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19章 闘い
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カッコよくお兄様がキメてる横で、わたしはわからないように首を傾げた。
殺された? 誰にって言った?
わたしは迷い込んだ魔獣に殺されたんじゃないの?
いやいやいや、お兄様。
いくらローゼリア様の我儘だって、魔獣が聞くはずないでしょう。
魔獣にわたしを襲わせるなんて、無理だわ。
しん、と静まり返り、みんながお兄様を見つめる中、ミルテ様が口を開く。
「ミ、ミラー卿の妹さまは確かにルーク隊長の婚約者様でしたが、生きていらっしゃればルーク様と同じお年だと……」
「だから、蘇ったと言っている。こいつを連れて行くぞ。ミルテ副隊長、後のことは任せた」
みんなが見つめる中、お兄様はわたしの手を引いて、扉から外に出ていった。
「お兄様、ルーク様のお怪我はどれくらいのものなんですか?」
お兄様は塔を出てすぐのところに繋いでいた馬の鞍を付け直した。
「ん? 怪我はそう深くはない。かすり傷だ。だから怪我を負った隊員を優先してここに連れてきたんだが、ルーク様は英雄だからな」
「? どういう意味ですか?」
「英雄の血のにおいは、魔獣を引き寄せるんだ。だから、軽傷でも出血が多いと魔獣が来てしまう」
「うそ……。お兄様! 早く行かないと!」
わたしがお兄様を急かせると、お兄様はわたしの頭をポンポンと撫でた。
「ああ、急ごう。その前に、ニーナはこの馬に少し水を飲ませて置いてくれないか? 馬補給用の水は、そこの小屋に用意されているから。多分、誰かしら居ると思うから聞いてみてくれ」
お兄様は少し離れた所にある小屋を指さした。
「はい。お兄様は?」
わたしがお兄様に問うと、お兄様は少し微笑んだ。
「オレは、念のために祝福の掛け直しをしてもらってくる」
「わかりました」
お兄様は何故かわたしの頭に手を置いたまま、じっとわたしの目を見ていた。
「お兄様?」
「ん、ああ。すまん。ちょっと行ってくる。水、頼んだぞ」
お兄様はすぐに塔の中に引き返して行った。
変なお兄様。
とりあえず、わたしは小屋に行き、そこに居た人にバケツに水を入れてもらった。
えっちらおっちらと水を運び、馬の前に置く。
さっと置いて、すぐにその場を離れる。
だって、自分より大きい動物はやっぱり怖いんだもん。
馬はバケツに首を突っ込んで、水を飲んでいるようだった。
わたしは恐る恐る馬の近くに寄り、そっと触れるようにして、たてがみを撫でた。
「お兄様と一緒に戦ってくれてありがとうね。そして、わたしも森の中へ、ルーク様のところに連れて行ってね」
馬は賢くわたしの言っている意味がわかるのか、わたしに向かってブルルと息をはいた。
「悪い、ニーナ。遅くなった」
お兄様が急いでこちらにやってきて、わたしを抱き上げて馬に乗せる。
まるで幼子のような対応だけど一刻を争う時なので、わたしは黙ってお兄様に従う。
そして、お兄様は馬を繋いでいたロープを外すと、自分も馬に乗った。
わたしを前にして、二人乗りの形になると、お兄様は馬を蹴って森の中に駆け出した。
「なんでここに居るのかとか、その隊服はどうしたのかとか、いろいろ聞きたいことはあるが今は口を開くな。舌噛むぞ」
ガンガンと上下運動をする乗り心地に、お兄様に言われなくても話をする気になどなれない。
ひぇぇぇー……。
ルーク様もお兄様も、颯爽と馬に乗ってるけど、こんな乗り心地だったんだ。
おしりが痛ーい!!
殺された? 誰にって言った?
わたしは迷い込んだ魔獣に殺されたんじゃないの?
いやいやいや、お兄様。
いくらローゼリア様の我儘だって、魔獣が聞くはずないでしょう。
魔獣にわたしを襲わせるなんて、無理だわ。
しん、と静まり返り、みんながお兄様を見つめる中、ミルテ様が口を開く。
「ミ、ミラー卿の妹さまは確かにルーク隊長の婚約者様でしたが、生きていらっしゃればルーク様と同じお年だと……」
「だから、蘇ったと言っている。こいつを連れて行くぞ。ミルテ副隊長、後のことは任せた」
みんなが見つめる中、お兄様はわたしの手を引いて、扉から外に出ていった。
「お兄様、ルーク様のお怪我はどれくらいのものなんですか?」
お兄様は塔を出てすぐのところに繋いでいた馬の鞍を付け直した。
「ん? 怪我はそう深くはない。かすり傷だ。だから怪我を負った隊員を優先してここに連れてきたんだが、ルーク様は英雄だからな」
「? どういう意味ですか?」
「英雄の血のにおいは、魔獣を引き寄せるんだ。だから、軽傷でも出血が多いと魔獣が来てしまう」
「うそ……。お兄様! 早く行かないと!」
わたしがお兄様を急かせると、お兄様はわたしの頭をポンポンと撫でた。
「ああ、急ごう。その前に、ニーナはこの馬に少し水を飲ませて置いてくれないか? 馬補給用の水は、そこの小屋に用意されているから。多分、誰かしら居ると思うから聞いてみてくれ」
お兄様は少し離れた所にある小屋を指さした。
「はい。お兄様は?」
わたしがお兄様に問うと、お兄様は少し微笑んだ。
「オレは、念のために祝福の掛け直しをしてもらってくる」
「わかりました」
お兄様は何故かわたしの頭に手を置いたまま、じっとわたしの目を見ていた。
「お兄様?」
「ん、ああ。すまん。ちょっと行ってくる。水、頼んだぞ」
お兄様はすぐに塔の中に引き返して行った。
変なお兄様。
とりあえず、わたしは小屋に行き、そこに居た人にバケツに水を入れてもらった。
えっちらおっちらと水を運び、馬の前に置く。
さっと置いて、すぐにその場を離れる。
だって、自分より大きい動物はやっぱり怖いんだもん。
馬はバケツに首を突っ込んで、水を飲んでいるようだった。
わたしは恐る恐る馬の近くに寄り、そっと触れるようにして、たてがみを撫でた。
「お兄様と一緒に戦ってくれてありがとうね。そして、わたしも森の中へ、ルーク様のところに連れて行ってね」
馬は賢くわたしの言っている意味がわかるのか、わたしに向かってブルルと息をはいた。
「悪い、ニーナ。遅くなった」
お兄様が急いでこちらにやってきて、わたしを抱き上げて馬に乗せる。
まるで幼子のような対応だけど一刻を争う時なので、わたしは黙ってお兄様に従う。
そして、お兄様は馬を繋いでいたロープを外すと、自分も馬に乗った。
わたしを前にして、二人乗りの形になると、お兄様は馬を蹴って森の中に駆け出した。
「なんでここに居るのかとか、その隊服はどうしたのかとか、いろいろ聞きたいことはあるが今は口を開くな。舌噛むぞ」
ガンガンと上下運動をする乗り心地に、お兄様に言われなくても話をする気になどなれない。
ひぇぇぇー……。
ルーク様もお兄様も、颯爽と馬に乗ってるけど、こんな乗り心地だったんだ。
おしりが痛ーい!!
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