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2章 気持ちを育む
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わたしはカッとなったが、お兄様に目線で止められた。
大丈夫。
わかってる。
理不尽なことを言われても、相手はお姫様だ。
逆らったらいけない。
後ろに護衛の人や侍女を何人も連れて、ローゼリア様は嫌そうに顔をしかめてわたしたちに近付く。
「お父様に英雄になる者と年が近いからわたくしにも一緒に遊んでこいと言われましたの。でも、わたくしは一緒になんて遊べませんわ。ルーク、なぜ包帯を取っているのかしら。わたくしに見えないようにその顔を隠しなさい」
それまで楽しそうにしていたルーク様は、魂が抜け落ちたように無表情になり、黙ってポケットに入っていた包帯を巻き直した。
「ふん。へたねぇ。ちゃんと隠れていないわ。もういいです。わたくしは部屋に帰ります。あなたたち、お父様になにか聞かれたら、仲良く遊んだと言うのよ」
この中で、誰よりも年下のローゼリア様は、そう言い放って早々に、ゾロゾロとお付きの者を引き連れて、建物の中へ入って行った。
お兄様は、お城の使用人たちが遠巻きに見ているのを確認してから、使用人たちに聞こえないように言った。
「王様はとてもいい王様なんだけど、末のお姫様だけはみんなで可愛がって我儘に育ってしまったから先が心配って、茶話会で大人たちが噂してた。オレも初めて会ったけど、キョーレツだなあ」
お姉様はルーク様にそっと近付き、包帯を綺麗に巻き直してあげていた。
「ルーク様、ごめんなさいね。わたしたちが包帯を取って欲しいと言ったばかりにこんなことを言われて。帰りはまた王城内を通るので、暑いですが包帯を巻き直しますわね」
下を向くルーク様のお顔に、表情が戻ってきた。
「オレの方こそすみません。オレがこんななばっかりに……」
悔しそうにお兄様とお姉様に謝るルーク様に、わたしは胸がぎゅっと痛くなった。
「ルーク様はなにも悪くありません。怪我や火傷は、誰のせいでもありません」
わたしがルーク様の手を握ると、ルーク様は少し笑った。
お姉様がルーク様の包帯を巻き終わり、ローゼリア様と城内で会わない為にガゼボで大人しくしていると、お父様とお母様がわたしたちを迎えにきた。
王様とどんな話がされたのかはわからないけれど、お父様とお母様の顔は困った風でもなかったので、安心した。
ルーク様のお父様とお母様、弟くんも来ていたけど、こちらは難しそうな顔をしている。
でも、まあ、侯爵夫妻が難しそうな顔をしているのは初めて会った時と同じだから、気にしなくても大丈夫だろう。
お兄様は、ルーク様に「じゃあ、またな」と言って手を振ると、ルーク様がお兄様とお姉様の元に走り寄ってきた。
「あ、義兄上、義姉上。……とお呼びしてもいいでしょうか……」
モジモジと尻すぼみに声が小さくなるルーク様に、お兄様は豪快に笑った。
「あったりまえだ! ジーナの旦那になるんだから、オレは義兄上だ。よろしくな、義弟よ」
「わたくしもよろしくてよ。ジーナは頑固ですもの。何があっても婚約は解消しないでしょう。そうなれば、ルーク様は絶対にわたくしの義弟になるのですから」
お兄様とお姉様は、優しい笑顔を浮かべ、2人でルーク様の頭を撫でていた。
嬉しそうに笑うルーク様を、わたしは一生忘れない。
大丈夫。
わかってる。
理不尽なことを言われても、相手はお姫様だ。
逆らったらいけない。
後ろに護衛の人や侍女を何人も連れて、ローゼリア様は嫌そうに顔をしかめてわたしたちに近付く。
「お父様に英雄になる者と年が近いからわたくしにも一緒に遊んでこいと言われましたの。でも、わたくしは一緒になんて遊べませんわ。ルーク、なぜ包帯を取っているのかしら。わたくしに見えないようにその顔を隠しなさい」
それまで楽しそうにしていたルーク様は、魂が抜け落ちたように無表情になり、黙ってポケットに入っていた包帯を巻き直した。
「ふん。へたねぇ。ちゃんと隠れていないわ。もういいです。わたくしは部屋に帰ります。あなたたち、お父様になにか聞かれたら、仲良く遊んだと言うのよ」
この中で、誰よりも年下のローゼリア様は、そう言い放って早々に、ゾロゾロとお付きの者を引き連れて、建物の中へ入って行った。
お兄様は、お城の使用人たちが遠巻きに見ているのを確認してから、使用人たちに聞こえないように言った。
「王様はとてもいい王様なんだけど、末のお姫様だけはみんなで可愛がって我儘に育ってしまったから先が心配って、茶話会で大人たちが噂してた。オレも初めて会ったけど、キョーレツだなあ」
お姉様はルーク様にそっと近付き、包帯を綺麗に巻き直してあげていた。
「ルーク様、ごめんなさいね。わたしたちが包帯を取って欲しいと言ったばかりにこんなことを言われて。帰りはまた王城内を通るので、暑いですが包帯を巻き直しますわね」
下を向くルーク様のお顔に、表情が戻ってきた。
「オレの方こそすみません。オレがこんななばっかりに……」
悔しそうにお兄様とお姉様に謝るルーク様に、わたしは胸がぎゅっと痛くなった。
「ルーク様はなにも悪くありません。怪我や火傷は、誰のせいでもありません」
わたしがルーク様の手を握ると、ルーク様は少し笑った。
お姉様がルーク様の包帯を巻き終わり、ローゼリア様と城内で会わない為にガゼボで大人しくしていると、お父様とお母様がわたしたちを迎えにきた。
王様とどんな話がされたのかはわからないけれど、お父様とお母様の顔は困った風でもなかったので、安心した。
ルーク様のお父様とお母様、弟くんも来ていたけど、こちらは難しそうな顔をしている。
でも、まあ、侯爵夫妻が難しそうな顔をしているのは初めて会った時と同じだから、気にしなくても大丈夫だろう。
お兄様は、ルーク様に「じゃあ、またな」と言って手を振ると、ルーク様がお兄様とお姉様の元に走り寄ってきた。
「あ、義兄上、義姉上。……とお呼びしてもいいでしょうか……」
モジモジと尻すぼみに声が小さくなるルーク様に、お兄様は豪快に笑った。
「あったりまえだ! ジーナの旦那になるんだから、オレは義兄上だ。よろしくな、義弟よ」
「わたくしもよろしくてよ。ジーナは頑固ですもの。何があっても婚約は解消しないでしょう。そうなれば、ルーク様は絶対にわたくしの義弟になるのですから」
お兄様とお姉様は、優しい笑顔を浮かべ、2人でルーク様の頭を撫でていた。
嬉しそうに笑うルーク様を、わたしは一生忘れない。
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