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3章 それぞれの道
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執務室にて、いつもの3人が顔を突き合わせていた。
「叔父様、それで、ランバラルドからの知らせには、何が書かれておりましたの?」
執務室内のソファに座り、シャーロットは心配そうにコーディに目を向けた。
もちろん、フレッドもまだ内容を知らなかったため、真剣な表情でコーディを見ていた。
「使者が来るということだけしか手紙には書かれておらん。王室の封蝋がされているから、王家の出したもので間違いはないようだが……」
「フレッド様はご存知ではないのですか?」
「オレのところには何も……。ただ、オレはもうボナールの者としてランバラルドの執行部には見られちゃってるから、あまり情報は流れて来ないんだよ」
フレッドはそう言うものの、フレッドに仕える者はまだランバラルドにも居り、定期的には報告が上がっていた。
だが、今回のものに限っては、ランバラルドからは何の連絡も入っておらず、ライリーやディリオンからも知らせは届いていなかった。
可能性として、ライリー達の知らぬところで執行部が動いているか、あるいは逆に、ライリー達が秘密裏に何かしようとしているかのどちらかだと睨んでいた。
シャーロットは震え上がる。
「もし、借金取りだったらどうしましょう……。このところ、財政に余裕が出てきたのをランバラルドの財務局が知って、一気に返済を迫られたらどうしましょう……」
「ぷっ、シャーロットちゃん、そんな女王様が借金取りに怯えたりしないでよ。大丈夫だよ、ランバラルドはそんな国じゃないし、もし、一括で払ってと言われたら、なんとか払うだけの物はあるし」
シャーロットは勢いよく顔を上げる。
「えっ、フレッド様なんとおっしゃいました? 払うだけのものがあるのですか?」
「うん。シャーロットちゃんが即位してから順調に穀物が育っているし、海の漁も順調だから輸出して貿易は黒字だし、絹の産業も手掛けているけど、絹はこれまた高額で取引できてるからね。ただ、一括で払っちゃうと今やってる事業は全てストップしなけりゃならないし、税金も上げないといけないかな。それだけ高額な借金だったからね」
コーディは王政を取り仕切っていただけのことはあり、またフレッドもかなりのキレ者であったため、国の資産はかなり膨れた。
シャーロットには内緒であるが、フレッドはまとまった金額を外貨取引にて運用しており、レートの安い時に外貨を買い、レートの高い時に売るという手法で、資産を運用し、通常の何倍もの速さで国庫を元に戻す以上に、潤わせていた。
一歩間違えば大損をする手法だが、国内外の情報収集に長けているフレッドだからこそ、できたことである。
「だから、そんなに気負わないで、使者が来るのを待とう。様子伺いだけかもしれないし」
フレッドは安心させるようにシャーロットに微笑んだ。
その数日後、ランバラルドからの使者が到着する。
城門を潜り、ランバラルド王室の紋章が刻まれた馬車が、ボナール城に横付けされた。
使者到着の知らせを門番から聞いたシャーロットとフレッド、コーディは、急いで城門へと向かう。
そして、横付けされた馬車から降りてきたのは、大人になった顔付きをした、ギルバートだった。
「やあ、シャーロット。フレッドも元気そうで何よりだ」
馬車から降りてきたギルバートは、二人に懐かしい笑みを浮かべた。
どんな使者が来るのだろうと、気負っていたシャーロットはほっと息をつく。
「ギルバート様、ようこそいらっしゃいました。ご無沙汰しておりましたが、ギルバート様もお元気そうで何よりです」
シャーロットはにこやかに挨拶をするが、フレッドは嫌な予感に包まれていた。
先代王弟の子息である、公爵のギルバートがただの使者なわけがない。
これから何を告げられるのか、フレッドは暗い表情のまま、ギルバートを見つめるのだった。
「叔父様、それで、ランバラルドからの知らせには、何が書かれておりましたの?」
執務室内のソファに座り、シャーロットは心配そうにコーディに目を向けた。
もちろん、フレッドもまだ内容を知らなかったため、真剣な表情でコーディを見ていた。
「使者が来るということだけしか手紙には書かれておらん。王室の封蝋がされているから、王家の出したもので間違いはないようだが……」
「フレッド様はご存知ではないのですか?」
「オレのところには何も……。ただ、オレはもうボナールの者としてランバラルドの執行部には見られちゃってるから、あまり情報は流れて来ないんだよ」
フレッドはそう言うものの、フレッドに仕える者はまだランバラルドにも居り、定期的には報告が上がっていた。
だが、今回のものに限っては、ランバラルドからは何の連絡も入っておらず、ライリーやディリオンからも知らせは届いていなかった。
可能性として、ライリー達の知らぬところで執行部が動いているか、あるいは逆に、ライリー達が秘密裏に何かしようとしているかのどちらかだと睨んでいた。
シャーロットは震え上がる。
「もし、借金取りだったらどうしましょう……。このところ、財政に余裕が出てきたのをランバラルドの財務局が知って、一気に返済を迫られたらどうしましょう……」
「ぷっ、シャーロットちゃん、そんな女王様が借金取りに怯えたりしないでよ。大丈夫だよ、ランバラルドはそんな国じゃないし、もし、一括で払ってと言われたら、なんとか払うだけの物はあるし」
シャーロットは勢いよく顔を上げる。
「えっ、フレッド様なんとおっしゃいました? 払うだけのものがあるのですか?」
「うん。シャーロットちゃんが即位してから順調に穀物が育っているし、海の漁も順調だから輸出して貿易は黒字だし、絹の産業も手掛けているけど、絹はこれまた高額で取引できてるからね。ただ、一括で払っちゃうと今やってる事業は全てストップしなけりゃならないし、税金も上げないといけないかな。それだけ高額な借金だったからね」
コーディは王政を取り仕切っていただけのことはあり、またフレッドもかなりのキレ者であったため、国の資産はかなり膨れた。
シャーロットには内緒であるが、フレッドはまとまった金額を外貨取引にて運用しており、レートの安い時に外貨を買い、レートの高い時に売るという手法で、資産を運用し、通常の何倍もの速さで国庫を元に戻す以上に、潤わせていた。
一歩間違えば大損をする手法だが、国内外の情報収集に長けているフレッドだからこそ、できたことである。
「だから、そんなに気負わないで、使者が来るのを待とう。様子伺いだけかもしれないし」
フレッドは安心させるようにシャーロットに微笑んだ。
その数日後、ランバラルドからの使者が到着する。
城門を潜り、ランバラルド王室の紋章が刻まれた馬車が、ボナール城に横付けされた。
使者到着の知らせを門番から聞いたシャーロットとフレッド、コーディは、急いで城門へと向かう。
そして、横付けされた馬車から降りてきたのは、大人になった顔付きをした、ギルバートだった。
「やあ、シャーロット。フレッドも元気そうで何よりだ」
馬車から降りてきたギルバートは、二人に懐かしい笑みを浮かべた。
どんな使者が来るのだろうと、気負っていたシャーロットはほっと息をつく。
「ギルバート様、ようこそいらっしゃいました。ご無沙汰しておりましたが、ギルバート様もお元気そうで何よりです」
シャーロットはにこやかに挨拶をするが、フレッドは嫌な予感に包まれていた。
先代王弟の子息である、公爵のギルバートがただの使者なわけがない。
これから何を告げられるのか、フレッドは暗い表情のまま、ギルバートを見つめるのだった。
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