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3章 学園へ
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ルーク様が「オレの婚約者は、ジーナ・ミラーただ1人だ」ときっぱり言ってくれた、あの建国祭から2年経った。
わたしは10歳になり、学園へと入学する。
身支度を整えて、自分の部屋の鏡を覗き込む。
学園の制服は、ロングのジャンパースカートに紺のブレザーだ。
スカートはくるぶしまであるので、慣れないと少し歩きにくい。
「ふむ。段々お母様に似てきたかしら……?」
昔に比べたら、少女らしさが出てきて、顔もほっそりとしてきた。……と思う。
ルーク様は、あれから腕の火傷を全部治し、今は顔の治療に入っている。
口元から始めて、やっと頬骨のあたりまで綺麗にすることができた。
前に作った仮面もサイズを小さく作り直し、今は左側の額から頬骨のあたりまでのものを着けている。
もともとの作りが大変麗しい方だったので、口元がはっきり見えるようになって、更にカッコ良くなった。
口が全部見えるようになったことで、笑った顔が、より一層素敵に見えるのだ。
あまり外に出たがらないルーク様だが、外出するときはもう包帯ではなく、必ず仮面をつけて外出する。
包帯は暑いし蒸れるからという理由で、仮面が気に入ったようだった。
仮面は最初に作ったものと同じで、黒地に金で模様が入っている。
麗しいルーク様に、麗しい仮面。
そんな人と立ち並ぶのに、男顔のわたしは大変居心地が悪かった。
でも、今はちょっとだけ自分を見直してあげようと思う。
「よし! わたし可愛い!」
自分が褒めずに誰が褒めてくれるか。
まず、最初にわたし自身がわたしを好きになろう。
鏡に向かってウインクをして、唇を寄せてみる。
「……なにやってんだ?」
わたしの部屋のドアに寄りかかり、お兄様がわたしをアホなものでも見るような目で見ていた。
お兄様は14歳になり、背もとても高くなり、会う度にルーク様が「義兄上、カッコイイです! オレも義兄上のようになりたいです!」と力強く言っている。
「お兄様失礼です! レディの部屋に黙って入るなんて」
「何言ってんだ。何回もノックしたぞ。ほら、そろそろ出ないと遅れるぞ。今日の入学式は家族みんなで出席するんだからな。一家で遅刻なんて、オレは嫌だからな」
「はーい」
中身のほとんど入っていない鞄を持つ。
必要なものは先に学園の寮に送ってあるから、鞄を持つのは形だけだ。
自分の部屋を見渡す。
寮に入ったらしばらく戻って来られない。
卒業したらまたこの部屋で暮らすのだろうか。
それとも、卒業したらすぐに結婚だろうか。
まだ、魔物の森は静寂を保っている。
いつ、ルーク様は討伐に行くのだろうか。
「とにかく、行ってきます」
わたしは長年お世話になった部屋を後にした。
一家5人で馬車に揺られ、王都の中心地にある学園へと向かった。
寮で暮らしているお兄様とお姉様は、入学式に家族で出席するために、一度寮から自宅に帰ってきていた。
「お兄様とお姉様は、わざわざお戻りにならなくてもよかったのに。どうせ学園でお会いするんですから」
わたしが馬車の中でそう言うと、お兄様がヘラっと笑った。
「妹の入学式だぞ。学園に残ると準備に駆り出されてゆっくりと見られないが、父上母上と一緒なら、保護者席からゆっくり見られるからな」
「そういうものですか……」
ゆっくりとお母様が子ども3人の顔を見る。
「これで、オリバーが卒業するまでの2年間は、わたくしと旦那様の2人になります。我が子爵家は寂しくなりますね」
エマお姉様はお母様を励ます。
「でも、お母様。お兄様がご卒業されたらその後が大変ですわよ。お兄様はまだ婚約者がいらっしゃらないんですもの。良い縁を探して回らないといけませんわ」
「それはエマも一緒でしょう?」
「あら、お母様。わたくしは学園でいい人を見つけてすぐにお嫁に行きますわ。そんなことで苦労かけたりは致しません」
実は、お兄様は小さい頃に結婚をしようとしていた男爵家の娘がいたのだが、きちんとした婚約をする前にケンカをしてしまったのだ。
口約束だった婚約は、なかったことになっている。
でもわたしは、いずれ2人は仲直りして結局結婚することになるんじゃないかなと思っている。
だって、なんだかんだ言って、まだお兄様たちは交流があるんだもの。
お兄様が馬車の窓に頬杖をつく。
「なんだよ。オレだって母上にそんな苦労はかけないぞ」
「お兄様、本当ですか? 学年が違うのであまりお兄様のお話は聞かないはずですのに、お兄様がした悪戯の話はよく聞きますわ」
つんとすましてお姉様が言うと、お母様が目を吊り上げた。
「なんですって? オリバー、ほんとなの? 悪戯って、あなた……」
「や、母上、かわいいものですよ。身分の低い生徒と高い生徒に態度の違う年の行った女性教諭の鞄に、トカゲを入れたくらいで、そんなに言われるほどのことは」
「トカゲですって!」
お母様はフラフラと、隣の席のお父様に持たれかかった。
「こらこら。オリバー。お母様を困らせることはしちゃダメだぞ」
お父様はくすくすと笑って、楽しそうにそうおっしゃった。
そうこうしているうちに、馬車は学園の敷地内に入って行った。
これから、わたしの学園生活が始まる。
わたしは10歳になり、学園へと入学する。
身支度を整えて、自分の部屋の鏡を覗き込む。
学園の制服は、ロングのジャンパースカートに紺のブレザーだ。
スカートはくるぶしまであるので、慣れないと少し歩きにくい。
「ふむ。段々お母様に似てきたかしら……?」
昔に比べたら、少女らしさが出てきて、顔もほっそりとしてきた。……と思う。
ルーク様は、あれから腕の火傷を全部治し、今は顔の治療に入っている。
口元から始めて、やっと頬骨のあたりまで綺麗にすることができた。
前に作った仮面もサイズを小さく作り直し、今は左側の額から頬骨のあたりまでのものを着けている。
もともとの作りが大変麗しい方だったので、口元がはっきり見えるようになって、更にカッコ良くなった。
口が全部見えるようになったことで、笑った顔が、より一層素敵に見えるのだ。
あまり外に出たがらないルーク様だが、外出するときはもう包帯ではなく、必ず仮面をつけて外出する。
包帯は暑いし蒸れるからという理由で、仮面が気に入ったようだった。
仮面は最初に作ったものと同じで、黒地に金で模様が入っている。
麗しいルーク様に、麗しい仮面。
そんな人と立ち並ぶのに、男顔のわたしは大変居心地が悪かった。
でも、今はちょっとだけ自分を見直してあげようと思う。
「よし! わたし可愛い!」
自分が褒めずに誰が褒めてくれるか。
まず、最初にわたし自身がわたしを好きになろう。
鏡に向かってウインクをして、唇を寄せてみる。
「……なにやってんだ?」
わたしの部屋のドアに寄りかかり、お兄様がわたしをアホなものでも見るような目で見ていた。
お兄様は14歳になり、背もとても高くなり、会う度にルーク様が「義兄上、カッコイイです! オレも義兄上のようになりたいです!」と力強く言っている。
「お兄様失礼です! レディの部屋に黙って入るなんて」
「何言ってんだ。何回もノックしたぞ。ほら、そろそろ出ないと遅れるぞ。今日の入学式は家族みんなで出席するんだからな。一家で遅刻なんて、オレは嫌だからな」
「はーい」
中身のほとんど入っていない鞄を持つ。
必要なものは先に学園の寮に送ってあるから、鞄を持つのは形だけだ。
自分の部屋を見渡す。
寮に入ったらしばらく戻って来られない。
卒業したらまたこの部屋で暮らすのだろうか。
それとも、卒業したらすぐに結婚だろうか。
まだ、魔物の森は静寂を保っている。
いつ、ルーク様は討伐に行くのだろうか。
「とにかく、行ってきます」
わたしは長年お世話になった部屋を後にした。
一家5人で馬車に揺られ、王都の中心地にある学園へと向かった。
寮で暮らしているお兄様とお姉様は、入学式に家族で出席するために、一度寮から自宅に帰ってきていた。
「お兄様とお姉様は、わざわざお戻りにならなくてもよかったのに。どうせ学園でお会いするんですから」
わたしが馬車の中でそう言うと、お兄様がヘラっと笑った。
「妹の入学式だぞ。学園に残ると準備に駆り出されてゆっくりと見られないが、父上母上と一緒なら、保護者席からゆっくり見られるからな」
「そういうものですか……」
ゆっくりとお母様が子ども3人の顔を見る。
「これで、オリバーが卒業するまでの2年間は、わたくしと旦那様の2人になります。我が子爵家は寂しくなりますね」
エマお姉様はお母様を励ます。
「でも、お母様。お兄様がご卒業されたらその後が大変ですわよ。お兄様はまだ婚約者がいらっしゃらないんですもの。良い縁を探して回らないといけませんわ」
「それはエマも一緒でしょう?」
「あら、お母様。わたくしは学園でいい人を見つけてすぐにお嫁に行きますわ。そんなことで苦労かけたりは致しません」
実は、お兄様は小さい頃に結婚をしようとしていた男爵家の娘がいたのだが、きちんとした婚約をする前にケンカをしてしまったのだ。
口約束だった婚約は、なかったことになっている。
でもわたしは、いずれ2人は仲直りして結局結婚することになるんじゃないかなと思っている。
だって、なんだかんだ言って、まだお兄様たちは交流があるんだもの。
お兄様が馬車の窓に頬杖をつく。
「なんだよ。オレだって母上にそんな苦労はかけないぞ」
「お兄様、本当ですか? 学年が違うのであまりお兄様のお話は聞かないはずですのに、お兄様がした悪戯の話はよく聞きますわ」
つんとすましてお姉様が言うと、お母様が目を吊り上げた。
「なんですって? オリバー、ほんとなの? 悪戯って、あなた……」
「や、母上、かわいいものですよ。身分の低い生徒と高い生徒に態度の違う年の行った女性教諭の鞄に、トカゲを入れたくらいで、そんなに言われるほどのことは」
「トカゲですって!」
お母様はフラフラと、隣の席のお父様に持たれかかった。
「こらこら。オリバー。お母様を困らせることはしちゃダメだぞ」
お父様はくすくすと笑って、楽しそうにそうおっしゃった。
そうこうしているうちに、馬車は学園の敷地内に入って行った。
これから、わたしの学園生活が始まる。
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