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第1章 出逢い
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ルーク様はベッドの上で、膝を抱えてポツリポツリと話し始めた。
「昨日、城に行ったんだ」
「へえ。わたし、お城には行ったことありません。シンデレラはいましたか?」
「バカか……。シンデレラはお伽話の中の人物だ。いるわけないだろう」
そうなんだ……。
わたしはちょっとガッカリした。
「シンデレラはいないけど、お姫様はいるんだ。オレたちより一つ年下のお姫様。オレの一番最初のこんやくしゃ候補だった」
あら。わたしの他のこんやくしゃ? ちょっとおもしろくない。
それでも、ルーク様が初めて自分から語るルーク様の出来事に、耳を傾けた。
「そいつが、最初に包帯を外せって言ったやつなんだけど、昨日も包帯だらけで怖いって言いやがって、でも外すともっと怖いからってオレの頭にバケツをかぶせたんだ」
「えっ?」
「バケツだよ。わざわざ庭師の所に行って取ってきてまで。オレは頭から土をかぶって、目にも砂が入って大変だった」
「まあ!」
「メイドがすぐにやってきて、オレに掛かった土を払ってくれたけど、服は茶色に染まって気分が悪かった」
「まあ……そうでしょうね」
「それから、国王の前で模擬剣を振らされた」
「模擬剣?」
「刃のついていない、稽古用の剣だよ。オレは大きくなったら魔物を倒しに行かなければならないから、剣が握れるようになってすぐに、剣の先生がついて訓練させられているんだけど、左腕の火傷の跡がひっつれてうまく振れない時があるんだ。たまに不格好になるそれを見て、その姫は笑ってた」
「まあ!」
「剣の先生は慣れれば火傷があってもすんなり振れるようになるとは言っていたけど、オレは一向に慣れない」
暗いお顔で淡々とお話されているが、その内容はわたしの胸が痛くなる内容だった。
「どうした? こんやくしゃならこんな時は慰めるもんじゃないのか?」
お話なさっていた時と同様、淡々とルーク様はわたしに問いかけた。
「……お慰めしたいのはやまやまなんですけど、言葉がみつからなくて……」
わたしは正直に思ったことを話す。
「大丈夫ですよーとか、言えないのか」
「だって、大丈夫かどうかわからないじゃないですか。そんな姫からは守ってあげますって言いたいけど、わたしはお城には行けないし……。できないことを言ったら嘘つきでしょ?」
ルーク様はわたしを見つめて、そして少し笑った。
例え火傷の跡があっても、ルーク様の笑顔は素敵だと思うけど。
「そうか。お前は嘘をつかないんだな」
「そりゃそーですよ。将来結婚するのに嘘つかれたら嫌でしょう?」
「そうか」
ルーク様は嬉しそうに笑って、コロンとベッドに横になった。
「あ、そうだ。ルーク様。嘘じゃない言葉がひとつだけ言えます」
「なんだ?」
「わたしはルーク様のお側にずっといます。だって、結婚するんですもの。ずっと、ずーっとルーク様の味方です」
ルーク様は目を見開いて、わたしの顔をじっと見つめてから、それはそれは嬉しそうに笑った。
「そうか。じゃ、死ぬまで一緒だな」
「そうですねぇ。死がふたりをわかつまで、ですね」
「わかつま?」
「死ぬまで仲良くってことらしいですよ?」
「そうか」
ルーク様は両腕を頭の下に敷いて、目を閉じた。
「あー、ルーク様、だから寝ちゃダメですって。わたし、ルーク様を起こしに来たんですよ?」
わたしがルーク様の腕を掴んで揺さぶると、ルーク様はうるさそうに目を開けた。
「いいだろう。もう話したし、起きてもやることがない」
「ダメダメ。わたし、試してみたいことがあるんです。だから起き上がってください」
「ちぇっ。うるさいなあ」
ルーク様は渋々起き上がって、わたしと向かい合うようにベッドの上に座った。
「さて、ルーク様。腕を見せていただけますか? 火傷した方の腕を」
「昨日、城に行ったんだ」
「へえ。わたし、お城には行ったことありません。シンデレラはいましたか?」
「バカか……。シンデレラはお伽話の中の人物だ。いるわけないだろう」
そうなんだ……。
わたしはちょっとガッカリした。
「シンデレラはいないけど、お姫様はいるんだ。オレたちより一つ年下のお姫様。オレの一番最初のこんやくしゃ候補だった」
あら。わたしの他のこんやくしゃ? ちょっとおもしろくない。
それでも、ルーク様が初めて自分から語るルーク様の出来事に、耳を傾けた。
「そいつが、最初に包帯を外せって言ったやつなんだけど、昨日も包帯だらけで怖いって言いやがって、でも外すともっと怖いからってオレの頭にバケツをかぶせたんだ」
「えっ?」
「バケツだよ。わざわざ庭師の所に行って取ってきてまで。オレは頭から土をかぶって、目にも砂が入って大変だった」
「まあ!」
「メイドがすぐにやってきて、オレに掛かった土を払ってくれたけど、服は茶色に染まって気分が悪かった」
「まあ……そうでしょうね」
「それから、国王の前で模擬剣を振らされた」
「模擬剣?」
「刃のついていない、稽古用の剣だよ。オレは大きくなったら魔物を倒しに行かなければならないから、剣が握れるようになってすぐに、剣の先生がついて訓練させられているんだけど、左腕の火傷の跡がひっつれてうまく振れない時があるんだ。たまに不格好になるそれを見て、その姫は笑ってた」
「まあ!」
「剣の先生は慣れれば火傷があってもすんなり振れるようになるとは言っていたけど、オレは一向に慣れない」
暗いお顔で淡々とお話されているが、その内容はわたしの胸が痛くなる内容だった。
「どうした? こんやくしゃならこんな時は慰めるもんじゃないのか?」
お話なさっていた時と同様、淡々とルーク様はわたしに問いかけた。
「……お慰めしたいのはやまやまなんですけど、言葉がみつからなくて……」
わたしは正直に思ったことを話す。
「大丈夫ですよーとか、言えないのか」
「だって、大丈夫かどうかわからないじゃないですか。そんな姫からは守ってあげますって言いたいけど、わたしはお城には行けないし……。できないことを言ったら嘘つきでしょ?」
ルーク様はわたしを見つめて、そして少し笑った。
例え火傷の跡があっても、ルーク様の笑顔は素敵だと思うけど。
「そうか。お前は嘘をつかないんだな」
「そりゃそーですよ。将来結婚するのに嘘つかれたら嫌でしょう?」
「そうか」
ルーク様は嬉しそうに笑って、コロンとベッドに横になった。
「あ、そうだ。ルーク様。嘘じゃない言葉がひとつだけ言えます」
「なんだ?」
「わたしはルーク様のお側にずっといます。だって、結婚するんですもの。ずっと、ずーっとルーク様の味方です」
ルーク様は目を見開いて、わたしの顔をじっと見つめてから、それはそれは嬉しそうに笑った。
「そうか。じゃ、死ぬまで一緒だな」
「そうですねぇ。死がふたりをわかつまで、ですね」
「わかつま?」
「死ぬまで仲良くってことらしいですよ?」
「そうか」
ルーク様は両腕を頭の下に敷いて、目を閉じた。
「あー、ルーク様、だから寝ちゃダメですって。わたし、ルーク様を起こしに来たんですよ?」
わたしがルーク様の腕を掴んで揺さぶると、ルーク様はうるさそうに目を開けた。
「いいだろう。もう話したし、起きてもやることがない」
「ダメダメ。わたし、試してみたいことがあるんです。だから起き上がってください」
「ちぇっ。うるさいなあ」
ルーク様は渋々起き上がって、わたしと向かい合うようにベッドの上に座った。
「さて、ルーク様。腕を見せていただけますか? 火傷した方の腕を」
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