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20章 虹の国の後継者
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ライリー殿下がディリオン様に命じて、領地をコルビー元国王に譲渡した時の書類を持って来させた。
「ダメだな。一度譲渡したものを取り戻せるような文言がない」
ディリオン様が言う。
「これはもう国王権限で、国の損害を認める事例として取り上げるしかないのではないか?」
「……暴君として、シャーロットが君臨するならそれでもいいが……」
平和に議会を立ち上げた今、国王権限を振り翳すのは悪手でしかない。
みんなで知恵を絞るけれど、良い考えは浮かばなかった。
じっと領地譲渡の書類を眺めていたマリーは、急に私の方に目を向けた。
「姫様、この書類を無効にする方法がひとつだけございます。姫様はそれをお望みになりますか?」
私より先に、ライリー殿下が反応する。
「なにっ、マリーそれは本当か?」
「本当でございます」
「何故、それをもっと早く言わなかったんだ?」
ライリー殿下の問いに、マリーは俯く。
「わたくしには、血の誓約がございます。破れば、殺されても文句は言えません。命は惜しくありませんが、姫様を残して逝くことはできません」
殺されて……も?
「マリー、一体何のこと? 殺されるって、誰に?」
「お話しするのには、姫様に命じてもらわねばなりません。そして、それが誓約に反せず正当に話されたかどうかの判断は、大神殿の神官長がおこないます」
「マリー、もし私が命じて、神官長が不当と判断したら……」
「わたくしは秘密を漏らした者として、その場で神官長に殺されます」
マリーが、殺される?
考えただけで、私の頭から血の気が引いて、思わずふらっと前へ倒れ込んでしまった。
「姫様っ」
ジュディとアーサーが私を抱きとめる。
「大丈夫、大丈夫よ。ごめんなさい」
自分をしっかり保ち、ちゃんと椅子に腰かけ直した。
「マリー、そんな怖いこと私にはできないわ。国王権限で領地を没収することにします。それによって、共和制への道が遠のくのなら、その分身を粉にして働きます。だから、そんな恐ろしいことを言わないで」
私の意見にディリオン様が、苦い表情をする。
「簡単に国王権限と言うが、それがどれだけ横暴なことかわかっていて言っているのだな。コルビー元国王によりうまく考えられているのが、川が全て堰き止められていないところだ。ある程度の水流を流しているのであれば、川の水を売ることは違法ではない。山の麓などでは、湧水を名産品として売っているところもある。違法でないのに強行すればどうなるか。王室の信用は落ちるのは早いが、回復するのは大変なのだ。主に、外交面で外国から信用されなくなるのは痛い」
私の顔が段々と青ざめていくのがわかる。
ライリー殿下がそんな私をじっと見つめていた。
私が命じてマリーが秘密を話して、もしもマリーが殺されてしまったら。
そもそも、何が正当な理由で何が不当な理由かがわからない。
「姫様。どうぞお命じください」
マリーが真っ直ぐに私を見た。
マリー。
私の大事なマリー。
もし、神官長に殺されそうになったら、私がマリーを抱えて逃げるから。
だから。
「シャーロット・ランバラルドの名において命じます。コルビー前国王の秘密を、神の名の下に明確に提示しなさい」
「……かしこまりました」
「ダメだな。一度譲渡したものを取り戻せるような文言がない」
ディリオン様が言う。
「これはもう国王権限で、国の損害を認める事例として取り上げるしかないのではないか?」
「……暴君として、シャーロットが君臨するならそれでもいいが……」
平和に議会を立ち上げた今、国王権限を振り翳すのは悪手でしかない。
みんなで知恵を絞るけれど、良い考えは浮かばなかった。
じっと領地譲渡の書類を眺めていたマリーは、急に私の方に目を向けた。
「姫様、この書類を無効にする方法がひとつだけございます。姫様はそれをお望みになりますか?」
私より先に、ライリー殿下が反応する。
「なにっ、マリーそれは本当か?」
「本当でございます」
「何故、それをもっと早く言わなかったんだ?」
ライリー殿下の問いに、マリーは俯く。
「わたくしには、血の誓約がございます。破れば、殺されても文句は言えません。命は惜しくありませんが、姫様を残して逝くことはできません」
殺されて……も?
「マリー、一体何のこと? 殺されるって、誰に?」
「お話しするのには、姫様に命じてもらわねばなりません。そして、それが誓約に反せず正当に話されたかどうかの判断は、大神殿の神官長がおこないます」
「マリー、もし私が命じて、神官長が不当と判断したら……」
「わたくしは秘密を漏らした者として、その場で神官長に殺されます」
マリーが、殺される?
考えただけで、私の頭から血の気が引いて、思わずふらっと前へ倒れ込んでしまった。
「姫様っ」
ジュディとアーサーが私を抱きとめる。
「大丈夫、大丈夫よ。ごめんなさい」
自分をしっかり保ち、ちゃんと椅子に腰かけ直した。
「マリー、そんな怖いこと私にはできないわ。国王権限で領地を没収することにします。それによって、共和制への道が遠のくのなら、その分身を粉にして働きます。だから、そんな恐ろしいことを言わないで」
私の意見にディリオン様が、苦い表情をする。
「簡単に国王権限と言うが、それがどれだけ横暴なことかわかっていて言っているのだな。コルビー元国王によりうまく考えられているのが、川が全て堰き止められていないところだ。ある程度の水流を流しているのであれば、川の水を売ることは違法ではない。山の麓などでは、湧水を名産品として売っているところもある。違法でないのに強行すればどうなるか。王室の信用は落ちるのは早いが、回復するのは大変なのだ。主に、外交面で外国から信用されなくなるのは痛い」
私の顔が段々と青ざめていくのがわかる。
ライリー殿下がそんな私をじっと見つめていた。
私が命じてマリーが秘密を話して、もしもマリーが殺されてしまったら。
そもそも、何が正当な理由で何が不当な理由かがわからない。
「姫様。どうぞお命じください」
マリーが真っ直ぐに私を見た。
マリー。
私の大事なマリー。
もし、神官長に殺されそうになったら、私がマリーを抱えて逃げるから。
だから。
「シャーロット・ランバラルドの名において命じます。コルビー前国王の秘密を、神の名の下に明確に提示しなさい」
「……かしこまりました」
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