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3章 学園へ

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学園のカリキュラムは、男女別の学科の他に、属性別魔法の授業が週に一回ある。

火、水、風の魔法は割と人数が多いが、光の魔法を持つ人は数が少ない為、光だけ6学年全員で行う。
今年は、一回生にわたしとモニカ様、二回生、三回生、四回生に一人ずつ。あと五回生にはいなくて、六回生に二人いるだけだ。

そのうち、男性は六回生にひとりだけで、あとはみんな女性。
女性の方が、光の魔術者が多いらしい。

わたしたちが学園で習うのは、主に癒しの魔法、治療の魔法だ。

わたしはルーク様に光の魔法を使っているから、問題なく課題はクリアできるだろうと思っていたら、とんでもなかった。

わたしが今まで使っていたのは、皮膚に魔法を施して綺麗にするだけのものだけど、体を傷つけられた場合の治し方は皮膚だけでなく、体の奥深いところも治す場合は、どこまでどのように治したいかを理解していないと、きちんと治らない。
体のしくみを覚えていれば、状態異常を治すことを思い描き、祈って治すことができる。

だから、体のしくみをきちんと覚えないといけないのだけど、わたしは生物の学科が大の苦手。
がんばらなくっちゃ……。

担当教諭のエミリア女史は、特にわたしに厳しく教えている。
「ジーナさんには光の加護を与えるところまで、覚えてもらわないと卒業させてあげられませんよ」
と、柔らか雰囲気で厳しいことを言うエミリア女史。

わたしたち光組は、他のクラスと違って、授業の最初は瞑想から入る。
心の中を綺麗にして、体のしくみを考える。
怪我をした人を治したいと強く願う。
それを繰り返す。

やっぱり、ルーク様の火傷を治していたせいか、わたしが魔法を使えるようになるのは早かった。
擦り傷もちょっと深い切り傷も、なんなく治せるようになった。
モニカ様は、初めて使う魔法がうまくいかず、暴走させたり、魔力を使い切ったりしていた。

まあ、モニカ様はどんなに狭い教室でも、わたしからはかなり離れて座るので、話しかけられもしないわたしには関係ない。

光の生徒みんなで集中して授業を聞く。
なるべく使う魔力を、少なくする呼吸法など。

しっかりと講義を聞いていると、モニカ様が、手を挙げた。
「あの、思うんですけど、英雄が魔物を討伐するためにわたしたちも光の魔法で治療や加護を与えることはわかりましたが、魔物が育つ前に討伐をしてしまえばよいのではないでしょうか?」

そうか。
わたしは今まで討伐に行くルーク様の助けになるようにがんばってきたけど、そもそも魔物が大きくなる前にコトを済ませてしまえばいいのか。
向こうだって、ルーク様を赤ちゃんの時に襲ったんだし。

モニカ様の言うことは正しい気がして、エミリア女史に視線を向けた。

エミリア女史は、ため息をつく。
「上層部も馬鹿ではありません。そんな話は歴史の中で何度も検討されてきました。魔物が育ちきらないと言うことは、英雄も育ちきらないと言うことです。英雄でないと、魔物を殺す力がありません。英雄の持つ何かが、魔物を殺すのに有効なのだと思いますが、それが何かわかりません。数十年に一度しか巡ってこないことなのです。英雄に殺す力がないうちは、魔物を討伐しに行っても、無駄死にをするだけです。残念ながら、魔物の森に人間が入る方が、魔獣が人間を襲いにくるより分が悪いですね」

結局、わたしたちはルーク様の助けになるように、魔法の腕を磨かなければならないと言うことか。

モニカ様も、がっかりと肩を落とした。

そんなモニカ様の机に、エミリア女史は何冊かの本をボンっと置く。
「モニカさん、あなたはわたしの講義をきちんと聞く気がないようね。魔法の使い方はもちろん、魔物の討伐の話や、英雄たちの歴史もこの授業には含まれていて、わたしはその順番を1年間通してスケジュールを組んでいるの。もう二度とわたしの邪魔をしないように、あなただけこの宿題をやってきてちょうだい。予習になるし、あなたの知りたいことは網羅されているはずよ?」
モニカ様の机に右手を置き、にっこりと笑うエミリア女史は、いつもよ柔らかい雰囲気はどこにもなく、笑顔が凍りそうに怖かった。

こうして、わたしたち光の魔法を持つものは、エミリア女史に逆らうととても怖いということを覚え、真面目に、真剣に講義を受けることを誓った。
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