もう、わたしの中に、力は何も残っていない。
わたしの命は尽きたのだ。
ゆっくりと瞼が降りて、周りの景色もぼんやりとしてきた。
目の前の、ルーク様の泣き顔だけが鮮明に瞼に焼き付いた。
魔物は、わたしが掛けた光魔法を纏った剣を満足そうに眺めた。
闇の色に包まれていた剣は、薄闇から太陽の光がさすように、金色に光り輝き始める。
『娘、よく頑張ったな。うまく剣に光の魔法が宿った。褒めて遣わす』
ニヤリと笑った魔物は、両手で剣を握り、それを思いっきり振り下ろした。
「ニーナっ!!」
わたしを庇おうとしたルーク様を避け、剣は見事にわたしの胸を貫いた。
「騙したのかっ」
激昂するお兄様が剣を構え、魔物に向けると魔物はニヤリと笑った。
意識が朦朧とする中、魔物が声をあげるのがわかった。
『おまえは光の術者だな?』
ルーク様がわたしを魔物から庇うように抱きしめる中、魔物がわたしを覗き込む。
魔物を睨みつけ、ルーク様が答えた。
「確かにニーナは光の術者だ! しかし、術者が自分にかけた癒しのは魔法は効かない。治すことができないんだっ!」
叫ぶルーク様とは対照的に、魔物はゆっくりとわたしを見つめる。
『この者が、英雄の片割れだな。娘よ、まだ光の魔法は掛けられるか? おまえの、英雄のために』
途切れそうな意識の中、わたしの魂に魔物の言葉が引っ掛かる。
ルーク様のため……?
そうだ。
まだ、わたしはルーク様の火傷を治していなかった。
わたしを抱きしめて泣くルーク様に、わたしの全てを注ぎ込んで、魔法を掛けなきゃ。
わたしの意識が、学園で魔獣に引き裂かれた記憶と混濁する。
冷たくなった指先を、ルーク様へと向ける。
必死に顔を動かしてルーク様を見るけど……。
あれ?
ルーク様、大人の顔になってる。
火傷の痕がない。
あぁ、そうか。
わたしはもうジーナじゃないんだっけ。
じゃあ、何に魔法を掛ければいいの?
魔法をかけるために上げた指先を下ろそうとすると、魔物が慌てて剣をわたしに向けた。
『この剣に魔法を掛けよ。英雄を想って、ありったけの光を注ぎ込め』
黒いルーク様がわたしに言う。
あれ? 黒いルーク様って、魔物だっけ?
考えることも難しくなったわたしは、魔物に言われるがままに、魔法をかけようとした。
そこに、お兄様が近付いて来る。
「もう力を使わせないでくれっ! このまま、体力が落ちる前に、光の塔に連れて行って治療を受けさせる」
わたしを庇うように抱くルーク様を、更にお兄様が庇うように魔物の前に立ちはだかった。
『オレはそれでも構わないが、その娘の体力では、このから動かしたら即死だぞ。それなら、この剣に魔法を掛けてみてもよいだろう?』
魔物の言葉に、わたしを抱くルーク様の腕がぴくりと動く。
魔物は真剣な目で、わたしを見つめる。
『英雄の為に、この剣におまえの全てを捧げよ。そして、その現実を受け止めろ』
もう、意識を保つことが難しいほど朦朧としてきたわたしは、ルーク様と同じお顔をした者の言うなりに、指先に力を込めた。
ルーク様。
ルーク様のお力になれるのなら、わたしの精一杯の力を注ぎます。
ルーク様が、幸せになれますように……。
最期の力を振り絞り、ありったけの魔法を指先から放つ。
もう、目もよく見えないけど、わたしの魔法は黒いルーク様の持つ剣に吸い込まれていった。
ジーナが死ぬ直前に掛けた魔法は、とても強力な魔法だった。
自分の体力の為に放つ力を調節することなく、ジーナの命を一滴残らず注いだからだ。
今解き放った魔法も、同じように強力だったはず。
だって、命を残らす魔力に変えたんだもの。
もう、わたしの中に、力は何も残っていない。
わたしの命は尽きたのだ。
ゆっくりと瞼が降りて、周りの景色もぼんやりとしてきた。
目の前の、ルーク様の泣き顔だけが鮮明に瞼に焼き付いた。
魔物は、わたしが掛けた光魔法を纏った剣を満足そうに眺めた。
闇の色に包まれていた剣は、薄闇から太陽の光がさすように、金色に光り輝き始める。
『娘、よく頑張ったな。うまく剣に光の魔法が宿った。褒めて遣わす』
ニヤリと笑った魔物は、両手で剣を握り、それを思いっきり振り下ろした。
「ニーナっ!!」
わたしを庇おうとしたルーク様を避け、剣は見事にわたしの胸を貫いた。
「騙したのかっ」
激昂するお兄様が剣を構え、魔物に向けると魔物はニヤリと笑った。
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